重さと厚みは問題か?

iPad miniは初めて登場した2012年当初から、iPod touchのような金属で角が丸められたユニボディが採用されている。今回発表されたiPad Airも同様のデザインが採用され、iPad mini Retinaディスプレイモデルも引き続き同じユニボディのデザインが与えられた。

角が丸められたユニボディを採用

なおRetinaモデルも、併売される初代のiPad miniも、ブラックからスペースグレイに改められている。その他に、外観の変化は、これまで上部側面だけに用意されていたマイクに加えて、背面にも新たにマイクが追加され、その穴が用意されたことぐらいだ。

上部側面だけでなく、新たに背面にもマイクが追加された

側面を比べてみると、iPad miniは7.2mmに対して、Retinaモデルは7.5mm厚くなった。ディスプレイの面の縁、斜めにカットして磨いてある部分の厚みは変わらないため、背面のユニボディの膨らみの厚さが増している。たった0.3mmではあるが、iPad miniを2本の指でつまむと、厚くなったことがハッキリとわかる変化だ。

写真ではあまり違いが分からないが、手にしてみると厚くなったとハッキリわかる

ちなみにiPad Airは厚くなったiPad mini Retinaディスプレイモデルと同じ7.5mmの厚さだ。両モデルとも数字上は同じだが、それまでのiPadが9mm台だったことを考えると、iPad Airの薄さが際立つようにも思える。

また、重さは、Wi-Fiモデルで308gから331gへと、23g増えた。セルラーモデルでは312gから341gへと29gもの増加となった。厚みの変化とともに、こちらも持ち比べれば違いは明らかだ。それまでのiPadよりも半分以下の軽さということで選んだユーザーにとって、この重量増加は数字の上では許せないかもしれない。iPad Airがかなり軽くなったこともまた、重量が増えたことを強調してしまうだろう。

数字ではその差はあるが、実際に目くじらを立てるほどの変化はなかった、というのが筆者の結論だ。

1日使ってみて、持ち運びをしながら読書やメールの読み書き、ソーシャルメディアの投稿など普段iPad miniで行っていることを一通り試してみたが、これまでのiPad miniと何かが変わるかといわれたら、変化はなかったからだ。

バッテリーについてもカタログ値の10時間はこれまでのiPadシリーズと変化がなく、使い勝手に大きな際はないだろう。ただバッテリーの容量は拡大しており、充電時間を短縮するため、従来のiPad miniには5WのACアダプターが付属していたが、Retinaモデルには10Wのものが付属するようになった。

ACアダプターは10W(左)のものに変更されている

A7プロセッサとiOS 7で、画像も動画も快適に

より軽いiPadを求めるなら、併売される初代iPad miniを選ぶべきか?この問いには明確にNoと言いたい。その理由は、iPhone 5sにも採用された最新のA7プロセッサを搭載しているからだ。

各媒体で行われているiPad AirやiPad mini、iPhone 5sなどと比較するベンチマークを参照すると、iPad mini Retinaディスプレイモデルは、iPad miniの3~5倍高速に動作するスコアをたたき出している。ただし同じA7プロセッサでも、クロック周波数はiPad Airの方が高速に動作しているとの結果が出ている。(※MacWorldのwebサイトを参照)

iPad miniは、2011年にiPad 2に採用していたA5を搭載していたことから、一気に2世代進化したことになる。Appleは、iPad 2とiPad miniというA5を搭載する旧型モデルを現役として販売することから、決してこれらのパフォーマンスが使用に耐えないわけではないだろう。

64ビットアーキテクチャとこれに対応するiOS 7によって、今後アプリの64ビット対応が進むにつれて、より強力なパフォーマンスを発揮することになるはずだ。もし今後最新のアプリが64ビットを基準に開発されていくことを考えると、いまから購入する際に少し軽いからといってA5のiPad miniを選ぶと、快適に使い続けられる年数がRetinaモデルに比べて極端に短くなってしまうのではないかとも思える。

また、iPad mini RetinaディスプレイモデルはiPad Airより100ドル安い。もちろんディスプレイのサイズで価値や用途は変わるだろうが、同じパフォーマンスを100ドル安く手に入れることができる、という意味合いもある。

ミドルサイズのタブレットの決定版

現在タブレット市場は非常に激戦の様相を呈している。GoogleはNEXUS 7で、AmazonはKindle Fire HDX 7で、それぞれ7インチクラスのタブレットをリリースし、iPadのタブレット市場におけるシェアをこの1年間削ぎ続けている。2010年はほぼ100%だったAppleのシェアは、市場拡大も伴って、60%を守れるかどうか、というところにまで落ちてきた。

iPad miniは活況となっている7インチクラスの市場を取りに行く戦略だったが、ディスプレイの解像度やパフォーマンスの面でこうした競合に文字通り「見劣り」してきた。今回のRetinaディスプレイの採用で弱点を潰すばかりか、A7プロセッサの採用で一気に64ビット化という競合に対するアドバンテージまで取ることができた。

タブレットの魅力は、デバイスそのものだけでは作り出せない。Appleには、iPad向けのアプリおよそ50万本という蓄積があり、Apple自らiLife / iWorkを無償でユーザーに提供する事で「タブレットをどのように活用するのか」というテーマへの最も始めの答えを出している。

現状、iPad mini Retinaディスプレイモデルは、7インチクラスのタブレットとしてやれることを尽くした1台だ。

もちろんAppleには、TouchIDやより高画素のカメラなど、搭載しうるテクノロジーは存在している。しかし小さく優秀なディスプレイとデスクトップクラスのプロセッサを搭載したiPad miniの最新モデルは、じっくりと長く使うにはぴったりの1台といえるだろう。