電機大手8社のなかで先陣を切って4月28日に、2013年度(2013年4月~2014年3月)連結業績を発表したのが、パナソニックとNEC、三菱電機だ。2000年代には、連結業績を常に大トリで発表していたのがパナソニックだったが、いまやその順番は当てはまらない。
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そして2013年は、発表1カ月前となる3月に、津賀一宏社長自らが事業方針説明を行っていたということもあり、津賀社長は連結業績発表に出席せず、財務担当役員である河井英明代表取締役専務(当時は常務)が説明を行う形となっていた。2014年も同じく3月に事業方針説明を津賀社長が行ったばかりであることを勘案すると、当然、昨年と同じ流れを踏襲するものとみられていた。
だが、今年の決算会見では、津賀社長も出席。「事業方針の発表からまだ1カ月しか経っていないが、みなさんのご質問に答えるということで参加させていただいた」と説明。30分を超える時間、記者からの質問に津賀社長自らが直接回答した。
そうした意味で、2012年6月に社長に就任した津賀社長が、通期の連結業績会見に出席するのは、今回が初めてのこととなった。津賀社長が初めて会見に出席するというのはある意味、今回の業績に対しての自信の表れだといっていいだろう。
実際、売上高は前年比5.9%増の7兆7,365億円、営業利益は89.6%増の3,051億円、税引前利益は前年度の3,983億円の赤字から黒字転換し、2,062億円、当期純利益は7,542億円の大幅赤字から1,204億円の黒字に転換。2年連続の7,000億円を超える赤字からV字回復をしてみせた。
津賀社長は「中期経営計画実行1年目としては、想定以上の順調な滑り出しになっている」と自己評価。成長領域と位置付ける住宅および車載事業の伸張と、プラズマディスプレイパネル(PDP)事業からの撤退など、主要課題事業の方向付けができたことや、テレビ・パネル事業などの赤字事業の改善が寄与。中期経営計画の想定を上回る形で、財務体質が改善したことも、評価の理由に挙げた。
さらに「この1年間で、事業部機軸の経営にシフト。事業計画の立て方も、従来のような売り上げ成長に基づいた積み上げ型ではなく、事業部の自主判断に本社がリスクを盛り込む形とした。四半期ごとの成果をみても、順調に回りつつあると感じている」と総括した。
円安に助けられた売上高
だが、すべてが順風満帆とは言い難い。各論をみると、まだ手放しでは評価できない部分もあるからだ。
その1つが、円安に振れた為替相場に助けられている部分が見逃せない点である。売上高は、為替の影響を除いた現地通貨ベースでは前年比3%減。地域別に見ても、円ベースでは、国内が前年比3%増の3兆8,979億円。海外では、米州が11%増の1兆1,346億円、欧州が11%増の7,403億円、中国が6%増の9,949億円、アジアが10%増の9,688億円。海外全体では9%増の3兆8,386億円と高い成長を遂げているが、現地通貨ベースでは海外のすべての地域で前年割れとなっている。海外でのマイナスを為替によるプラスの影響が補った形だ。「まずは、現地通貨ベースでの減収に歯止めをかける。現地通貨ベースで反転攻勢することが必要」と津賀社長は手綱を締める。