古いコールドデータは自動的に安価なクラウドストレージへ

ここで、新機能の1つであるAWS Auto Tiering(自動階層化)について、詳しく解説しよう。

エンジニアリング部 テクニカル・プリセールス マネージャーの鶴見利章氏

この機能は、Amazon S3やGlacierなどの非常に安価なクラウドストレージサービスを活用し、オンプレミスのCloudianと併用することで、データの特性や用途に合わせて格納場所を自動的に設定できるというものである。基本的には、前述した属性情報を用い、データをCloudianに格納してから一定期間が経過したところで、Amazon S3やGlacierに移動するという仕組みとなっている。

「Cloudianでは、オブジェクトはバケットという入れ物に格納されますが、このバケットに属性情報を付与して自動的な階層化を図ります。もし、外部のクラウドストレージに預けたくない機密データなどがあれば、自動階層化をオフにしたバケットを用意して、そちらに格納すればよいのです。バケットは複数作成できますので、柔軟な管理を実現することができます」(鶴見氏)

鶴見氏によれば、安価なクラウドストレージへ格納すべき“コールドデータ”は、どのような企業でも膨大な数にのぼるという。 「いちばんよくあるのは、サーバやネットワーク機器が吐き出すログデータです。これはどのような組織でも大量に持っているはずです。最近よく見る例として、監視カメラの映像データがあげられます。膨大な容量になってしまうため、比較的短期間で削除してしまうそうです。CloudianとAWS Auto Tieringを組み合わせれば、コストを最適化しつつ、膨大な監視映像を長期間保存することができます」(鶴見氏)

AWS Auto Tiering(自動階層化)機能を用いれば、CloudianとAmazon S3/Glacierでハイブリッドクラウド環境を構築し、ストレージコストをいっそう最適化できる

容易で確実、しかも安価なCloudianアプライアンス

今回のイベントで紹介された「FlexSTORE」は、オブジェクトストレージの敷居をさらに下げるハードウェアアプライアンスだ。どのような汎用サーバにもインストールできるCloudianは、比較的容易に導入できるソフトウェアであるが、それでもLinuxやハードウェアの知識はある程度必要である。

FlexSTOREは、Cloudianを最適チューニングした状態で出荷され、バックアップやファイル同期・共有といったアプリケーションをパッケージとしたラインアップも用意する予定だCloudianの拡張性はそのまま生かされているため、複数台並べて容量を増やすことも容易だ。

「サポートが一元化されることも大きなポイントです。今回のリファレンスハードウェアは、パートナーの1社であるコアマイクロシステムズによって選定されたハードウェアを採用しており、同社が販売と総合サポートを担います。また、Amazon S3対応のアプリケーションをそのまま利用できるというメリットもあり、ネットワークに接続して簡単な初期設定を済ませれば、すぐに使用することができます」(石田氏)

営業ダイレクターの石田徹氏

FlexSTOREは、最小構成(2ノード)でのキャンペーン参考価格が320万円、スタートアップの推奨構成である3ノードでも388万円と、1,000万円を超えるような同等クラスの一般的なハイエンドNASと比べても、非常に安価である。

「スタートアップではFlexSTOREを使いつつ、規模に合わせて構成を変更し、場合によってはより大きなサーバやストレージへ移行していくこともできます。それが、ソフトウェアであるCloudianの大きなメリットです。今後は、ほかのハードウェアメーカーとも積極的に協業し、さまざまな要件や環境に適用できるよう、自社仕様も含め、ハードウェアアプライアンス製品の幅を広げたいと考えています」(石田氏)