サーバやストレージ機器などのハードウェア販売とコンサルティングに強みを持つ国際産業技術(KSG)。インフラエンジニアにとっては、秋葉原で小売店「コンピューターのおっと(otto)」を展開する企業と言ったほうがわかりやすいかもしれない。ベンダー中立な立場から新品、中古のハードウェアを多数取り揃え、コストパフォーマンスの高いシステムの構築のほか、急なサーバ調達などに対応してくれる頼りになる企業だ。

千代田区神田錦町にあるコンピューターのおっとサーバ店

同社は数年前に基幹システムをクラウドに移行した。さらに2012年夏には、営業担当者全員にiPadを1人1台配布し、ペーパーレス化を推進。現在は、営業資料などのさまざまなデータもすべてクラウド上で管理しており、社内ミーティングはiPadから必要なPDF資料などをダウンロードして随時閲覧しながら行っていくというスタイルを実践する。

1階の店舗と3階のオフィスとフロアが分かれた環境では、役員や営業社員が利用するiPadやノートPCなど20台あまりを一元的に管理し、業務の効率化やペーパーレス化を実現している。

そうした取り組みを進めるなかで課題になってきたのが、無線LAN環境の帯域確保だ。従来の無線LAN環境は、量販店で購入できる家庭向けのアクセスポイントを使って構築していた。3~4台を同時アクセス程度なら問題なかったが、数十台のiPadが接続されるようになると、さまざまな問題が発生するようになったのだ。

国際産業技術SI店舗営業部 おっとサーバ店課長の工藤芳敬氏

「まず速度が出なくなり、サイトの更新だけで数十秒待たされるようになりました。また、ネットワーク自体が切れてしまうことも増え、そのたびに社員がアクセスポイントを再起動するようになりました。これでは仕事になりません」と国際産業技術SI店舗営業部 おっとサーバ店課長の工藤芳敬氏は、当時を振り返る。

そのほか、1Fと3Fで異なるアクセスポイントを導入していたため、フロアを移動するたびにネットワークを切り替えるといった不便さもあった。根本的な解決策を探り始めたのは2012年秋のことだ。

複数のベンダーの製品を検討し、最終的にネットワークの規模と目的に見合ったコストパフォーマンスに優れた製品として、ネットギアのワイヤレスLANコントローラー「WC7520」とアクセスポイント「WNDAP360」を選定した。

おっとサーバ店の店内に設置されたアクセスポイント「WNDAP360」

検討項目として、20台程度のクライアントが同時接続しても安定していること、1階と3階の離れたフロアであっても1つのネットワークで管理できること、アクセスポイントのダウンや電波干渉などに強いことなどを必須要件とした。そのほか、デュアルバンドに対応していることや、1階の店舗をフリーワイヤレスゾーンとして開放できることなども考慮したという。

工藤氏は「無線は目に見えないため、安心して使えるかという信頼性がとても重要になります。機能的には、複数のアクセスポイントをコントローラーで集中管理できることが必須でした」と語る。

サーバーラックに設置されているネットギアのワイヤレスLANコントローラー「WC7520」。国際産業技術では、「WC7520」で、5つのアクセスポイントを一元管理している

ワイヤレス製品は、品質を犠牲にすれば低廉な消費者向け製品だけでネットワークを構築することができる一方、オーバースペックな企業向け製品を選び、導入コストが数百万円にまで跳ね上がってしまうといったケースも少なくない。そのため、自社の規模に合った製品を選び、必要に応じて、随時拡張できる点も大きなポイントとなる。その意味で、ネットギア製品は、拡張性が高く、コストパフォーマンスに優れた企業向け製品として、選択条件に合致していた。

導入の際は、フロア全体をカバーできるようにアクセスポイントは中央とフロア両端に設置。1つのフロアは約130坪だが、現在は1階に2台、3階に3台の計5台を使っている。信号強度が低くなるようなケースもなく、導入はスムーズに済ませることができたという。

多くの製品が並ぶ店内

ただ、トラブルがなかったわけではない。導入後しばらくして課題になったのは、オフィスビルへの入居者が増えるにつれ発生した電波干渉だ。

「オフィスビルの中から出る電波もありますし、オフィス外から飛んでくる電波もあります。この1年で機器が検知する電波が特に増えた印象です。SSIDは以前は数個でしたが、現在は常に30個近くが見える状態です。ときどき遅くなったりする現象に見舞われました」(工藤氏)

そこで同氏は、IEEE802.11nの周波数を2.4GHzから5.0GHzに変更。これにより、干渉がなくなり、安定して利用できるようになった。

「デュアルバンドに対応しているため、周波数を変更できた点もありますが、アクセスポイントの出力やチャンネルを自動的に調整する機能の効果も出ていると思います」と工藤氏。

WC7520は、アクセスポイントのダウンや電波干渉が発生すると、そのエリアのまわりにあるアクセスポイントの出力やチャンネルを調整する自己回復機能を備える。そうした機能の恩恵を受けているようだ。

また、WC7520は、電波干渉の状況や信号強度、チャネルなどをヒートマップとして可視化する機能を備えるため、機器を設置する際にも、最適な設置場所を選ぶことが簡単に行える。工藤氏は、顧客にネットギア製品を導入する際には、これらを活用して、アクセスポイントの設置位置などを決めているという。

電波干渉の状況や信号強度、チャネルなどを視認できるヒートマップ画面

また同氏は、PoE(Power on Ethernet)機能などを使って、電源確保が困難な場所にも、アクセスポイントを設置することができる点も評価している。

導入から1年半を経た現在では、社内ミーティングでの資料閲覧が困難になることはなく、安定して無線LANを利用できているという。さらに、1階店舗でも、来店した顧客や取引先の担当者が、フリーのワイヤレスポイントを利用できるようになっている。

「今までトラブルもなく利用してきました。これから事業が拡大しても同じように問題なく利用していけると信頼を寄せています」と工藤氏。

同社では今後、ネットワークや自社のビジネスの状況を見ながら、無線LANの拡張も随時進めていく考えだ。

今回のケースで使用した主な製品

ワイヤレスLANコントローラー「WC7520」。製品ページはこちら

デュアルバンド ワイヤレスLANアクセスポイント「WNDAP360」。製品ページはこちら