2015夏は、"Skylake"こと第6世代Coreプロセッサや次世代OS「Windows 10」といった注目の製品がほぼ同時期に封切られようとしている。Core 2 Duoや第2世代Core(開発コード名:Sandy Bridge)から自作PCが止まっているという人も、そろそろPCの換え時ではないかと考えているかもしれない。

CPUやマザーボードを新調しても旧世代のPCケースを使い続けられるのが自作PCの良いところだが、やはり最新PCはイマドキのPCケースで組みたくなるもの。数世代前とは自作PCのトレンドも変わってきた。そこで最新の人気PCケースをあらためて紹介しようというのがこの企画だ。

今回はその中でも実売1万円弱という値段でありながら、非常に扱いやすく拡張性も高いことで人気のAntec「Performance One P100」(以降P100と略)を紹介するとしよう。

2014年1月の発売以来、売れ筋上位の常連に人気ケースがAntec「P100」だ。実売1万円前後というお手ごろ価格ながら、長く使える要素を満載している

名機「P280」をベースに今のPCパーツ事情に最適化

P100のルーツである「Performance One P180」(P180)は強い静音志向を打ち出すことで自作ユーザーの絶大な支持を集め続けた製品だ。電源とマザーボードのスペースを物理的に分ける(いまはNZXTがこれに近いものを使っているが)デュアルチャンバー設計が話題を呼んだ。

その後継である「P280」はデュアルチャンバーは排したものの広いグラフィックボード用スペースや制震ゴム付き3.5インチシャドウベイ、さらに大型CPUカットアウトなど今風の要素をふんだんに取り入れた製品となった。

そして今回紹介するP100は、P280の基本設計を継承しつつもコストダウンしたエントリークラスのPCケースだ。同社はP100の下位モデルである「P70」も販売しているが、開閉式フロントパネルやベイの数はもとより、根本的なシャーシ設計から細部の作り込みにいたるまでまったく別物の存在である。

P100のフロントパネルはダブルヒンジになっており、完全に裏側へ折り畳むことができる。巨大なフロント吸気口はパネルを閉じると塞がるように見えるが、吸気が妨げられることはない

P280はXL-ATX対応(拡張スロット9本まで対応)のやや大型ケースだった。これに対しP100はATXまでの対応にしたことで、W110×D370×H460mmと全体に小型になった。その分5インチベイは3基から2基に減ったが、3.5インチシャドウベイは7基に増加した。これは光学ドライブ類を使わない近年の自作スタイルを反映させたものだ。

フロント上部にはUSBポートやスイッチ類を配置。スイッチの触感は価格なりといった印象だ

そのほか、P280ではビルトインされていたファンコンが削除されたり、サイドパネルの構造が簡略化されたりしているが、P100は単なるコストダウンモデルではない。イマドキのパーツ事情に合わせ冷却力と静音性のバランスを見直した製品なのである。

ケースの機能が変化しても、なかなか変化しないのがリア。リアファンの上側にやや広めにスペースが確保されているのは、かつて同社の「P280」でファンコンがついていた名残だ

電源ユニットがホコリを吸い込まないように底面に着脱式のフィルターを装備。リア側から引きだすようになっている

遮音パネルにも構造変化が

P100の基本セッティングは静音性重視。P280の内張りはフロントパネルがウレタン製スポンジ、サイドパネルはポリカーボネートと使い分けられていたが、P100ではフロントもサイドもウレタン製スポンジに統一された。

サイドパネルはフロント側の柱部分を軸に開くような形で分離する。よくあるスライドさせながらはめ込むタイプよりずっと扱いやすい。裏配線をした結果、マザーボード裏側のサイドパネルがなかなかはめ込めないという経験がある人なら、この設計の有難さがわかるはず

またP100では天井ファン穴をふさぐことで、ケース全体で遮音性を高める方向に調整することもできる。天井の穴は必要に応じてファン設置も可能になっているため、自作の自由度はむしろ上がっている。

サイドパネルはスチール板の内側に柔らかいウレタンスポンジを内張りした2層構造となり、吸音性を高めている。スチール板の厚みは実測0.7mmであるせいか、剛性感が少々不足している感もある