急速に需要が拡大する第三者保守市場

データライブ 東京テクノセンター外観

「世界中のIT資源を最適化しよう」をミッションとして、ユーザー主体でシステムの最適な稼働期間を決め、システム投資を計画的に行える環境を提案してきた第三者保守会社のデータライブ。同社では4月に、第三者保守会社として国内初の保守・リペアサービスオペレーションセンター「データライブ 東京テクノセンター(以下、DL TTC)」を開設した。そこで今回は、開設直後のDL TTCにマイナビ取材班が潜入! 第三者保守市場の動向や開設の背景、施設内の様子などをレポートしよう。

データライブは2003年に設立、2007年よりリユースサーバ事業を開始した。当時ユーザーは、保守サポートがない中古サーバを利用するといった選択肢はなく、企業としても購入しづらい市場だったという。

同社 代表取締役の山田和人氏は「欧米では、20年ほど前から第三者保守事業者が活躍していました。そこで、ユーザーは中古としての部品ではなく、保守に耐えられる品質の部品が欲しいのだと気付き、第三者保守会社としての事業を開始しました」と、当時の様子を振り返る。

データライブ 代表取締役 山田和人氏

こうして同社では2009年から、メーカーによるアフターサービスや保守期間が終了した製品(EOSL/EOL)に対して、サーバの保守メンテナンス事業をスタートした。サービス品質の向上に注力した結果、契約数は現在まで累計約5,000社となり、今後3年間で事業規模の3倍増を計画しているという。こうした背景から、急速な需要拡大への対応と同時に、より高水準なサービスを提供するために開設したのがDL TTCというわけだ。

「第三者保守会社に求められるニーズは、大きく2つの段階に分けられます。まず第一段階は、メーカー保守が切れたときの受け皿的な役割です。サーバはミッションクリティカルな業務に使われることが多く、万が一に備えた保守が必要不可欠といえます。企業が本来使い続けたい期間を設定していても、メーカー保守が切れれば切り替えざるを得ません。そんな状況を改善するために弊社のような第三者保守会社が存在します。メーカー保守以外の選択肢が増えることで、メーカーではなくお客様を主体とした投資計画が練れるようになるわけです。そして第二段階は、メーカー保守がまだ残っている時期に、より低価格で保守が受けられるというニーズです。こちらは弊社でも今後徐々に取り組みを強化していく予定です」(山田氏)

セル方式で品質維持と生産効率向上を両立

マルチベンダー対応で異なるタイプの機器の製造に最適な独自のセル方式で製造

前述の通り、DL TTCは拡大する需要への対応と高水準なサービス提供のために開設された施設だが、具体的にはどのような内容が求められたのだろうか。まず、品質の向上という面では、十分な検査環境が用意された。同社が提供する保守部品や保守サービスの対象は、企業にとってミッションクリティカルなシステムであることも多い。そこで、より精度の高い検査が行える各種機器を導入。同社がこれまで培ってきた技術やノウハウを組み合わせることで、全体的な品質の底上げが図られている。

『データライブKnowledgebase』技術情報を集約。年間で約2000件のナレッジが蓄積される

一方、いくら細かい部品検査で品質が向上しても、肝心の生産効率が低下するようでは意味がない。
「現在は、サーバ、ネットワーク機器、ストレージ、各種パーツなど、異なるタイプの機器の製造に最適な独自のセル方式で製造を行っている。お客様毎の細かな要望に応え、品質も保ちつつ生産効率の向上が図れるようになりました。まだ効率面で改善できる部分はかなり残っているので、この品質を維持しながら、生産能力を現在の3倍程度まで拡大していきたいです」(山田氏)

確かに、同社が手がける保守部品や保守サービスはマルチベンダー対応のため、多品種少量生産向きのセル方式はベストな選択だ。ただしセル方式では、各担当者に全工程を処理するための広域かつ高いスキルレベルが要求されるのも事実。同社では、『データライブKnowledgebase』といったツールを導入し技術情報を集約。ナレッジ蓄積と共有、人材の育成に努めている。

保守技術や検査方法などを開発している

さらに、検証設備が充実しているのもDL TTCが持つ特徴のひとつだ。企業のシステム環境は、メーカーだけでなく製品や年代など千差万別の部品で構成されている。マルチベンダー構成のシステムも多く、その組み合わせは数えきれないほど。こうした企業のシステム環境に少しでも近づけるべく、DL TTCではサーバ本体を含む数多くの検証用機材を用意している。

単純に検証機材を整えるだけでなく、これらを使い保守技術や検査方法などを独自に開発しているのもDL TTCの大きな特徴だ。時には顧客のシステムと同等の環境を構築し、保守手順や障害の再現を行うこともある。こうした細かな検証の積み重ねがノウハウとなり、複数ベンダーの製品に対応する第三者保守会社としての実力および信頼性向上へとつながっているのだ。

「たとえばメーカーと型番が同じ部品でも、ファームウェアや出荷時のシリアル番号などによって不具合の出やすさが違うようなケースもあります。そうした部分までしっかりと検査・検証することが、品質の向上とお客様の信頼に結び付くわけです」と山田氏。 さらに「中古部品による保守を始めた頃は『いま動いているサーバに中古部品を入れるの?』と驚かれることも多かったのですが、品質を認めていただいたお客様からの口コミやご紹介などもあり、おかげさまで受注が増加しています」と続けた。これは、市場ニーズと同社の取り組みがマッチしていることの表れともいえるだろう。

DL TTCの内部を大公開!

