いまのペースでいけば来月2月にスペインのバルセロナで開催されるMobile World Congress (MWC)でTizen端末が正式発表され、一部市場に向けて3月末ないし4月くらいから順次投入されることになるはずだ。おそらく、ドコモをはじめとする日本の関係者はこの行く末をじっくりと見守っており、最終的にTizenに投資するかを判断することになる。ゆえに、「世界市場でTizenが成功する確率」に何割か掛けた数字が日本での投入の可能性となる。1割か2割、おそらくはそれが2015年(含む2014年度)での日本市場へのTizen端末投入の確率だろう。

Tizenについては、スマートフォン以外にも家電や組み込み機器、車載システムの応用が考えられている点が特徴となる。すぐの対応は難しいかもしれないが、今後TizenのリードでもあるSamsungが家電への統合を推し進めてくるかもしれない。あるいは今後ノウハウが蓄積されていくことで、オープンソースという特徴を活かして中国や第三国のメーカーがTizenを家電や組み込み機器に採用する事例が出てくる可能性もある。むしろ、長期的にみればこちらの可能性のほうが大きいかもしれない。

Tizen最大の疑問「どの市場をターゲットにしているのか?」

筆者が現在、Tizenに関して抱いている最大の疑問がこれだ。「AndroidとiOS対抗」という話ばかりが先行し、実際に市場へのTizen投入がユーザーにどうのようなメリットをもたらすのかがまったく見えてこない。「AndroidとiOSばかりでは市場にいい影響をもたらさない」というのは携帯キャリア側の理論であって、たとえ長期的にはユーザーに不利なのだとしても、あえてTizenを選ぶ理由が見当たらない。

日本は携帯電話に関して特殊な市場だと筆者は考えている。「ハイエンド製品ばかりが売れて、ミッドレンジ以下の製品は見向きもされない」という状況で、結果として携帯キャリアはミッドレンジ以下の提供を諦め、製品ラインナップの縮小につながった。これもライバルとの競争のために携帯キャリアが積極的な端末の値引き販売を行っていることに加え、日本が比較的裕福でユーザーの目の肥えた市場であることが原因だ。

積極的にiPhoneを選ぶ理由の1つが「他の端末より安いから」という市場はほかにほとんど見たことがない。改めて世界を見ると、欧州を中心にミッドレンジ以下の比較的安価な端末のほうが人気があり、北米ではハイエンド製品の人気があるものの、やはり低所得層や学生を中心に安価な端末も人気がある。そのため、上から下まで幅広い製品ラインナップが用意され、少しでもユーザーの目を惹きつけようと携帯キャリアやメーカーは腐心している。Samsungが世界ナンバー1の携帯メーカーになったのも、どこよりも幅広いラインナップの製品を用意し、ローカライズを非常に重視した戦略を採り続けているためだ。