新Surfaceを成功に導くには明確な指針が必要

さて、Surface 2はコンピューター市場で成功するのか、という点を考えてみよう。少なくともSurface RTは第3四半期決算において9億ドルの損金を計上したのは記憶に新しく、各国ではWindows RT搭載タブレットの販売が好調だという話を耳にしたことはない。加えて今回の新モデルでは「RT」の文字を取り除いたところにもMicrosoftの弱気な姿勢をうかがい知ることができる。Windows RTを活かすにはWindowsストアアプリが欠かせないが、開発環境の複雑さがサンデープログラマーに二の足を踏ませていると言う(そのためか、Windows 8.1ではビュー状態を廃止し、制限を緩和している)。

とある記者発表会で「Surface RTはActiveDirectoryに対応しないのか」という質問が上がったものの、日本マイクロソフトの回答は「現時点で非対応」という含みを残したものだった。ActiveDirectory認証などビジネスニーズに対応する機能を備えれば、Surface RTはシンクライアントとして優秀なデバイスになり得る可能性が高いのは、読者もご承知のとおりである。しかし、Windows RT 8.1もそれらの機能をサポートしていない。Microsoftは今後もSurface RTをエントリーモデルとして残すらしいが、前述したWindowsストアアプリの状況を踏まえると、しばらくの間は厳しそうだ。

一方のSurface Pro 2は、タブレットの携帯性とノート型コンピューターの柔軟性を備えるデバイスであり、Windowsマシンとしては十分魅力的だ。しかし、128ギガバイトモデルでも999ドル(約9万9,000円)という価格設定は訴求力が足りない。"高くないが安くもない"という印象が残ってしまう。確かに同等レベルのノート型コンピューターと比較すれば一回り安い価格設定だが、爆発的なヒット商品を目指すのであれば、あと100~200ドルは安くすべきだ。

ハードウェアが最初から成功するのは希(まれ)である。加えてMicrosoftという企業はOS(オペレーティングシステム)やアプリケーションも、ファーストリリースは歯牙にもかけないような出来だったが、改良や改善を加えて現在の地位を築いてきた。デバイス&サービスカンパニーという指標を掲げる同社としては、Surfaceシリーズへ人材と資金を投入せざるを得ないが、来年に迫るWindows XPのサポート終了に伴う移行需要を踏まえれば、同社の方針は何ら間違っていない。

今回の新モデルがそれらのニーズを満たしているかは疑問が残るものの、ブレイクスルーとなる"あと一歩"を踏み出せれば、タブレット市場で一定のシェア(占有率)を獲得できる筆者は愚考する。その一歩が何なのかは知る由もないが、次期CEO(経営最高責任者)には明確な指針を打ち出してほしい。

阿久津良和(Cactus