それではここから、気になるDL TTCの施設内をフォトレポート形式でご覧いただきたい。

【商品管理部】

同社 業務本部 商品管理部 部長 齋藤学氏

調達業務は基本的に文京区の本社で行っているが、保守部品の調達に関してはDL TTCの商品管理部が直接手がけている。

「商品管理部では、荷捌きから入庫、システム入力、在庫管理などを行っています。現在の在庫数は、システムに登録済みのサーバ・ネットワーク機器で約6,000製品でしょうか。パーツ類に関しては多種多様なニーズに対応できるよう、約30,000個を常備しています」と語るのは、業務本部 本部長代理 商品管理部 部長の斎藤学氏だ。

入荷・仕分け
サーバやネットワーク機器、ストレージ、各種パーツが毎日10000台以上入荷される

入庫登録
検品/導通チェック/スペック確認が済んだ製品から、データと紐付けた入庫登録を行い、以降は個体IDで管理される

本体在庫
約6000台を常備。同社基幹システムと個体が連動し、スピーディに部材のピッキングが可能だ。こうした取り組みにより、障害発生時も迅速に対応できる

パーツ在庫
約30000個が常備されている。本体在庫同様に基幹システムと連動しており、スピーディにピッキングが可能。分類された大量のパーツは、商品を導電袋に入れて静電気対策を行っている

【メンテナンス部】

「メンテナンス部では、エンジニアが障害対応をする上で必要な情報の収集や部材の手配調整や準備を行っています。主な業務は、ユーザーからの障害発生連絡、原因の特定、部材(交換パーツ)の手配、エンジニアの手配、原因を特定できない場合には東京テクノセンター内の専門部門と連携して技術検証、ユーザーに対する報告などのコントロールを一括で行っています」と業務内容を語るのは、業務本部 メンテナンス部 部長の新居弘司氏だ。

障害発生時の具体的な流れとしては、障害受付コールセンターが顧客から障害発生の連絡を受けた際、メンテナンス部で情報収集・情報確認後に、障害切り分けと現地への保守パーツ配送指示、フィールドエンジニアに対する出動指示を実施。状況によっては、上級エンジニアによる解析と技術支援を行う。こうしたシステム障害に関する全プロセスを24時間体制で一括管理し、フレキシブルなサービスにより顧客のダウンタイム短縮を図るのがメンテナンス部の役割だ。

同社 業務本部 メンテナンス部 部長 新居弘司氏

保障サポート/EOSL保守/スポット修理などなまざまな対応状況を一元管理。状況把握や解析、切り分けによって顧客の迅速なシステム復帰をサポートしている

【テクニカルサービス部】

同社 業務本部 テクニカルサービス部 下元孝介氏

メンテナンス部材の整備を行うリファービッシュ・アッセンブリエリア。「現在は10セルを稼働しており、できるだけ作業効率が上がるよう、各セルの後ろに作業者用の棚を配置しています。1ヶ月あたりの生産台数は、約200台ほど。それ以外に、保守部材のストックとして約500~1000台の検査も行っています」と業務内容を語るのは、同社下元氏だ。 保守パーツに関しては、基幹システム(生産・検品管理一覧)により一元管理している。この基幹システムは、受注ID/顧客名/営業担当/出荷日/納品日/生産指示などが一覧できるため、受注件数が増加した場合でも常に優先順位を考慮した効率的な作業が可能だ。中古特有の考え方もあり、全て自社開発をしているという。

保守技術開発
多様なメーカー・年代の機器を用意しており、保守技術や検査方法などを開発している。お客様システムと同等の環境を構築し保守手順や障害の再現などを行うこともあるという

HDD検査システム
ラボにはYEC製のマルチポート検査/消去システム「HDD Multiport Test System」を導入。同時に最大32台のHDDを検査/消去できる。SAS,SCSI,SATA,ATA,FCに対応。中古用に検査プログラムを日々改善しているそうだ

フレッシュバッテリー
RAID コントローラー用バッテリーのセルを新品に交換して再生したもの。「EOSL 保守サービス」を展開する上で、バッテリー交換を依頼されるケースが多く、バッテリー寿命問題に対し同社ならではの視点で解決した

物流
全国24時間365日配送対応が可能。保守パーツは基幹システムにより一元管理され、在庫最適化(複数拠点管理・発注点管理・適正在庫配置)を実現している。まさに緊急対応拠点に最適化した配備だ

以上のように、DL TTCの開設によりEOSL/EOLにおける第三者保守事業をより強化しているデータライブ。現在、ハードウェアや各種パーツの調達、中古製品の導入などを検討している企業にとっては、非常に強力な味方になってくれるに違いない。