KDDI研究所と古河電気工業は9月25日、情報通信研究機構(NICT)の委託研究による大洋横断光ファイバ伝送において、毎秒140テラビットの信号を約7300km伝送することに成功したと発表した。

毎秒140テラビットはハイビジョン映像2時間分を1秒間に700本分転送できる速度に相当する。両社は今回の実験によって、伝送容量と伝送距離の積で示す伝送性能指数(容量距離積)において、世界で初めて1エクサ(Exa:1京の100倍、10の18乗)を突破したとしている。

現在、光のコア(通路)がひとつの光ファイバでは物理的な伝送容量の限界に近づいているとされており、光ファイバ内に複数のコアを持つマルチコアファイバなどを使った空間多重光通信技術の研究が積極的に進められている。

マルチコアファイバを用いることで、単一コアファイバの限界とされる毎秒100テラビットの壁を破ることができるが、これまでのマルチコアファイバを用いた大容量伝送実験では、毎秒0.7エクサビット・キロメータ程度の容量距離積しか実現できていなかった。

光ファイバのコア数を増やすとコア間の信号の干渉が大きくなって長距離伝送が伸びず、逆にコア数を減らすと容量の拡大が難しくなるという問題があり、伝送容量と伝送距離の両立が課題となっていた。

このような状況のなか、KDDI研と古河電工は、コア間の信号の干渉を抑えることで長距離中継伝送を可能にする7コア光ファイバと7コア光増幅器を共同開発。さらに、新たな信号処理技術を導入し、伝送効率を従来の2倍に向上させることに成功した。

これにより、ファイバあたりの伝送容量が毎秒140テラビットに拡大するとともに、伝送距離が7300kmまで伸び、毎秒1エクサビット・キロメータの容量距離積が達成された。これは商用化されている毎秒100ギガビット波長多重伝送システム(伝送容量約毎秒9テラビット、伝送距離約1500km)と比較すると、伝送容量は約15倍、容量距離積では約70倍の向上となる。

7コア光ファイバと7コア光増幅器

1本のファイバで運べるデータ量(発表資料より)

両社は今後、マルチコア光ファイバ・光増幅器のさらなる性能向上と、低消費電力化および小型化を進め、早期商用化を目指すとしている。