東京農工大学(農工大)と名古屋工業大学(名工大)は7月18日、沈殿反応により引き起こされる流体不安定対流の実証に成功したと発表した。
同成果は、農工大大学院 工学研究院応用化学部門の長津雄一郎准教授、名工大学大学院 工学研究科 物質工学専攻の多田豊教授、石井佑紀博士前期課程元学生(現在、大学院を修了)らによるもの。ベルギーブリュッセル自由大学 非線形物理化学部門のAnne De Wit教授と共同で行われた。詳細は、米国物理学会の学術誌「Physical Review Letters」のオンライン版に掲載された。
これまで、多孔質媒質内で沈殿反応を伴う流動が存在すると、生成された沈殿により、流体が移動しにくくなると考えられていた(浸透率の低下)。
今回の研究では、従来、多孔質媒質内の流動を抑制すると考えられていた沈殿反応が、流体不安定対流を引き起こす潜在能力があることを実証したという。この発見は、種々の沈殿が流れの中で形成される化学や材料科学の分野、流体力学的不安定性、パターン形成などの物理分野、また多孔質媒質内の孔の閉塞が重要となる環境科学分野に重要な知見を与えるものであるとしている。
特に、地球温暖化対策として期待されているCO2地中貯留技術では、CO2を多孔質媒質である地層との沈殿化学反応により炭酸塩鉱物として固定化し、地下に確実に貯留する試みが実際になされており、今回の成果は、CO2地中貯留技術の向上に今後必要とされるCO2拡散の高精度予測方法の研究に大きな知見を与えるものになるとコメントしている。