CSRは2月13日、同社の無線通信技術を活用した屋内測位技術「SiRFusion(サーフュージョン)」のメディア向け公開実験を行なった。

CSRはイギリスのメーカーで、Bluetoothのチップセットなど事業のメインとして展開している。特に無線ヘッドセットへの採用が多く7割近いシェアを獲得している企業だ。

CSRの事業内容。Bluetooth事業のほか、5つの柱となる事業があり、SiRFusionはロケーション事業にあたる

位置測位技術というと衛星を使ったGPSが一般的だが、その場合衛星からの信号を受け取る必要がある。そのため、信号が届きにくいビルの乱立した地域や巨大な建造物の中、地下街では正確な位置測位ができないという欠点がある。

そこで「SiRFusion」は、GPSだけでなく、Wi-Fi信号や加速度、角度、地磁気といったスマホの各種センサーからの情報から位置測位が行なえるシステムとなっている。

GPSや通信機器からの情報、デバイスセンサーの検知したデータを元に、クラウドのCSRポジショニングセンサーとやりとりを行なう仕組み

例えばWi-Fiの場合、アクセスポイントの位置情報がクラウド上にデーターベースとして蓄積されており、電波の強度などから位置測定を行なう。クライアント側からも測定したデータが送られアップデートされるため、利用する機会や人数が多いほど正確な位置情報がつかめるようになる。

Wi-Fiアクセスポイント自体は既存のシステムが利用できるため、新たに位置情報を検出するための機器を設置する必要がなく、低コストで正確な位置測定システムが構築できるのがポイントだ。

また、センサーからは連続的なユーザーの動きを検知可能。歩いているのか乗り物で移動しているのかといった動きも位置測位の結果に反映させられる。

公開実験では、CSRが開発したオリジナルのAndroidアプリを使って位置測定が行なわれた。SiRFusionは、SDKとして提供されておりスマホアプリに組み込んで利用できる。ただ、iOSの場合はOSの仕様からWi-Fiアクセスポイントの情報などがアプリへ渡せないため、現状では利用できず、Android向けの提供のみとなっている。

実験で使用したオリジナルアプリ

公開実験に先立って、東京八重洲地下街のルートを歩くというテストが同社によって行なわれたが、3回のテストでほぼ同じ測位結果が得られたとのこと。その際にも新たに位置測定システムを設置するのではなく、既存のシステムだけで行なわれており、アプリにSDKを採用するだけで、GPSに頼らない位置測定が実現している。

同社が行なった実証実験の結果、同じルートを3回歩いたところ、ほぼ同じ軌跡でトレースされている

公開実験は東京丸の内の地下街で行なわれたが、実際にGPSの信号が受けられない地下でも、ほぼ正確な位置を印していた。Wi-Fiの設置箇所が少なかったり、磁場の影響によるゆがみなどで正確に測定ができない場合はビーコンを設置することで補正できるとのこと。また、圧力センサーからの情報にも対応しているので、ビルの階数移動による地図の切り替えといった機能も利用できる。

丸の内地下街での実験の様子

ピンクの丸が検知した位置情報。リアルタイムで常に位置測定を行なっており、移動の軌跡もキッチリととらえている

最近では、Googleマップなどでもビルなど屋内や地下街の地図表示にも対応している。これらの地図アプリがSiRFusionを採用すれば、衛星からの信号が届かない場所でも現在地をチェックしたり、ルート案内が利用できる。

また、大型のショッピングモールや地下の商店街などがオリジナルのアプリを作成し、SiRFusionを利用するケースも考えられる。SiRFusionは今後Bluetooth LEを使ったビーコンにも対応予定。

Bluetooth LEビーコンはWi-Fiよりも高い精度での測位が可能となっている。そのため、スーパーマーケットで特定の売り場ピンポイントで案内したり、ユーザーの位置情報から、その売り場の前に滞在したケースのみクーポンを送るといったことも実現できるという。

同社は今後も同様の実証実験を続けて行くとのことで、より高い精度の位置測定技術の登場に期待したい。