調査会社のイードは10月22日、NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクの主要3キャリアから発売されたiPhone 5s/5cのキャリア別満足度調査の結果を発表した。結果をまとめると、auのiPhone 5s/5c購入者の総合満足度が首位になったという。9月20日に発売されたiPhone 5s/5cは、従来からiPhoneを取り扱ってきたau、ソフトバンクに加え、新たにドコモが販売に参入し、通信各社の競争の軸は端末からネットワークへと移行している。そこで本稿では、各社ネットワークに着目し、今回の満足度調査の結果について考察していきたい。
iPhone 5s/5cのキャリア別満足度調査
今回のiPhone 5s/5cのキャリア別満足度調査は、ドコモ、au、ソフトバンク各社のiPhone 5sおよび5cの購入者各100人、合計600人を対象に実施。契約したキャリア、端末を選んだ理由や、その満足度などについて調査した。期間は2013年10月11日から17日まで。
同調査結果によると、各キャリアのiPhone 5s/5cについて、「大変満足している」「やや満足している」と答えた人の割合から「やや不満」「大変不満」と答えた人の割合を引いた総合満足度では、auが満足度指数40.3ポイントとなり、3キャリアで首位だった。次いで、ドコモが36.9ポイントで2位となり、ソフトバンクは33.5ポイントで最下位という結果となった。
各社のiPhone 5s/5cの満足度について、項目別に詳しく見てみると、まず総合満足度で首位となったauは、「LTEのインターネットの速さ」「LTEの通信エリアの広さ」「プラチナバンドLTEへの対応」「LTEの地方でのつながりやすさ」について、満足度が3キャリアで最も高く、800MHz帯のプラチナバンドLTEを始めとする同社のネットワークが購入者の満足度を引き上げたことがわかる。
総合満足度で2位となったドコモは、「店頭スタッフの対応・スキル」ではトップとなったが、「メール機能の対応」では満足度が低く、プッシュ通知に未対応のspモードメールなどに不満を持っている人が多いことがわかった。
また、全体の総合満足度で最下位となったソフトバンクは、とくにMNP(モバイルナンバーポータビリティ)で流入したユーザーの満足度がドコモ、auと比べて低い結果となった。具体的には、「LTEの地方でのつながりやすさ」「LTEのインターネットの速さ」といったLTEに関する項目に加え、「キャリアとしての信頼性」「キャリアの総合的な魅力」などの項目でMNPユーザーの満足度が低かった。
auが満足度首位となった理由を考える
今回のiPhone 5s/5cの満足度調査では、au、ドコモ、ソフトバンクという順位になったが、その理由について考えてみよう。
まず、auの総合満足度がもっとも高かったのは、項目別でも満足していると答えた人の多かったプラチナバンドLTEをはじめとする同社のネットワークに要因があると言えるだろう。iPhone 5s/5cでは、700MHz帯から900MHz帯までのプラチナバンドと呼ばれる周波数帯のLTEに対応している。現在、日本ではauとドコモが800MHz帯のLTEを展開しているが、とくに800MHz帯LTEに力を入れているのがauだ。
10月2日に開催された2013冬モデル発表会においても、同社の田中孝司社長が800MHz帯LTEについて、「建物を回り込み、屋内にも入り込みやすい」としてアピールした。800MHz帯の実人口カバー率は、最大75Mbps対応エリアが2013年8月末時点で97%となっており、さらに2014年3月には実人口カバー率99%となる見込みだ。今回の結果は、800MHz帯LTEの実力がiPhone 5s/5c購入者の実際の感覚としても証明されたと見ることができる。
2位となったドコモで目立ったメール機能に対する低い評価は、9月20日のiPhone 5s/5c発売時点では利用できなかったキャリアメールのspモードメールだ。同機能は、10月1日よりiPhoneでもspモードメールが利用可能となっている。しかし、新着メールのプッシュ通知は依然未対応で、12月中旬より着信通知機能が提供される予定だ。キャリアメールを頻繁に使う人にとっては、しばらく不満が続くことになりそうだ。
ソフトバンクは総合満足度で3位となり、とくにMNPで流入したユーザーの満足度が低い結果となったが、ほかの2社と比べて弱点となるのが現時点でプラチナバンドのLTEがないことだ。先述の通り、auとドコモは800MHz帯でLTEを展開している。ソフトバンクは2014年4月より900MHz帯でのLTEの提供を順次開始する予定だが、その時点での実人口カバー率が99%となる見込みのauと比べると差は大きく、苦しいスタートとなる。
また、ソフトバンクはiPhone 5s/5cの発売に合わせ、2GHz帯および1.7GHz帯のLTEを5MHz幅から10MHz幅に拡張し、下り最大75Mbpsを実現する「倍速ダブルLTE」を開始している。しかし、他社はさらなる高速化に取り組んでおり、ドコモとauはそれぞれ下り最大150Mbpsの高速サービスを一部エリアから開始予定と、ソフトバンクよりも一歩先へ進んでいる。あくまで理論値であり、iPhone 5s/5cの場合、下り最大100Mbpsまでしか対応しないといった側面もあるが、ソフトバンクにとっては、これらの出遅れを解消し、どのように購入者の満足度を高めていくかが課題となる。これまでiPhoneの販売では他社をリードしてきたソフトバンクだが、3社三つ巴の戦いとなったことで、存在感は薄れつつあるようにも見える。
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今回実施されたiPhone 5s/5cのキャリア別満足度調査では、総合満足度でauが首位となり、2位がドコモ、3位がソフトバンクという結果になった。ネットワークに着目すると、auがアピールする800MHz帯のプラチナバンドLTEが、ユーザーの満足度として実際に表れた結果と見ることができる。また、メール機能が完全には整っていないドコモは、満足している人がいる一方で、不満を感じる人も一定数存在したと考えられる。3位となったソフトバンクは、プラチナバンドLTEや倍速化での出遅れをどう解消するかが、満足度向上のカギとなりそうだ。今後の各社のネットワークの取り組みが、ユーザーの満足度にどう影響していくのか注目しておきたい。