アナログテレビからの買い替えだけでなく、今年の春商戦ではさらに2つの需要層を狙った展開を行う。ひとつは、2004年度から2007年度までに出荷された約2,350万台の薄型テレビに対する買い替え需要だ。「薄型テレビは買い替えサイクルが平均8年間。2004年から2007年に販売されたテレビが買い替え対象となる。AQUOSでは、2006年にプレミアムモデルのRX1、ハイグレードモデルのGX1/2を販売。それぞれ9万台と42万台の販売実績があり、これらのユーザーの買い替えが見込まれる」とする。

買い替えと置き換えの2つの需要層を狙う(写真左)。サイクルから見て買い替えの対象となるAQUOS(写真右)

もうひとつは、2009年度から2011年度にかけて販売された約2,100万台の32型テレビからの置き換え需要だ。「地デジ移行に伴う特需によって、量販店店頭では品薄が発生したため、意図するサイズのテレビを購入できなかったユーザーも多い。40型の商品がないから仕方なく32型を購入した、というユーザーがいたとも聞く。こうしたユーザーに対して、満足度の高い選び方を提案したい。この春テレビを購入すれば、平均買い替えサイクルからみても、節目の年(オリンピック)はカバーできる。4Kテレビのサイズ選びを間違わないようにしなくてはならない」と語る。

「縦横無尽」に満足度の高い提案を

そこで同社が打ち出すのが、「縦横無尽」と銘打った販売施策である。これまでのテレビの買い替え提案は、使用中のテレビの「横幅」スペースを考慮したものだった。

もちろん、今年の春商戦でも横幅を意識した提案は継続するという。「たとえば、サイドスピーカーを搭載した37型の液晶テレビからの買い替えでは、そのままのサイズで46型を設置でき、画面サイズは1.5倍にできる。だが、今年の提案では、あと左右に3.5cmずつ横幅を確保してもらえれば、52型の液晶テレビが導入できるという提案をしたい。これにより、画面サイズは37型の2倍になり、満足度を持ったインチアップが可能になる」とする。

横幅だけでなく縦幅も考慮に入れた提案を行う

こうした提案に、新たに加えたのが縦スペースの提案である。「アンダースピーカータイプの46型液晶テレビから52型の液晶テレビに買い替えた場合、画面は1.3倍となる。だが、高さが8cm低くなるため、画面は大きくなってもテレビが大きくなった印象が薄い。そこで、5cmだけ縦幅を高くできれば、60型の液晶テレビを導入できる点を訴求したい。そうすれば画面サイズは1.7倍になる。数字上のサイズアップだけで選ぶと、小さく感じて満足感が得られないという問題を、これによって解決できる」とする。今年の春商戦における量販店店頭では、従来の液晶テレビのサイズをPOPで示しながら、満足できるインチアップの提案を行うというわけだ。

このように、横の提案だけでなく、新たな"縦"の提案を行うことから、今年の販促施策の名称を「縦横無尽」として買い替えを促進する。

量販店店頭などに設置されるPOP

この春商戦が今後のカギを握る

国内テレビの基本需要は年間900万台~1,000万台といわれる。地デジ移行後のテレビ需要の低迷は依然と続いているものの、その一方で、すでに底を打ったとの観測もある。基本需要の水準に向けて、回復基調にあるのも事実だ。

「ブラウン管テレビから薄型テレビに移行することで、リアリティのある映像を実現した。同様に今度は、4Kテレビに切り替えることで、人間の眼で見た映像を再現するような立体感や臨場感を実現するとともに、ITとの融合が進むといった新たな潮流もある。業界団体である一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)のデータをもとにした当社の予測では、2017年度には4Kテレビが2Kテレビの出荷台数を上回る」とする。

国内マーケットの推移と予測。2017年度には出荷台数で4Kテレビが2Kテレビを上回るか

テレビ需要は明らかに回復の兆しを見せている。その成長曲線を着実に上向きにできるかは、この春商戦にかかっている。

薄型テレビからの買い替え需要では、4Kテレビや満足できるインチアップの提案。そして、デジアナ変換サービスの終了にあわせて、インチアップの満足感が得られる40型や32型といった普及モデルの提案。今年のシャープは、これら2つの戦略で2015年春商戦に挑む。

シャープが新たに投入する32型のLC-32H20(左)と40V型のLC-40H2(右)

スタンダードモデルのラインナップを拡充