「君だけ新年明けてないよね」。
2014年はとうに明け、旧正月も過ぎ、あまつさえ節分も立春も越えた。そんな2月のある日、隣席に座る編集長Kが、筆者のキーボードを見ながら放った言葉が、冒頭の一言だ。言われてキーボードを眺めるうちその理由に思い当たったが、まずは何も聞かずに、下の写真を見て欲しい。
筆者の左隣にある編集長Kの机。PC! マウス! キーボード! イヤホン! マグカップ! だけの非常にシンプルかつ綺麗な机は全編集部の中でもトップクラス |
すぐ右隣にある筆者の机がこちら。ちょっとコメントが出ない |
確かに、K氏の言う通りなのかもしれない。根拠はないが、どうも筆者だけ、2013年の混沌の中を彷徨い続けているような気がしないでもなかった。キーボード以前にいろいろ目に付く部分はあるが、まずは指摘のあったキーボード。キーボードを掃除すれば、身長も伸びて女子力も上がって宝クジも当たって札束をバスタブに浮かべて高笑いするような2014年が待っているのかもしれない。そう、待っていても不思議ではない。可能性は、ゼロではない。
そこで、愉快に素敵に2014年を(改めて)迎えるため、キーボードを掃除することにした。使用しているキーボードはFILCOの「Majestouch BLACK」シリーズ、テンキー付きフルサイズのCherry MX黒軸モデル。キースイッチに軸を用いる「メカニカルキーボード」で、キー前面に印字することで、一見無刻印という見た目のカッコ良さに加え、経年による印字劣化も避けられるキーボードだ。
しかし、このモデルが発売したのは今から約2年10カ月前の2011年4月。普段キーボードを酷使する仕事をしているためか、改めて自分のキーボードを眺めてみると、印字以外の部分がかなり劣化していた。
使用頻度の高いキーのキートップが剥げている。左側の写真では、上の数字キーは通常のコーティングが保たれているのに対し、下の[E]キーはコーティングが剥がれている。右の写真では、[J]キーにあるホームポジションの突起部周辺だけコーティングが残っているというありさま |
そこで今回、キーボードを掃除しつつキーキャップを新しいものに換装することにした。キーキャップはかねてより狙っていた「Majestouch」シリーズ専用の2色成型キーキャップ。本体はなく、キャップのみの単体価格で4,980円、正確な金額は覚えていないが、確か送料込みで5,000円強だったと記憶している。
上が使用しているキーボード、Majestouch BLACK FKBN108ML/NFB2。下は今回換装する「Majestouch」シリーズ専用2色成型キーキャップ。送料込みで5,000円強。もちろん自腹で購入 |
さて、この2色成型キーキャップ、「背高」「肉厚」「すり鉢状のキートップ」が特徴である。確かに、変更前の標準搭載キーキャップと、この2色成型キーキャップを比べると、2色成型キーキャップの方が高さがあり、キートップもすり鉢状(湾曲)になっている。これら特徴は下の写真を見るとわかりやすい。
[Shift]キー。左が今回換装する2色成型キーキャップ、右が標準キーキャップ。2色成型キーキャップの方が高い |
[Ctrl]キー。左が今回換装する2色成型キーキャップ、右が標準キーキャップ。こちらも同様、2色成型の方が高さがある |
2色成型キーキャップはホームポジションの[F]キーと[J]キーが深く湾曲している。写真は、[Q]キーと[F]キーの比較 |
キートップ部が湾曲している2色成型キーキャップの中でも、ホームポジション部の[F]キーと[J]キーは特に深く湾曲しており(ポジション確認用)、指へのフィット感が高い。希望をいえば、ホームポジションに準じる深い湾曲が、全キーで採用されれば嬉しいものだ。
なお、2色成型キーキャップの大きな特徴である、「2色成型」については後述する。
それでは、お掃除開始!
