呉市との実験と合わせ、800MHz帯と2.1GHz帯の双方での有効性が確認できたとしており、実際の災害時には、陸上の電波状況を見て、干渉しないように800MHz帯と2.1GHz帯を使い分けるといったことも可能なことも確認できた。
被災地では、海岸に漂流物があって陸上に近づけないこともあり得るため、実験では2~3kmの半径をカバーできることを確認する計画だったが、実際は10kmまでの距離で良好な通信を確認。それより離れた距離はテストされていないが、15km程度は届くことが想定されているようだ。10km離れても電波が届いたことで、漂流物があっても安全な距離で船上基地局が運用できる見込み。
今回のテストでは、KNSの直径120cmアンテナが使用され、それに衛星ルータと基地局を接続。基地局はcdma2000 1xで音声通話を行い、約30回線程度の通話が同時に可能だ。実際の被災地では、巡視船が電波を吹きながら海上を航行していくと、陸上で圏内に入った携帯電話が通話可能になり、その間に連絡を取る、といったことが可能になるという。
被災地の活動では、さつまのような大型船が海上に停泊し、小型船が捜索などを行う、といった活動を行うこともある。その時にさつまから電波を発していれば、停泊中は周辺が携帯電話の圏内となるので、そうした船を複数配備することで、広範囲のエリア化も可能になる。
今回、積み込みからセットアップまでは約1時間で、KDDI側は20人が参加した。機材は基地局が120kg。アンテナやバッテリを含めると160kgを超える重量で、積み込みにはクレーン車を用いた。アンテナを60cmサイズに小型化し、バッテリも小型化し、さらに基地局を分割して船上で組み立てるようにすれば、人の手で運ぶことも可能になると見ており、これによって積み込み時間の短縮も想定しているという。また、KDDI側の作業員も、実際は10人程度でも可能だという。ちなみに、いったん基地局として稼働すればKDDI側の人手は不要になる。
さつまには、もともと船上にパラボラアンテナが設置されていたが、すでに不要なもののため、これを取り外して台座にアンテナを設置した。そのため、設置場所が簡単に確保できたが、ほかの船では、こうした設置場所を船上に設ける必要はある。