だが、この間もパナソニックは、プラズマテレビで意欲的な製品を投入し続けた。

2010年3月には、フルHD・3D対応プラズマテレビ「ビエラ TH-54/50VT2」を発売。「プラズマ大革命」を標榜し、高発光効率と黒の表現力を高めたフル・ブラックパネルを搭載。3Dにおいても市場をリードしていることを訴えた。

「ビエラ TH-54/50VT2」では「プラズマ大革命」を標榜

3D対応も特徴だった

また、2010年5月には58型4KプラズマディスプレイパネルをNHK技研と共同開発し、2011年3月にはインターネットサービスである「VIERA Connect」に対応したプラズマテレビ「ビエラ VT30/GT30シリーズ」を海外市場から発売。

2000年代前半の薄型テレビ登場当初は、32型以下が液晶テレビ、37型以上がプラズマテレビという棲み分けで展開していた

2011年4月には、大坪社長(当時)が、「液晶、プラズマといったデバイスごとにインチサイズを決めていたこれまでの戦略を見直し、デバイスにこだわらないインチ戦略を推進する」と棲み分け戦略を撤廃し、液晶テレビの大画面モデルの品揃え強化に本格的に乗り出した。

2012年4月には、145型8KプラズマディスプレイパネルをNHK技研と共同開発。ロンドンオリンピックで公開展示した。また、2012年6月には、電子黒板「インタラクティブ・ブラズマディスプレイ TH-65PB1」(市場想定価格は80万円前後)を発売し、PDPの新たな市場開拓に挑戦。2012年からブランド展開を開始した「スマートビエラ」では、2013年4月には、タッチペン機能付きプラズマテレビ「スマートビエラ VT60/GT60シリーズ」を発売し、スマートテレビへと大きな進化を果たした。

スマートビエラ VT60/GT60シリーズでは、「テレビを見る人それぞれの生活シーンにあわせたコンテンツを、テレビをつけたらすぐに楽しめる」ことを目標に開発。それを実現する「マイホーム」機能は、今後のパナソニックのテレビ事業の方向性を示すものになったといえるだろう。

インタラクティブ・ブラズマディスプレイの「TH-65PB1」

【左】スマートビエラのキャラクターには滝川クリステルさんを起用 【右】スマートビエラでは、ユーザーがカスタマイズできる「マイホーム」機能を搭載

赤字から黒字への転換が見通せなかった

こうしたなか、2013年10月に、PDPの生産終了を発表。2013年度内でPDP事業を終息することになる。

パナソニックの津賀一宏社長

パナソニックの津賀一宏社長は、「PDP事業は一時、1,000億円を超える赤字にまで膨らんだ。それを、様々な施策を通じて事業再生に取り組み、固定費圧縮や大型化、電子黒板への展開などによって200億円規模の赤字にまで絞り込んできた。しかし、残りの200億円の赤字を黒字に転換する、あるいは赤字を半減するといった施策が見えない。そこで、撤退という最終決断をした」とする。

パナソニックのPDP事業は、デジタルテレビ市場の拡大のなかで、市場動向を読み違えたこと、液晶の大画面化が想定以上に進んだこと、そして市場競争の激化や新たな需要開拓への取り組みが遅れたこと、最終的には赤字脱却の道筋が見えなかったことが撤退の理由といえる。

高い品質でファンが多かったパネルだけに、事業終息を惜しむ声は少なくない。

本稿におきまして、P3の生産体制、PDPの出荷実績など一部記載に誤りがあったため、訂正致しました。読者の皆様ならびに関係各位におかれましては、ご迷惑をお掛けしたことを深くお詫び申し上げます。
前編はこちら
【レポート】「テレビ事業 復活の樹」に懸けた思い - パナソニックのプラズマ事業の歴史を振り返る・前編 (2013年11月7日)