日本マイクロソフトのプライベートイベント「FEST2015」から、2日目の基調講演をレポートする。同社の平野社長がステージに立ち、企業に求められるビジネス改革をテーマに、マイクロソフトがどのような価値を提供できるのかを語った。

3つの重点分野で企業のビジネス改革をサポート

日本マイクロソフト 代表執行役 社長の平野拓也氏

平野社長はかつて、副社長に就任する前の3年間、東欧に勤務していた。日本に戻ったとき、コンシューマーでもクラウドを当たり前のように使っていることを見て、ITの印象が変わったという。日本には少子高齢化のような課題もたくさんあり、国として、社会として、生産性を上げる必要があり、日本でどのようにビジネス変革を進めていくかが自身の責任と述べた。

日本マイクロソフトは、「革新的で、親しみやすく、安心でき、喜んで使っていただけるクラウドとデバイスを提供する」というミッションのもと、社会に貢献できる製品、サービスを提供していく。現在の重点分野としては、「プロダクビテイとビジネスプロセス」、「Windows 10+デバイス」、「インテリジェントクラウド」を挙げた。

平野社長の就任で変わった日本マイクロソフトのスローガン

3つの重点分野

1つめの「プロダクビリティとビジネスプロセス」に関しては、「日本マイクロソフトはワークスタイル改革のリーディングカンパニーになる」と宣言。具体的には、ワークスタイル改革を支援する代表的なIT企業として日経BPで一位にランキングされたことに加え、3年前から始めた「テレワーク週間」に関して(当初は自社だけの取り組みだった)、2015年は651社と共同開催と、先陣を切って実践、支援している。

テレワークとコラボレートを助けるためのデバイスとして、55型・84型という大画面の「Surface Hub」を9月3日から予約開始と発表。ビジネスの現場で書きながら、会話しながら、プレゼンしながらと、多角的でダイナミックなコラボレーションに活用できるとアピールした。

ワークスタイル改革のリーディングカンパニーを表明。今年のテレワーク週間では多くの起業が賛同

Surface Hubも55型と84型の製品で予約を開始。FEST2015の基調講演や展示の会場に、84型のSurface Hubを設置していた

さらに、Surface Hubの採用を決定した企業として、JALおよびJALエンジニアリングの北田氏が登壇。従来、機体整備の技術者配置おいて、特大のホワイトボードを使用してベテラン社員が決定していたが、この方法ではノウハウの蓄積と継承、およびシステム化ができない。Surface Hubを使用することで、複数人でコラボレーションしながら配置作業が行え、ホワイトボードのアナログさとシステムによるデジタル化の融合、ノウハウ蓄積が可能になると、Surface Hubに対する期待を述べていた。

Surface Hub採用決定ということで、日本航空 整備副本部長の北田雄一氏が登壇

作業の指示自体はコンピューター管理。しかし、飛行機の整備を円滑に行い、かつ将来の人材育成も考え、整備士の割り振りはベテラン社員のノウハウによるホワイトボード書き込み

Surface Hubを使うことで、複数のベテラン職員で割り振りを決めることが可能に

2つめの「Windows 10+デバイス」に関しては、提供開始から1カ月で7,500万台ものデバイスにインストールと、見込みよりも速いペースで日々増加中とアピール。Windows 10が動く環境も、IoTデバイスやスマートデバイス、タブレット、先述のSurface Hubと、順調に増えている。企業への導入支援に関しては、先日発表したダイワボウ情報システムのWindowsモバイルビジネス推進センターを一例として紹介。

企業でも、Windows 10の早期導入と導入表明が始まっている。だが、多くの一般企業がWindows 10を導入するのは、まだまだこれからだろう

Windows 10はサービス(機能)を段階的に拡張していくため、最新の機能とセキュリティを兼ね備えているとし、Insiderプログラムで提供を開始したコルタナを例に挙げた。コルタナは、いわゆる「パーソナルアシスタント」と呼ばれる機能だ。ユーザーと音声や文字で"会話"し、ユーザーの嗜好を学習していく。そして、気付きや提案を与えてくれるほか、スケジューリングやプランニングもアシストしてくれる。

このように、Windows 10は法人でも関心が高まっている。今回は事例として、セブン&ホールディングスがタブレットデバイスのSurface 3(LTE版)を200台導入することや、大和ハウス、ベネッセのWindows 10導入表明を紹介した。

3つめの「インテリジェントクラウド」は、1991年にマイクロソフトリサーチを発足させた以降の取り組みだ。HotMail、BingMap、Bing、Kinect、Skype Transratorという経緯をたどり、2014年にはAzure ML(Machine Learning)の提供を開始。過去の実績と経験をもとに生まれたAzure MLを活用して欲しいとした。活用事例には、LINEにて提供している新しい形の人工知能(女子高生)「りんな」を挙げた。りんなは提供から1カ月で130万人ユーザーを獲得している。

日本マイクロソフトとしては、「これら3つの注力分野を通じて顧客のビジネスに貢献したい」(平野氏)とまとめた。

Machiene Learningへの取り組みは、1991年のマイクロソフトリサーチ設立から。迷惑メールの判定に活用するなどして、ようやく一般的なサービスとして登場

活用事例として、医療用、AI女子高生「りんな」などと、幅広く応用されている