それでは早速、汚キーボードを掃除する。キーボード清掃にはいろいろな方法があるが、今回は、新キーキャップに換装してしまうので、キーはまとめて水洗いするという手間のかからない方法にした。以下、画像で紹介していこう。
用いた掃除道具は、洗濯用ネット、小型の刷毛、キープラー、台所用洗剤、エアーダスター、洗面器、フェイスタオルなど。このほか精密ドライバーや綿棒も役立つ。
ちなみに今回は洗面器でキーを洗濯するが、キーを洗濯ネットに入れて洗濯物と一緒に洗濯機へ放り込むという、より手間のかからない方法もある。ただしその方法は、キーキャップの破損や印字のかすれなどが起こる可能性もあるので注意したい。
今回汚キーボード掃除に用いた掃除道具がこちら。右から順に、洗濯用ネット、小型の刷毛、キープラー、台所用洗剤、エアーダスター、洗面器、フェイスタオル。後で紹介するが、このほか精密ドライバーや綿棒があっても良い |
まずはキープラー(キーキャップ引きぬき工具)で、キーキャップを引き抜く。慣れてくると、2~3のキーキャップをまとめて引き抜けるようになるが、調子に乗って「4個同時抜き」などに挑戦して引き抜くと、勢い余って抜いたキーキャップが飛んで行くこともあるので注意しよう(体験談) |
キープラーを使う際に気をつけけたいのがスタビライザの存在。メカニカル式やメンブレン式のキーボードでは、SpaceキーやEnterキーなどの大きなキーの裏側に、打鍵感や安定性を高めるためのスタビライザという金具が付いている場合がある。このスタビライザは、キー内部に引っ掛けてあるため、平たい精密ドライバーなどで丁寧にキーから外す必要がある |
本体の掃除が一段落したら、次はキーキャップを洗う。先述の通り、今回は洗面器で丸洗い。まず、キーを洗濯ネットへ放り込み、水を張った洗面器に洗剤を投入。洗った後に水でよくすすぎ、乾燥させれば終了だ。
最初に、抜いたキーキャップを洗濯ネットへ入れる。次に洗面器を用意し、中にぬるま湯もしくは水を適量溜める |
次に台所用洗剤を投入。洗濯用洗剤でも良い。ネットに入れたまま洗濯物と一緒に洗濯機へ放り込む、という方法もある |
キーをわしゃわしゃ洗う |
キーが洗い終わったところで、本体の話に戻ろう。とは言え、後は新しいキーキャップをキーボードに嵌めるだけの簡単なお仕事だ。まずは、キーを嵌める前に、先述した特徴の1つ、「2色成型」を紹介しよう。
新たに換装する2色成型キーキャップの「2色成型」とは、キーキャップの文字部分を樹脂で成型し、その文字部分をキーキャップのベース部分と組み合わせて再成型する技術だ。キー上の文字は印字ではなく、言わば「金太郎飴」のように中身が詰まった状態となるため、印字はかすれることなく長く使用できる。
さて、それでは実際にキーキャップを嵌めていく。特に難しいことは何もないが、スタビライザのキーを嵌めるには、外す時と同じように精密ドライバーなどを使用し金具やキー側のパーツが破損しないよう、丁寧に嵌める必要がある。なので、周りにキーがない状態で無理なく嵌め戻すため、スタビライザが使われているキーは、一番最初に嵌めていきたい。
キーキャップをざくざく嵌めていく。ざくざくざくざく嵌めていく。次第にテンションが上がってくるかもしれないが、ここで片手にキーキャップを5、6個握りタイムトライアルに挑戦するなどはしゃぎ過ぎたりすると、勢い余ってキーキャップがうまく嵌らず飛んで行くこともあるので注意しよう(体験談) |
ビフォアー(左)&アフター(右) 1。特徴の1つであるキーの高さは、嵌めた後でもよく分かる。左の標準搭載キーは最奥列(ファンクションキー列)から中央列に向かってくぼみ、中央列から手前側にかけて盛り上がっているという、中央部を凹ませた形状。2色成型キーでは、最奥列と数字キー列がほぼ同じ高さで、中央部は凹まず、手前側に向かい緩く傾斜している |
という所で一段落。無事に新しいキーキャップに換装し、「汚キーボード」から脱出できた。すでに2014年の2月に入っているが、今後ドヤ顔で新年を謳歌していきたい。
最後に、簡単に2色成型キーキャップの使用感を述べておく。軸に変更はないので打鍵感は大きく変わらないものの、キーの高さと湾曲により、打ち心地は向上したかと思う。また、「キーキャップのみ換装した」ことによる「特別なキーボードを使っている感」も大きい。一方で、キーの高さによるものか個体差かは不明だが、キーがぐらつく感覚は、標準キーを使っていた頃に比べ、若干大きくなったようだ。ほか、希望だが、天面の湾曲はもっと深い方が指へのフィット感が高いと思われ、次のモデルに期待したい。
今回試したキーボード清掃は、自己責任とはなるものの、キー乾燥の時間を除けば、約1時間半ほどで全行程が終了する。メカニカルキーボードのほか、メンブレンキーボードでも同様の掃除が可能なので、大雪で部屋に閉じ込められている時、キーボードをさっと掃除し改めて2014年感を味わってみるのも一興だろう。