―― その上に、GWA-1100ならではのグレードアップがあるということですね。

斉藤氏「そうです。サファイアガラスの採用もそのひとつですね。サファイアガラスはダイヤモンドに次ぐ硬度を持つほど丈夫で傷が付きにくく、無反射コーティングを施した状態での視認性の良さは圧倒的。これは大きなグレードアップです。

耐衝撃をアイデンティティにするG-SHOCKにとってガラスは非常に大切で、落下したときに割れたり、ポンと抜けてしまっては困ります。加えて、G-SHOCKには20気圧防水という規格もあるので、どうしてもある程度の厚みが必要になってくる。ところが、サファイアガラスは非常に高価なので、使用量がダイレクトにコストとして跳ね返ってしまうんです」

風防にサファイアガラスを採用

斉藤氏「ちなみに、今までのG-SHOCKでサファイアガラスを使っているのは、MR-Gのような10万円を超える高額製品だけでした。ラバー製バンドのものでサファイアガラスを使ったのは、GW-A1100が初めてです。本来、G-SHOCKは全製品をサファイアガラスにしたいくらい、素材性能としては魅力的なんですが、やはりコストが問題ですね。

ただ、無機(ミネラル)ガラスが弱くてすぐ傷が付く、というわけではありません。一般的に、サファイアガラスは視認性を重視して採用されている場合が多いのですが、G-SHOCKでは無機ガラスより傷付きにくいという点を重視して採用しています。同じ素材を選んでも、採用の視点が違う。それもG-SHOCKらしいところだと思いませんか(笑)。」

―― 秒針のカーボンファイバーも新採用された素材ですね。

斉藤氏「GW-A1100では、方位を示すのに秒針を使っています。より見やすく正確な方位を指し示すために、できるだけ大きな針を使いたかったんです。ところが、この秒針にも重量制限がありまして…。そこで、より軽い素材を探そうと、カーボンファイバーを採用しました。カーボンファイバーの針を持つ時計は、おそらくカシオしか作っていないと思います。

これで、秒針の重量が従来の半分くらいになりました。本当にわずかな差なんですが…。けれども、これを作るために、実はすごくパワーを費やしたおかげで、非常に見やすい秒針ができたと自負しています。G-SHOCKの耐衝撃性能は、針にも弾性が必要なので、そういう意味でも向いている素材ですね」

カーボンファイバーの秒針。写真は深みのあるブルーIPが美しい「GW-A1100FC-1AJF」(ブラック×ブルー)のベゼル。『写真で見る! - 新開発方位センサーを搭載した最新G-SHOCK SKY COCKPIT「GW-A1100」』より

―― カーボンはボーイング787の機体にも使われている素材ですし、そういった部分も航空機を連想させますね。あと、この秒針は暗い場所でも非常に見やすいと思いました。

斉藤氏「ルミブライト(蓄光塗料)を乗せているのですが、ルミブライトは鉱物なので、意外に重いんです。針が大きい分、塗料が多く乗るので、規定重量をオーバーしてしまうんですよ。とにかく苦労しました」

斉藤氏「すみずみまでこだわって作っているので、その分コストがかかってしまいました。ただ、樹脂ケースのG-SHOCKとしては高額なGW-A1000が市場に受け入れられたことで、これらのこだわりを貫くことができたのです。GW-A1100は、技術的にもマーケティング的にも、GW-A1000があったからこそ、誕生できた時計なんですよ」

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