Windowsを核としたビジネスモデルは揺るがない

Korst氏は役職からも分かるように、Windowsというブランドとマーケティングを担当しており、主にエンタープライズ向けの話が中心となった。そのため、企業などでWindows 10を使うユーザーが、興味を持ちそうな点をピックアップして紹介する。Windows 10はインプレースアップグレード(*)を推奨している

※インプレースアップグレード : 以前のWindowsから新しいWindowsへと直接アップグレードする方法。対語の1つにクリーンインストールがある。

Microsoft Windows Brand & Product Marketing担当ジェネラルマネージャーのJeremy Korst氏

だが、Korst氏は「Windows 10はクリーンインストールも可能だ。ユーザーにはインプレースアップグレードと2つの選択肢がある」と説明した。インプレースアップグレードならば、ユーザー設定やアプリケーションコンテンツはそのまま引き継がれるため、環境移行のコストが抑制できる。

ビジネス現場のWindowsは個人環境と異なり、必要以上の設定変更やカスタマイズを行っていないことも多い。このような環境であれば、インプレースアップグレードは現実的な選択肢といるだろう。

興味深いのが、Windows 10のアップデート提供モデルだ。下図は日本マイクロソフトの報道向け資料から抜粋したものだが、CB(Current Branch)、CBB(Current Branch for Business)、LTSB(Long Term Servicing Branch)と、3つの選択肢が用意されている。

Windows 10に用意されたアップデート提供モデル。HomeやProエディションを既定のまま使用する場合は「CB」が選択される

この点について質問がおよぶと、Korst氏は「CB/CBBなどのモデル選択数は公表していないが、大半の企業ユーザーは各モデルの選択を検討している」という。企業トップや開発現場など部署によって意向は異なるものの、日本国内では「LTSBは1割、残りの9割はCBもしくはCBBを望んでいる」と、日本マイクロソフト Windows本部長の三上智子氏は説明した。

日本マイクロソフト Windows本部長の三上智子氏

現在開発中のWindows 10 Mobileについて質問がおよぶと、「マウスコンピューターを筆頭にWindows Phone製品が登場し、日本市場で展開する分岐点になる。日本法人もWindows 10 Mobileデバイスを根付かせるために注力する」と三上氏が回答。続けてKorst氏も「日本は世界第2位のWindows市場であるからこそ、PC、タブレット、スマートフォンと、Windows 10をリリースしたこのタイミングで市場拡大を狙う」と述べた。

Microsoftは、Windows 10が今後進む世界を示している。だが、ユーザー視点ではいまひとつはっきりしない部分もあるそうだ。企業ユーザーからは「長期ロードマップを見せてほしい」という意見も寄せられているとのこと。その回答として、Windows 10 Insider Previewを提案し、IT担当者による検証を薦めているとKorst氏は語っていた。

我々にとってWindows 10は、「無償アップグレード」が大きく目に映るが、基本的なWindowsのビジネスモデルは変わっていない。OEMメーカーに対する有償ライセンスやボリュームライセンスビジネスも継続している。さらに、Windows 10の無償アップグレードに伴ってWindowsストアの価値も向上し、Microsoftを含めたパートナーや開発者のビジネスチャンスが広がる可能性が高い。

大胆な変革ばかり目立ってきたが、よい意味で質実剛健なMicrosoftのスタンスは今後も持続し、Windowsという名のもとに市場を広げていきそうだ。

阿久津良和(Cactus)