エンジニアにとっても使い勝手のいいCSS

エイチツーオー・スペース 代表取締役 谷口允氏

そんな星野氏の分析や実践テクニックの語りに、技術的な側面から適確にフォローを入れるカタチで、バランスを取りながらディスカッションを進めていたのが、谷口氏だ。

同氏は、Web サイト制作ユニット anygraphicaのプログラマであり、WordPressの使い手として一目置かれる存在。エイチツーオー・スペースの代表取締役であり、CSS NiteやAndroid bazaar、WordCampなどでの講演活動、テクニカルライターの顔も併せ持つ。技術関連書籍の著作も多くモノにし、さらに web業界の教育事業に取り組むなど、精力的な動きにエンジニアだけでなく幅広い層から注目を集めている。

その多彩な活動で体得した経験値をベースに同氏が指摘したのは「WordPressの管理画面だけを作ってphpでデータを拾い出すスタイルが頻出してきた」という動向だ。事例としてプロ野球チームのデータを扱うサイトを紹介し、球種の割合や球速・被打率などのデータ表示をカスタム投稿タイプやダッシュボードのカスタマイズによって実現している様子を例に解説していった。

CSSが台頭しWordPressと出会うまでは「phpでゴリゴリ書いていた」という現役エンジニアが、いかにWordPressの機能性に惚れ込んだかという生の声だけに、その辺りの説得力に重みがある。間近で谷口氏のリアルな現場のコメントを聞けた参加者たちが羨ましい限りだ。

星野・谷口両氏が惜しみなく裏技をレクチャー

事例紹介の後、冒頭で触れたように両氏がそれぞれ用意したTipsを1テーマごとに交互に紹介していくコーナーへ進行。谷口氏が「絶対にやること!」と、企業サイトのページを例に「表示設定→フロントページ」の設定やカテゴリーベース・タグベースの活用法など、パーマリンクの設定法を指南すると、星野氏が管理画面からトップページを表示させる裏技や、テーマファイルが増えていることで敷居が高くなっているWordPressのわかりにくさを、テンプレートタグ「Twenty-Ten」を例にとってわかりやすく解説するなど、実際にWordPressを活用してサイトを制作する際に有効なノウハウやデザイン・機能の実装手段などが、いくつも紹介されていった。

※ 詳細内容はCCL Webサイトの「スタッフブログ」に講師2人の当日のスライドがアップされているので、そちらをを参照して欲しい。

また、「WordPressを使いはじめるところから、HTML・CSSやphp・MySQLなど汎用的なプログラムを勉強する、という逆アプローチもアリ」(星野氏)、「スマホのレスポンシブ対応もラクになったけど、今はまた別立てのスマホ専用サイトもイイんじゃない、という回帰の流れも出てきている」(谷口氏)、「"さらに読み込む"のパターンはjQueryやAutoPagerでつくるパターンが多かったが、最近はWordPressのプラグインjetpackでも、無限スクロールができるようになった」(星野氏)、「固定ページでphpを走らせるプラグインなど、野良(非公式)のアイテムは絶対に使わないこと」(谷口氏)など、第一線で活躍する両氏ならではのコメントもレクチャーと共に頻出し、非常に刺激的なTips紹介となった。

恐れず使い込んでいく、それが一番の近道

ここまでのディスカッションに夢中になりすぎた両氏。少しスケジュールが押し気味となり、今回耳目を集めた30分間クッキングは駆け足でのデモンストレーションに。

内容は、「WordPressのテーマをつくってみよう!」ということで、星野氏主宰のコワーキングスペース「7F」で今後実施予定の「7F大学」をモチーフにしたサイトを使って、その場で「投稿」や「固定ページ」の管理画面で入力した情報を、single.phpやpage.phpファイルに「the_title」「the_content」といったテンプレートタグを書くことで反映させていく手順をはじめ、カスタム投稿タイプ&カスタムフィールドでスライド画像の実装や、ウィジェットエリアの実装などの実践法を披露してくれた。惜しむらくは、もう少しじっくりと手順説明に時間が割けられれば、より理解度も深まったに違いない。

両氏の結論として、WordPressは優れたGUIを備え、ソースコードをいじらずに、いろんな人が運営していけるツールではあるが、だからこそより深く突っ込んで、HTML・CSSやphp・MySQLなどのプログラムを勉強するのもよし。いくつかのテンプレートを覚え、WordPress特有の仕様に慣れ親しみながら、ページレイアウトなどデザインに行き詰ったらデフォルトテーマなどに当たるもよし。まずは、恐れずに使い込んでいくことが近道だそうだ。

最後に、「何(の機能)をどう使うか、そこをキチンと理解・把握して詰めていけば、WordPressは非常に使いやすいサイト構築・運営ツールになると思う」(星野氏)、「WordPress は、HTMLやCSSを使いこなしている人前提のツール。初心者が立ち向かうものではないからこそ、星野さんの言っていることが正しい」(谷口氏)と締めくくってくれた。

予定の1時間30分を大幅に超えるセッションではあったが、席を立つ参加者はいなかった。それだけ、両氏のディスカッションが興味深く、また実践的なものであったことの証左と言えるだろう。その後開かれた参加者との懇親会でも、熱心な参加者が両氏を囲み、WordPressの裏技など活用術について夏のこもった質疑応答が繰り返されていたのが印象的だった。

『Creator’s Career Lounge(CCL)web vol.2』は、『#cclweb 【vol.2】 面白法人プロデューサーとConceptConception* アートディレクターが語る 「Webとデザインと企画のオモシロさ」』と題し、2013年11月12日(火)に同じくマイナビルームで開催が予定されている。詳細や申し込みはCCLのWebサイトを参照して欲しい。