こうした中、今年度は4K-IP放送の開始、4K-VODの提供作品拡大、4K映像制作の新たな仕組み作りという3つの施策を実施する。4K-IP放送はフレッツ光ネクスト回線を使ってマルチキャストで4K映像を配信するサービスで、従来の4K-VODに対していわばテレビ放送という位置づけ。

現在は一部量販店の店頭などで試験放送をしているが、12月から本放送を開始する。利用には対応テレビが必要で、すでにシャープと東芝は開発を予定しており、パナソニックは対応を検討中。他のメーカーとも交渉を行っているという。また、同社の4K対応外付けチューナー(ST-4100)もファームウェアアップデートで対応する。ただし、現時点では提供チャンネル数や編成などは公表されず、後日明らかにされる。

4K-IP放送を12月にも開始

対応テレビは順次拡大予定

4K-VODでは、さらに配信作品を拡大。2016年3月末には700本まで拡大する予定で、テレビ東京のドラマ「不便な便利屋」をテレビ放送直後から、4Kで見逃し配信する。また「E-girlsをまじめに考える会議」では、テレビでの放送前に4K-VODとして先行配信を行う。いずれも日本初だという。

年度内に配信するコンテンツ数を700本以上まで拡大する

テレビ東京と共同で見逃し配信や先行配信を実施

NHKが7月から放映予定の「シャーロック ホームズ 4Kスピンオフ(仮)」でも、放送後の見逃し配信を実施。撮影はすべて4Kで行われ、テレビではフルHD放送だが、ひかりTVでは4Kで配信する。

NHKの人形劇「シャーロック ホームズ」の4K版も配信

ほかにも、ぷららTVとしては初めてナショナル ジオグラフィック チャンネルと共同でドキュメンタリー番組を4Kで制作。高輝度青色LEDの発明でノーベル物理学賞を受賞した中村修二氏の密着ドキュメントを4K-VODで配信する。ハリウッド映画の『ANNIE』、ライブショーの「ウルトラマンヒーローズ THE LIVE アクロバトルクロニクル 4K」なども用意。幅広いコンテンツで利用者拡大を図る。

共同制作のドキュメンタリーやハリウッド映画など、多彩なコンテンツを用意する

4Kコンテンツ拡大に向け、新たな仕掛けも行う。これまで、映像制作はプロフェッショナルが集団で行うものだったが、YouTubeのように個人が撮影したものでも「結構いいものがある」(板東社長)。これに近い仕組みを作ろうというのが新たな取り組みだ。

メーカーから4Kカメラや編集機材を借り、これを映像制作の専門学校生に提供して4Kコンテンツを制作してもらう。この映像をぷららや映像の専門家が評価して優秀作を集めたコンテストを実施。特に優れたクリエーターには「ひかりTVドリーム」と呼ばれるクラウドファンディングで映像制作の支援を行って、最終的にはひかりTVでの配信も行う。すでにHAL大阪・名古屋・東京と提携が決まっており、機材の調達を進めているところだという。

同時に、映像の新技術「HDR」や音の新技術「MPEG-4 ALS」の導入も検討する。明部と暗部をより忠実に再現できるHDRでは、今後対応テレビとコンテンツの動向を見据えながら検討。MPEG-4 ALSは、これまで圧縮で捨てられていた高音域が再現できるようになり、よりリアルで臨場感のあるサウンドを提供できる。

4Kコンテンツの拡大では、オリジナルコンテンツの制作を行うが、個人・アマチュアをターゲットに制作者層の拡大も狙う

新技術としてHDRとMPEG-4 ALSへの対応を検討

今年は、米映像配信大手Netflixが参入する予定で、板東社長は「脅威であることはまちがいない」と危機感を見せつつ、「映像だけで勝負するつもりはない」として、音楽や電子書籍の配信、ショッピングなどの総合サービスで対抗していく。また、米国のやり方が日本でも通じるかどうか、といった面もあり、動向を見守っていく。Netflixの参入で市場が活性化することも期待する。

NTTぷららは、会社設立から今年で20年という節目の年にあたる。板東社長は「新たな形でいろんなものをリスタートしたい」と意欲を語り、さまざまな施策を打ち出して会員拡大を図っていきたい考えだ。

デモで放送されていた4K-IP放送と対応チューナー。12月の本放送に向けて、すでに技術的な課題はクリアしているという

MPEG-4 ALSの波形(下)。特に高音域が確保されている

HDRの映像(左)と通常の映像。HDRによってより明るく、階調豊かに表現できている