東邦大学は2月21日、「ケージド核酸」にモジュール化の考え方を適用して、1段階の反応だけで多様な機能性を持たせられる共通プラットフォーム分子「NHS-Bhc-hydrazone」を開発し、ケージド遺伝子にさまざまな機能を容易に導入可能であることを示したと発表した。

成果は、東邦大大学院 理学研究科生物分子科学専攻 古田研究室(古田寿昭 教授)所属の博士後期課程3年の寺岡葵氏、同・博士前期課程修了生の真鍋香織氏らの研究チームによるもの。研究の詳細な内容は、2012年から2013年にかけて米・化学会の「Journal of the American Chemical Society」、「The Journal of Organic Chemistry」、「Organic Letters」の3誌に発表された核酸化学に関する論文から注目論文を集めた「Nucleic Acids - Chemistry and Applications」に掲載された。

「ケージド化合物」とは、生理活性分子に光で働くスイッチを付けて(ケージに閉じこめる)、その活性を光でオンにできる(ケージから出て機能を発揮する)機能性分子のことで、つける場所・機能に応じたスイッチを有機合成により作成する。これまでの研究で成功しているのが、核酸に光で働くスイッチを付けたケージド核酸だ。

しかし、スイッチを付けても完全オフの状態を作り出せない場合があること、狙った遺伝子だけにスイッチを付けることが困難なこと、生きた細胞内で期待通りに作動するとは限らないことなど、まだまだ課題が残されている。これらの課題をクリアするための方法はあるが、多段階の合成を要するため多大な労力と時間が必要である上に、必ずしも目的を達成できるとは限らないという大きな問題があった。

今回のNHS-Bhc-hydrazoneを用いると、ケージド遺伝子にさまざまな機能を容易に導入可能であることが示され、また従来のケージド核酸合成法の問題も解決された。また、この研究成果で合成したBio-Bhc-ケージドDNAにおいては、その性能を哺乳動物細胞で発揮することが明らかになっている。

画像1(左):細胞の生理機能を光り制御するケージド化合物。画像2(右):モジュール化したケージド核酸