VAIO株式会社の製品はすべて、販売総代理店となるソニーマーケティングを通じて販売されることになる。

ソニーマーケティングの河野弘社長は、2014年8月4日に、安曇野のVAIO本社で行われた出荷式に出席。「VAIOに一番愛情を持っていた販社はソニーマーケティングであると自負している。VAIO再生のトリガーを務めることができるのは、とてもうれしい」と挨拶した。

出荷式で挨拶するソニーマーケティングの河野弘社長

実際、ソニーマーケティングが東京・銀座、名古屋・栄、大阪・梅田の3か所に展開するリアルストア「ソニーストア」を例にとっても、VAIOの重要性は際立っていた。

ソニーストア大阪を例にあげれば、1年半前となる2013年3月の同店売上高に占める構成比の47%はVAIOであった。実に売り上げの約半分を占めている。これは同月だけの現象ではなく、今年1月までは、継続的に続いていた傾向だ。そして東京や名古屋の店舗でも同じ傾向がみられている。ソニーストアはVAIOによって成り立っていたともいえるのだ。

その点だけを取り上げても、まさに"VAIOに最も愛情を持って販売してきた"という言葉が当てはまるといえよう。

続けて河野社長は、「ソニーマーケティングは、商品に触れることができる店舗を増やし、VAIOのビジネスの土台作りをしっかりと作っていく考えだ。そして、これまで以上にお客様、マーケットとの距離を近づける考えである。VAIOの社員もどんどん現場に出てきて、お客様の声を聴き、それを安曇野だから実現できる製品作りに繋げてほしい。私たちは一心同体のパートナー。一緒に安曇野の価値を高めていきたい」と、これまで以上に一体感を持った関係を強調してみせた。

7月1日から販売総代理店契約を結んだソニーマーケティングは、コンシューマ市場向けには、ソニーマーケティングの運営するインターネット直販サイト「ソニーストア」、東京・銀座、名古屋・栄、大阪・梅田の3か所に展開するリアルストアの「ソニーストア」のほか、ソニーストアと連携した形で展開するe-ソニーショップや量販店でも取り扱いが行われる。

ソニーストア大阪・堺本浩司店長

ソニーストア大阪では、一番の入店導線となる入口正面右側にVAIOコーナーを配置

ソニーストア大阪では、一番の入店導線となる正面右側にVAIOコーナーを配置。「7月1日以降、最も見やすい場所にVAIOを展示している」(ソニーストア大阪・堺本浩司店長)と語る。

VAIOが発売した3機種をすべて展示するとともに、ソニーストア大阪が入居するハービスPLAZA ENTに出店しているマザーハウスとのコラボによるPCケースも展示するなど、ソニーストア大阪ならではの特徴も打ち出す。

ソニーストア大阪ではハービスエントに出店しているマザーハウスとのコラボによるPCケースも展示

一方、量販店としては、ビックカメラ新宿西口店、ビックカメラ池袋本店パソコン館、ビックカメラ有楽町店、ヨドバシカメラ新宿西口本店、ヨドバシカメラマルチメディアAkiba、ヨドバシカメラマルチメディア梅田の6店舗が、VAIOコーナーを設置して、2014年8月8日から展示を開始。

ソニーマーケティング カスタマーマーケティング部門・浅山隆嗣部門長は、「まずは4店舗程度でのスタートを考えていたが、ヨドバシカメラ、ビックカメラの協力を得て、6店舗からスタートできた。多くのお客様に見て、触っていただけることは大切なこと。今後の売れ行きを見ながら、取り扱い店舗の増加も検討することになる」とする。

ソニーマーケティング カスタマーマーケティング部門・浅山隆嗣部門長

VAIOの復活に量販店側でも、期待の声を寄せる。

東京・秋葉原のヨドバシカメラ マルチメディアAkiba・御代川忍店長は、「VAIOの展示コーナーは、マルチメディアAkibaの1階フロアの一等地ともいえる場所を確保した。タブレットやスマートフォンといった成長分野の製品と隣接したコーナーに設置することで、多くの人に見ていただき、触っていただけるようにした」と語る。

東京・秋葉原のヨドバシカメラ マルチメディアAkiba・御代川忍店長

ヨドバシカメラ マルチメディアAkiba 1階売り場のほぼ中央部分にVAIOコーナーを配置

展示コーナーは、1階売り場のほぼ中央部分。人の通りが多い場所だ。それだけVAIOの販売に期待していることが分かる。

もともとVAIOは、平均単価が高い製品。さらに、高価格のオプションとのセット販売も多いという特徴を持つ。

「タブレットなどの低価格製品に関心が集まるが、PCとしての価値をしっかりと提案できる製品が必要。これにより、平均単価を引き上げることもできる。VAIOの役割は新会社になっても継続するものと期待している」と語る。

東京・有楽町のビックカメラ有楽町店・塚本智明店長も、VAIOの復活を待ち望んでいた一人だ。

東京・有楽町のビックカメラ有楽町店・塚本智明店長

「もともと、ビックカメラ有楽町店は、ビジネスマンの来店比率が多いという傾向がある。なかでも、VAIOはビジネスマンに高い人気を誇る製品だった」と前置きし、「ソニーのPC事業撤退の影響は少なくなかった。他社の製品でそれを埋めることができなかったのも事実だ。そのVAIOがいよいよ戻ってきたことで、PCの本質を突いた製品を、ビジネスマンに販売できる環境が整った」とする。

実際、同店では、市場シェアよりも高い販売シェアがあり、VAIOは同店の客層とも合致した製品であったといえる。

同店では、5階PC売り場の一番奥の壁面にVAIOコーナーを設置した。一番奥というのは一見あまりいい場所には見えないが、実は、同売り場にとっては、隠れた一等地である。

5階フロアにあがるためのメインの導線となるエスカレータを上がると、多くの来店客は左側に曲がり、アップルショップの方向からPC売り場に入ってくる。その一番先に目に入るのが、VAIOコーナーなのだ。

ビックカメラ有楽町店では5階PC売り場の一番奥の壁面にVAIOコーナー

塚本店長も、「目に入りやすい場所にあり、認知してもらいやすい場所にある」と語る。

「VAIOの復活を待っていた人は少なくない。仕事ができる格好いいビジネスマンのためのPCとして存在感はいまでも健在。他社とは明確な差別化提案が図れる。販売が増加すれば、売り場の拡張も積極的に検討していきたい」と、VAIOならではの提案に期待を寄せる。

このように多くの販売店が、VAIOに期待を寄せているのだ。

また、VAIO株式会社は、VAIOの新たな市場開拓として、BtoB市場を重視する姿勢をみせており、ここでもソニーマーケティングとの連携は重要になる。

ビジネス市場向けには、ソニーマーケティングの法人営業部門による訪問営業や、法人向け直販サイト、お客様購入相談デスクを通じた電話による販売のほか、大塚商会、シネックスインフォテック、ソフトバンクコマース&サービス、ダイワボウ情報システムの4社のディストリビュータを通じて、全国3000店のビジネス系販社で流通される。これは、ソニー時代からの法人向けビジネス形態とまったく同じだ。

VAIOの法人向け販路

しかし、その一方で、VAIOの流通施策には、大きな懸念材料があるのも事実だ。