米カリフォルニア州・ロサンゼルスにあるロサンゼルスコンベンションセンターおよびノキアシアターにおいて、Adobe Systemsの主催により開催されたクリエイティブカンファレンス「Adobe MAX 2014」。アドビのクリエイティブ関連の製品群は現在Adobe Creative Cloud上に集約されており、今回のAdobe MAXでも、Creative Cloudの大幅なアップデートが発表の目玉になっていた。

正式リリースから1年半が経過し、クラウドサービスとしての形が整ってきたCreative Cloudだが、今後はどのような方向に進んでいくのだろうか。それについて、Creative Cloudのビジネスを担当するバイスプレシデントのMala Sharma氏から話を聞く機会を得た。Mala Sharma氏はCreative Cloudの構想の最初の提唱者でもある。

Creative Cloudが新しいイノベーションを起こす

最初に、Sharma氏はCreative Cloudをスタートしたときのことを振り返って次のように語った。

「非常に速いペースで変化している市場に対応するには、新しいイノベーションが必要でした。また、アドビとしては新しい顧客も獲得して行く必要がありました。そんな中でサブスクリプションモデルを導入した場合のインパクトについて調査した結果、アドビとユーザーの双方にとってさまざまなメリットがあることがわかり、長い準備期間を経て正式スタートにたどり着きました。」

Mala Sharma氏

同氏によれば、現在のCreative Cloudのユーザー数は約280万人ほどであり、これはほぼ当初の期待に沿った結果だという。ユーザーの離反率についても、数値は公開されていないものの想定の範囲内にあり、より使い勝手をよくすることで満足度を上げる余地はあるとのことだ。

Creative Suiteというパッケージ形式の販売から脱却してCreative Cloudに移行したことで、短いサイクルでの素早いリリースが可能となり、ユーザーのニーズに機敏に反応できるようになった。そこで、さらなる進化を目指すために行った次の一手が、モバイル方面の機能の充実と、クリエイティブプロファイルによるコラボレーションの実現だ。

モバイルアプリのターゲットは「あらゆるクリエイティブな人」

モバイル対応については、2014年6月のアップデートの時点でも大幅なアップデートがあったが、今回の発表では3つの新アプリの追加とは別に、名称の変更によるブランドの再編を行っている。

この再編によって、例えばAdobe IdeasがIllustrator Drawに、Adobe SckecthがPhotoshop Sketchになるなど、デスクトップツールとの関連がより明確になった。これについてSharma氏は、「今回のアップデートによってアプリ単体の能力が十分なものになったことに加えて、デスクトップとの間で摩擦のないシームレスな連携が行えるようになり、同じ名前を冠するのにふさわしいアプリになったと判断しました」と語っている。

アドビとしては、モバイルアプリの充実によって新しいユーザー層にも同社のツールを広めたいという狙いがあるようだ。同社のクリエイティブツールのユーザーは多くがその道のプロである。しかし、プロではなくても、プロと同じレベルの高度なツールを使いたいというユーザーは少なくない。そのようなユーザーに対して、安価で手軽に使えて、かつ本格的な使用にも耐えるツールを提供したかったのだという。すなわち、これらのモバイルツールはプロ/アマチュアといったユーザー層を問わず、あらゆるクリエイティブな人々をターゲットにしているということである。

現在提供されているのはiOS向けのアプリだけだが、将来的にはより幅広いデバイスをサポートしていきたいという想いはあるようだ。Adobe MAX 2014の初日に発表されたマイクロソフトとのパートナーシップの強化もその意思の表れだと言える。アドビの調査によれば、クリエイティブのプロはモバイルでも十分な創作活動をしたいと考えており、それができない現状にフラストレーションを感じているという結果が出たそうである。一方でマイクロソフトのSurfaceはクリエイティビティの進化を手助けするために必要な能力を備えており、そのことがパートナーシップの強化につながったとのことだ。