2つめの課題は、依然としてテレビ事業が赤字のままだという点だ。パナソニックには、テレビ事業に関して2つの指標がある。

セグメント別の業績

1つは、セット製品としてテレビを扱うテレビ事業部としての観点だ。テレビ事業部の売上高は前年比11%減の3,062億円、営業損益は25億円の赤字(損失)となった。テレビのセット事業は、2014年度には三洋電機のテレビ部門が加わることでセグメント対象が前年とは異なるが、新たなセグメントベースで換算すると、営業損益は前年比で40億円改善するものの、やはり26億円の赤字が見込まれるという。

もう1つは、テレビとパネルを一緒にしたテレビ・パネル事業。むしろ、パナソニックがテレビ事業に関する指標として捉えているのは、こちらである。2013年度実績によると、パナソニックは、テレビ・パネル事業で465億円の赤字を計上している。2014年度も68億円の赤字が残ると試算しており、プラズマテレビからの撤退という荒療治にも踏み出したが、黒字化にはもう少し時間を要することになりそうだ。黒字化は、当初の計画通り、やはり2015年度ということになりそうだ。

2014年度は半分の事業で営業利益率5%を目指す

一方、パナソニックの連結決算から見た課題の3つめとして、営業利益率が5%以上の事業部がまだ少ないという点があげられる。

フリーCFとネット資金

パナソニックは2015年度までの中期経営計画で、「各事業部営業利益率5%に向けた収益改善」という柔らかい表現をしているが、実際には津賀社長は、全ての事業部に対して営業利益率5%以上を必達目標として課している。2015年度には赤字事業も撲滅する計画だ。

パナソニックでは、2012年度には88のビジネスユニット体制だったものを、2013年度には49事業部体制へと再編。さらに、2014年度から43事業部体制へと統合している。

津賀社長は「2014年度は、DSC(デジカメ)や液晶パネルなどでまだ赤字が残ることになるが、半分の事業では営業利益率5%以上を目指す」とコメント。ここから推察するに、2013年度の49事業部体制においては、5%以上の営業利益率を計上している事業部は、まだ半分以下に留まっているといえるだろう。

43事業部を統括する4つのカンパニーの営業利益率を見ても、エコソリューションズ社が5.1%となっているほかは、オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社が3.1%、アプライアンス社が2.4%。AVCネットワークス社が1.4%と、いずれも5%を下回る。2014年度見通しでは、一部セグメントの変更もあるが、唯一5%の営業利益率を誇っていたエコソリューションズ社では、消費増税後の影響を一番受けるということもあり、営業利益率は3.8%に落ち込み、オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社の3.9%、アプライアンス社の2.0%。AVCネットワークス社が3.5%と、すべてのカンパニーで5%を下回ることになる。

2015年度の営業利益率5%達成へ向けて

津賀社長にとって、2015年度の中期経営計画における公約の1つが、連結業績での営業利益率5%以上であり、「これまでのように単純に延長線上に描いただけの成長計画では、目標に届くとは思っていない。また、それでは途中で失速する可能性もある。伸びしろがどこにあるのかをみて、どこに重点的に投資していくということが必要」だと語る。

数値の観点からはまだ距離がある。2013年度の全社業績での営業利益率は3.9%。2014年度は4.0%の見通しだからだ。

ただ、2014年度の業績見通しは、「2013年度の業績がわかる前に策定したもの」(津賀社長)であり、そのため、売上高は2013年度の7兆7,000億円に対して7兆7,500億円、営業利益は3,050億円に対して3,100億円という伸び率が小さい。実際にはもう少し高い数字が見込まれてもいいだろう。津賀社長は、「売り(=売り上げ)がどうなるのかはやってみないとわからない。それだけ着地が不確実である」と慎重な姿勢は崩さない。

とはいえ、次の2015年度には、営業利益率を一気に5.0%にまで引き上げるのが目標だ。極めて大きなハードルが目前にあるのは間違いない。

「2015年度までの中期経営計画では、まずは利益をしっかりと出し、営業利益率5%を出す体質を作ることを優先する。何をやれば利益が上がるのか、ということが分かる体質をしっかりと作りあげる」と津賀社長は語る。

2014年度に営業利益率を、最終的な目標に対してどこまで詰めることができるのかがポイントとなる。

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