セゾン情報システムズは11月7日、コンファレンスセンター品川において「HULFT DAYs 2014」を開催した。大阪、東京、名古屋と連続で実施するイベントで、ファイル転送ミドルウェア「HULFT」シリーズが6年ぶりにメジャーバージョンアップすることをお披露目する場だ。当日は導入事例紹介なども含めて、多くの情報が来場者に提供された。

海外普及を受けてグローバル対応も大幅強化

「HULFT8がお客様へ提供する新たな価値」と題してHULFTの現状と新機能について語ったのは、HULFT事業CTOでありアプレッソ 代表取締役社長でもある小野和俊氏だ。

HULFT事業CTO アプレッソ代表取締役社長 小野和俊氏

冒頭ではHULFTが20年以上の歴史を持つ製品であることを振り返り、過去には各時代のニーズを柔軟に取り入れて進化してきたことをアピール。現在の導入企業数は8,000社、販売本数は16万9,000本にも及ぶという。全国銀行協会の会員銀行では導入率が100%であり、日本自動車工業会の会員企業でも93%が導入。日本売上高トップ500企業のうち69%が導入しているなど、確実で安全なファイル転送を求める現場で広く活用されていることも紹介された。

特に昨年伸びたのが、海外での導入だという。世界40カ国での導入実績があり、同種のアプリケーション群の中では世界第4位のシェアを獲得した。こうした状況を受け、新バージョンとなる「HULFT8」ではグローバル対応が従来以上に強化されたのも特徴だ。

多くの企業で導入された実績を持つ「HULFT」シリーズ

海外での導入企業も多くマーケットシェア第4位だという

HULFTシリーズは従来からグローバル対応していたが、従来の「HULFT7」では日本語版と英語版で機能差があった。「日本語版でできるから当然英語版でもできるだろうと思っていたことができない、ということがいくつかあった。HULFT8ではそうした機能差がすべてなくなる。1環境で作業者ごとに言語を切り替えることも可能で、日付形式も各国型に対応。さらに新機能のリリースも同時になる」と小野氏はグローバル機能強化について語った。

従来よりも大幅に強化された「HULFT8」のグローバル対応力

転送速度が大幅に向上

HULFTシリーズの大きな特徴は、安心・安全で確実なファイル転送だ。そして、非常に品質が高く、障害発生率なども低いという特色もある。世界的に見ても希有なレベルで品質を保っていることを小野氏は強くアピールしたが、新バージョンではそうした品質を保ちながらさまざまな機能向上をはかり、それでいてシンプルな使い心地を残したと語った。

従来よりも大幅に強化された「HULFT8」のグローバル対応力

新バージョン「HULFT8」での強化ポイント

特に目に見えて向上したのが、ファイル転送の速度だという。「HULFT7の場合、チューニングしてFTPより少し速い程度だった。チューニングなしで使っている場合FTPよりも遅いと感じていたはず。HULFT8での実験では5倍以上速くなった。環境によっては10倍以上になることもある」と小野氏は速度について語った。

さまざまな状況下でのテスト結果も披露され、その中では元々高速に接続されているLAN内環境では効果が薄いが、インターネットを介した接続になると高速化の恩恵が受けられることがわかった。最近増えているという、オンプレミス環境からクラウドへのアクセスなどで特に効果があるだろうと考えられる。

「HULFT8」で大きく向上したファイル転送速度

インターネットを経由する転送で特に高速化を感じられる

この速度は、データ圧縮のロジックを変更したことによる高圧縮と、オンメモリでの圧縮・解凍による即時性が生み出している。また、転送速度のチューニングが自動化されたことでチューニング作業が不要になった。「多くのユーザーがチューニングなしで利用していたため、大きな速度向上が感じられるだろう。チューニングしていたユーザーの場合は、チューニングの手間がなくなるという効果がある」と小野氏。

さらに転送プロトコルについても「TCPはUDPと比べて遅いという人がいるが、実際に比べてみて欲しい。TCPが遅かったのは30年前のこと。多くの研究とバージョンアップによって高速化が実現されている」と言及した。

圧縮率の改善によって高速化を実現

転送速度のチューニングも自動化された

自動化を楽に行う「HULFT Script」

ファイル転送に伴う処理の自動化も強化された。「従来はシェルスクリプトでバッチを書く必要があり、時間と開発費がかかっていた。これを手軽に素早く行えるようにしたものがHULFT Script」と小野氏が語るように、デモンストレーションではその場で簡単な処理のプログラムが作られていた。

処理ブロックを並べて矢印で繋ぐというイメージのグラフィカルな操作で行えるだけでなく、サンプルスクリプトを呼び出して一部変更するだけで自社にマッチした処理にすることもできるなど、徹底的な省力化がはかられている。また、変更すべき部分はスクリプト冒頭に「★」マークがつけられており、作成した処理はその場で実行テストも行える。作成中に単体テストまでが完了する仕組みだ。

「我々は長年のサポートの中で、現場でどのような処理が必要とされているのか知っている。多くのユーザーが必要としている機能をテンプレート化した」と小野氏。1テンプレートが1機能となっており、テンプレートは随時追加されるため、ファイル転送の運用ノウハウをテンプレートという形で共有できるのも大きな魅力となっている。

自動化の負担を軽減する「HULFT Script」

地味ながら要望を取り入れた各種新機能

「HULFT8」では根本的な部分から手を入れたため、これまで要望があることは認識していながらも取り組めなかったという細かな部分に対しても多くの改善が行われている。

たとえば、ファイルIDが従来は8バイトまでだったところが50バイトまでになった。命名規約を柔軟に設定できるようになったわけだ。また、メッセージ機能のサイズ200バイトまで拡張されたため、フルパスのファイル名がジョブ連携で利用できるようになった。非常に細かい部分ではあるが、毎日利用する現場においては大きな変化といえるだろう。

設定項目の上限値が大幅に拡張

導入にあたってのハードルも低くなっている。従来は評価版と製品版とに連続性がなく、モジュールの入れ替えを行わなければならなかった。これがライセンスの変更のみでよくなり、本番環境構築後の再テストが不要になる。またテストに関しては、テスト実行時に不要なジョブを起動しないことやログへの記載有無などを指定できるようにしたことで、より実施しやすくもなっている。

評価版から製品版への移行はプロダクトキーの更新のみでOK

テスト時にジョブ実行や履歴出力を抑制できることでより動作確認が行いやすくなった

セキュリティについては、一般ユーザー権限で実行できるようになったことで、HULFTユーザー全てに管理者権限を付与する必要がなくなり、より安心かつ安全な利用が可能になった。

管理者権限なしで利用できるようにしてセキュリティを強化

「メジャーバージョンアップと呼ぶほど大きな変化には見えないかもしれないが、お客様の改善要望事項からさらなる品質向上をはかって180の機能改善を行っている。エラーメッセージやマニュアルの全面改定、製品構成のシンプル化などにも取り組んだ」と小野氏が語るように、より使いやすく、わかりやすくなるよう工夫されているのが新バージョン「HULFT8」なのだ。

講演の終盤ではクラウド環境でのHULFT活用や、実際の活用例等を紹介。さらに周辺ソリューションの紹介と主たる活用例を紹介することで、来場したパートナーにも大きなヒントを提供した。

HULFTシリーズのプロダクトマップ

製品開発ロードマップ