続いて、ベンダーの展示から注目した製品と、中山氏が考えるその応用の可能性が紹介された。

CRUSHBANK

「『CRUSHBANK』は、膨大なマニュアルから曖昧な言葉による質問で的確な回答を示してくれるシステム。すでにMicrosoftやCiscoのマニュアルを格納したものがクラウドサービスとして販売されている。エンジニアに限らず、航空や鉄道などマニュアル参照の多い分野でも導入効果があるのではないか」|

GO MOMENT

「『GO MOMENT』は、ホテルを対象にした宿泊客向けの問い合わせ対応システム。スマートフォンのメッセージングアプリのようなインタフェースで、『近くにあるお勧めのレストランは?』など、あいまいな質問にも的確な回答をしてくれる。大規模なリアル店舗等で、Pepperやサイネージを端末にした売り場案内に使えるのでは」

GoFetchCode

「『GoFetchCode』はビルや住宅建築における様々な建築基準を調査するシステム。地域特化の建築基準をデータベースに入れ、複雑な条件に適合するかどうかが瞬時に分かる。特に地震の多いカリフォルニア州の建築関係企業からのニーズが高いそという。日本なら市役所や税務署などで、行政サービスや確定申告に対する問い合わせ対応にも使えるのでは」

Servian

「『Servian』は、退職予定者と就職希望者のパーソナリティーをグラフ化し、比較できるシステム。メールのやり取りやSNSへの書き込みを元に、文章構成、内容、言葉遣いなどから個人の特性を分析。前向きな人か、どれくらい自分の感情を抑えられるか、などがわかる。人材派遣会社や企業の人事課ではすぐにでも活用したいサービスでしょう」

NOVABASE

「『NOVABASE』は顧客の行動パターンや過去にやり取りしたメールなどから嗜好を判断し、的確な商品やサービスを提案するシステム。展示内容は金融系企業に特化されたものでした。日本なら企業を顧客とする中小企業診断士などが、企業業績や地域特性などを基にした施策のコンサルティングを行うことにも活用できるのでは」

hc1.com

「『hc1.com』は、患者の通院率アップをはかる医療機関向けのシステム。保険の種類や投薬状況などから患者の通院パターンを分析し、通院率の高い患者との比較により通院継続につながるアプローチを行うことができます。日本の病院で使われることはなさそうですが、例えば学校で過去の行動パターンから不登校になりそうな生徒を事前に把握することができれば、対策に役立てられるのでは」

Perficient

「ビジネス最適化システムなどを提供する『Perficient』では、Watsonによる事故発生予測に取り組んでいる。過去の事故案件や関係者のメール、気象情報などから、今後どんな事故がいつ起きるのか、その確率や被害を予測する。予測だけでなく、現在の仕事場の安全管理が十分かどうか判断することも可能だ」

ロボットと人工知能

続いて中山氏は、人工知能とロボットとの関わりについて述べた。かつてソニーが発売したAIBOは残念ながら知的ロボットではなかったが、現在は世界で様々な知的ロボットが開発されている。例として挙げられたのが、「JIBO」「Musio」「CogniToys」だ。CogniToysは通信でWatsonと接続することで、会話をしながら相手の年齢・知的レベルを解析し、それに合わせた会話を行うことができるオモチャとして企画され、Kickstarterで大きな注目を集めた。

知的機能を搭載したロボット。デモ映像はYouTubeなどでも

あぷり また、フランスのアルデバランロボティクス社が開発したNAOを使い、自分に自信の持てない子供がロボットに字を教えることで自信を持てるようになることを、スイス連邦工科大学の研究者らが発見した。中山氏は「先生役になることで学ぶことができるという、逆転の発想が参考になった」と言う。

ロボットに「教わる」のではなく「教える」ことが子供の学習に役立つ

紹介された様々な事例から、人工知能とロボットが組み合わされることによる大きな変革が目前に迫っていることがリアルに感じられる講演となった。