インストールトラブルの対応とアフターメンテナンス

筆者は今回、自身のマシンや家人が利用しているマシンなど複数のコンピューターをWindows 8.1へアップデートしている。中にはWindows Vista時代に購入したコンピューターも含まれているが、すべてWindows 8に移行済みだったため、一部デスクトップアプリの再インストール以外は問題なくアップデート完了した。それでもユーザーの中にはアップデートに関するトラブルが発生している方もおられるだろう。

例えばWindowsストアにWindows 8.1アップデートが現れない場合、KB2871389が適用されていない場合がある。この更新プログラムはWindows 8.1へアップデートするための下地を作るためのもので、Windows Updateの自動実行が有効な場合はインストール済みのはずだ。何らかの理由で未適用な場合はこちらのサポート情報を元に適用するとよい。それでもWindows 8.1アップデートが現れない場合は、Windowsストアの各種情報をリセットする「WSReset.exe」コマンドを実行することをお勧めする(図06)。

図06 アカウント設定情報やインストール済みWindowsストアアプリを削除せずに設定をリセットする「WSReset.exe」

なお、この他にも日本マイクロソフトによるWindows 8からWindows 8.1へのアップデートサポート情報が公開中なので、トラブルが発生しているユーザーは合わせて参照して欲しい。

今回アップデート時の動作も検証してみた。WindowsストアからWindows 8.1アップデートをダウンロードしている際は、%SystemRoot%\SoftwareDistribution\Downloadのサブフォルダーに、「WindowsStoreSetupBox.exe」と、Windows 8.1アップデートの実体であるESD形式ファイルがダウンロードされる。このESDは「Electronic Software Distribution」の略で、非パッケージ版で用いられるMicrosoftでは一般的なファイル形式だ。前述した実行形式ファイルでESD形式ファイルを参照し、Windows 8.1へのアップデートを実行しているようだ(図07~08)。

図07 「Process Monitor」でアップデート中のファイルアクセスを確認すると、%SystemRoot%\SoftwareDistribution\Downloadのサブフォルダーへ過剰なアクセスが発生している

図08 対象となるサブフォルダーにはアップデートを実行する実行形式ファイルとESD形式ファイルが保存されていた

筆者が寄稿した各記事で述べているように、事前公開されたWindows 8.1 RTM(Release To Manufacturing version:製造工程版)版とGA(General Availability version:一般提供版)版では、各所に違いが生じている。顕著なのがOSのビルドナンバーやビルド日を示す「BuildLabEx」だ。HKEY_LOCAL_MACHINE\SOFTWARE\Microsoft\Windows NT\CurrentVersionキーにある文字列値「BuildLabEx」を確認すると、RTM版は「9600.16384(中略)130821-1623」だったのに対してGA版は「9600.16404(中略)130913-2141」となっている。マイナーバージョンが「16384」から「16404」と20ステップも更新され、ビルド日も9月13日(現地時間)であることを確認できた(図09~10)。

図09 Windows 8.1 RTM版の「BuildLabEx」

図10 Windows 8.1 GA版の「BuildLabEx」。値のデータが異なる

さらにRTM版は10月18日にKB2883200KB2884846、そしてKB2895219をWindows Updateで公開している。前者2つは更新プログラムのロールアップでKB2894029およびKB2894179、KB2884846およびKB2898742をそれぞれ含む修正プログラムだ。インボックスアプリの修正やシステムファイルの更新などを行い、RTM版をGA版へ更新するために必要なのだろう。その証拠としてWindows 8からWindows 8.1へアップデートした環境では、また異なる更新プログラムが提供されていた。なお、後者のKB2895219はRuntimebroker.exeの修正を行う更新プログラムのため、各環境で適用される(図11~12)。

図11 RTM版でWindows Updateを実行した状態。GA版相当にするための更新プログラム適用が求められる

図12 Windows 8からWindows 8.1へアップデートした環境の履歴。異なる更新プログラムが適用されたことを確認できる

もう1つ興味深いのが、Windowsストアアプリの更新だ。当初RTM版からGA版への更新に必要なために更新を求められると考えていたが、Windows 8からアップデートしたGA版環境でも同様にインボックスの大半が更新している。実際に確認すると「Bingヘルスケア&フィットネス」には、ニュース記事が加わり、カロリー計算を行うための食品登録は応答性が向上していた。「Bingフード&レシピ」もレシピ提供サイトが追加されたものの、ワインに関する情報は大半のメッセージが英語のままで中途半端感は否めない。今後の更新に期待することにしよう(図13~14)。

図13 Windows 8.1アップデート後は、数多くのWindowsストアアプリが更新される

図14 更新後の「Bingフード&レシピ」。大半が日本語化されたが、ワインに関する情報は一部日本語化されているが、大半は英語のままだった

さて、最後にWindows 8.1アップデート後のメンテナンスについて述べておく。アップデート後には、いくつかの不要なフォルダーがルートフォルダーに存在することにお気付きだろう。「$Windows.~BT」フォルダーはWindows OSがセットアップ時に利用するフォルダー。そして「Windows.old」フォルダーはWindows 8が利用していた各フォルダーの移動先である。何らかの理由で以前のシステムファイルや、デスクトップアプリなどが作成したデータファイルが必要な場合はここからファイルを抜き出せばよい(図15~16)。

図15 Windows 8.1アップデート後のルートフォルダー。いくつかの不要なフォルダーが存在する

図16 「Windows.old」フォルダーの内容。Windows 8で利用していた各フォルダーがそのまま移動している

その一方でWindows 8.1の安定動作を確認した場合、各フォルダーは無用なファイルとなる。その際は管理者権限で「ディスククリーンアップ」を起動し、<以前のWindowsのインストール>を選択して削除することで、ディスクの空き容量を確保することが可能だ。同項目で削除されるのは「Windows.old」フォルダーのみである。「$Windows.~BT」フォルダーを削除するには、<一時Windowsインストールファイル>を選択しなければならない(図17)。

図17 管理者権限で「ディスククリーンアップ」を実行することで、不要なファイルやフォルダーを削除できる

なお、Windows 8.1のディスククリーンアップには<デバイスドライバーパッケージ>という項目が新たに加わった。同ツールが参照するHKEY_LOCAL_MACHINE\SOFTWARE\Microsoft\Windows\CurrentVersion\Explorer\VolumeCachesキーを確認すると、Device Driver Packagesキーが新たに加わり、保持しているデバイスドライバーパッケージのクリーニングが可能になっている。説明や動作を確認する限り、「%SystemRoot%\inf」フォルダーの古いファイルを削除する仕組みなので、Windows OSのメンテナンス機能として活用したい。

阿久津良和(Cactus