KDDIは、21日から22日にかけて、鹿児島県志布志市で実験を行った「船上基地局」を報道関係者向けに公開した。災害時などに、船に基地局を設置し、地上の通信を行えるようにする、というもので、実験ではその有用性が確認されたという。
東日本大震災を教訓に、船を基地局に
2011年の東日本大震災では、携帯電話の基地局の多くが停波した。KDDIでは、停波した基地局の77%が停電によるもので、さらに海底ケーブルの陸揚局が損壊したり、高速道路脇の法面が崩落してケーブルが寸断したり、さまざまな原因で通信が行えなくなった。
今後、南海トラフ地震の発生が予測されており、首都圏を始め太平洋沿岸の広い範囲で被害が懸念されている。それに対してKDDIは、基幹ネットワークに日本海側ルートを新設して4ルートにしたり、設備監視体制を関東と関西の2カ所に分散。さらに多くの基地局停波の原因となった停電について、都道府県庁や市町村役場や主要駅をカバーする基地局2,000局でバッテリを24時間化するなどの対策を行っている。
基地局の回線自体が寸断された場合に備え、無線エントランスで基地局をつなぐ対策を全国で60カ所に拡大。衛星回線を使う車載型基地局や可搬型基地局もそれぞれ20台、27台と増やした。
地震や津波で基地局自体が損壊するという被害も発生していたが、こうした「基地局が機能しなくなる」状態に対しては早急な復旧作業が行われるが、その一環として検討が行われたのが船上基地局だ。
基地局の復旧には、現地に作業員が向かう必要があるが、渋滞や道路の崩落など、現場に近づけない場合もある。そうした場合でも、船ならば海上から現場に近づける。その船自体が基地局を積んでいれば、海上から電波を吹いて、陸上のエリアを圏内にできる、という発想だ。
2012年6月には、総務省中国総合通信局が検討会を開催。11月には広島県呉市で実験が行われ、いくつかの課題が抽出された。その課題の解決を図って研究を進めてきたKDDIが、単独で海上保安庁と合同で行ったのが今回の実験だ。