ヴイエムウェアは11月6日、同社の次世代クラウドサービス基盤の実現に向けた取り組みに関する記者説明会を開催。米VMwareでCEOを務めるPat Gelsinger(パット・ゲルシンガー)氏らが登壇し、ネットワーク仮想化プラットフォームである「VMware NSX」の優位性を説明するとともに、日本における「VMware NSX」のユーザー事例も紹介した。

ヴイエムウェア代表取締役社長の三木泰雄氏

冒頭、ヴイエムウェアで代表取締役社長を務める三木泰雄氏は、「経営層の半数以上が、ITに期待する役割として『経営/ビジネス戦略とIT戦略の整合性の確保』を挙げている。求められているのは、リスク管理とコンプライアンスを強化しつつ、クラウドやモバイル環境を推進できる、ビジネス環境に柔軟に対応できるIT基盤だ」と語った。

次に登壇したゲルシンガー氏は、ITインフラに要求される内容として、「IT分野すべての仮想化」「運用管理の自動化」「互換性のあるハイブリッドクラウド」の3つがあると指摘。そして、これらを実現するのが、「Software-Defined Data Center(SDDC)」であると述べた。

SDDCとは、ネットワークやストレージといったデータセンターの構成要素をすべて仮想化し、ポリシーベースで自動化する概念である。

米VMware CEOのPat Gelsinger(パット・ゲルシンガー)氏

ゲルシンガー氏は、「現在(企業ユーザーの)ワークロードの70%は仮想化環境で実行されている。次のステップは、ネットワークの仮想化だ。クラウド環境でいちばん障害となるのが、ネットワークの構築である。同部分を仮想化できれば、現在のリソースを解放し、効率的なインフラを構築できる」と説き、SDDCを具現化する製品として「VMware NSX」を紹介した。

VMware NSXは、物理ネットワークを必要に応じて消費/再利用可能なリソースプールとして取り扱うことができるソリューションだ。VMwareが2012年に買収したネットワーク仮想化ベンダーの米国Niciraが提供する「NVP」と、「VMware vCloud Networking and Security」を統合したもので、データセンター全体で、論理ネットワーク機能のハイパーバイザへの配信を管理するコントロールクラスタを中心に構成されている。

会見では、VMware NSXをサービス基盤として採用しているNTTコミュニケーションズ(以下、NTT Com)とニフティ、現在は同製品の技術評価している関電システムソリューションズの担当者らが登壇し、自社の事例を紹介した。

NTT Comでクラウドサービス部長を務める田中基夫氏は、同社が企業ユーザー向けに提供しているクラウドサービス「BizホスティングEnterprise Cloud」でVMware NSXを利用していると紹介。「顧客は物理ネットワークを問わず、オンプレミスのサーバに設定しているIPアドレスを、仮想ネットワークを通じてクラウド環境でも利用できる。これによりユーザーは、同じ環境をオンプレミスでもクラウド利用できる」とその優位性を語った。

また、ニフティでクラウド本部クラウド事業部長を務める上野貴也氏は、「2006年からVMwareのインフラを自社内で標準環境として利用しているが、(利用前と比較し)運用費用の60%削減に成功した」とその効果を紹介。VMware NSX導入のメリットについて、「制約条件の解放による物理ネットワークのフラット化で、利用効率が向上した。また、データセンターネットワークの集中管理・自動化で、人的リソースの削減と、ヒューマン・エラーを防止できる」と語った。

一方、現在 VMware NSXを検証中なのが、関電システムソリューションズである。同社は大阪に3カ所のデータセンター運用し、2012年から2拠点で検証用のクラウド環境を準備して、VMware NXSを検証しているという。

同社のITサービス事業本部ITサービスインフラ構築部部長の角野俊朗氏は、「データセンターには、拠点間ネットワークの再設計が必要だったり、移設や機器の追加で構成変更に手間がかかったりといった課題がある。VMware NXSはパフォーマンスの劣化がなく、ネットワークセグメントが異なるクラウド間をシームレスに移動できる。現在抱えていた課題するソリューションだ」と評価した。

(写真左から)米VMwareネットワーク担当最高技術責任者(CTO)のMartin Casado(マーティン・カサド)氏、ニフティ クラウド本部クラウド事業部長の上野貴也氏、米VMware CEOのPat Gelsinger(パット・ゲルシンガー)氏、NTTコミュニケーションズ クラウドサービス部長の田中基夫氏、関電システムソリューションズITサービス事業本部ITサービスインフラ構築部部長の角野俊朗氏、ヴイエムウェア代表取締役社長の三木泰雄氏