そもそも、SIMロック解除はユーザー全員に恩恵があるわけではない。あくまで消費者への「選択肢の提供」が本来の目的だ。SIMロック解除によるいくつかのメリットはあるが、それがすべての人にとってのメリットかどうかは論点が違う。

SIMロック解除ができるとしても、結局同じキャリアを使い続ける人はいるだろうし、MNPにともなってそのキャリアの新端末も欲しい人もいるだろう。しかし、多少は不便でもMNPで使い慣れた端末をそのまま使いたい人や海外でSIMを購入して使いたい人など、解除したい人もいるはずで、そうしたユーザーにとっては選択肢が増えることになる。

その結果、一部のユーザーに選択肢を与える代わりに、全ユーザーに対して契約の縛りを強くし、とにかく囲い込もうというプランが新設されるかもしれない。ハードウェア的にサポートしている周波数帯域を、あえてブロックして出荷するキャリアが出てくるかもしれない。それはそれでキャリアの選択ではある。その場合、そのキャリアはサービスを良くしてユーザーを取り込もうというのではなく、とにかく消費者から搾り取ろうという不誠実なキャリアということだろう。

例えば米AT&Tの「AT&T Next」サービスでは、12カ月間一定料金を支払い続けると次のスマートフォンに交換できるというもので、継続してキャリアを使い続ける理由にはなる。こうした継続利用に対する優遇も一つの施策だし、各種のキャリア紐付けサービスもその一つ。そもそも、全員がSIMロックを解除しないだろうし、SIMロック解除の影響はほとんどないかもしれないが、本来の目的から言えば、「だからSIMロック解除が無意味」と言えないだろう。

AT&Tでは12カ月一定料金の支払い継続で新しいスマートフォンに交換できる「AT&T Next」サービスを展開