つくば市とトヨタ自動車(トヨタ)は7月23日、同月24日より「つくばモビリティロボット実験特区」において、トヨタが開発を進めている立ち乗り型のパーソナルモビリティ「Winglet(ウィングレット)」による歩道での公道実証実験を開始することを発表した(画像1)。

画像1。横断歩道をWingletで渡る様子(long type)

Wingletは、もともとはソニーが開発していたものをトヨタ自動車が引き継いで開発を進めている、2008年8月に発表された倒立2輪振子型のパーソナルモビリティだ。体重移動で前後進、旋回などを行う。最高時速は6km。発表時のタイプは3種類あり、スポーツライクな乗り方を楽しむ「Type S」(画像2)、ハンドルの着いた初心者用の「Type L」、その中間の「Type M」(画像3)という具合だ。現在公式サイト上ではType Sがなくなり、Type Mを「short type」、Type Lを「long type」としている。

画像2。スポーツライクな乗り方を楽しむ「Type S」。現在はラインアップされていない

画像3。初心者用のType LとスポーツライクなType Sの中間の「Type M」。ステーが若干長く、ヒザで挟み込める

これまで、屋内でのType Lの試乗会は幾度も行われ、私有地であれば屋外での商業施設の広場などでも開催されているが、公道での走行(実証実験)は今回が初めてだ。今回の実証実験は、Wingletを将来的に公道(歩道)で利用することができるよう、安全性、実用性、利便性の3点を検証することを目的に、2013年度から3年間の計画で実施する予定としている。

2013年度は、安全性の検証に重点を置き、産業技術総合研究所の職員やつくば市職員などが、通勤や勤務時の外出の際に、公道(歩道)などで利用することで、走行安全性や歩行者など交通との親和性を評価する予定だ。2014年度以降は、需要見込みや、市民の移動支援、地域の活性化、環境改善への貢献度などの実用性と利便性について検証していく予定としている。

Wingletはもともとショッピングモールや大型アミューズメント施設、展示会場、空港などの人の多い屋内での使用をメインに想定して設計されているため(公園などでのスポーツ的な楽しみ方など、屋外の利用も想定していないわけではない)、歩行者に威圧感を与えないようにするといった理由から、立ち乗り型パーソナルモビリティの元祖である「セグウェイ」と比較すると、タイヤ径がかなりコンパクトなのが特徴だ(発表時のスペックではタイヤ径が150mmで、段差踏破能力はバリアフリー段差の20mm)。

起伏の激しい場所での使用は厳しいが、舗装路なら問題ないと思われるが、横断歩道などの歩道と車道の段差などは場所によってはかなりギャップがあるので、そこら辺をクリアできるのかが注目すべき点だ。動画で見る限りでは、歩道に設置された視覚障害者用の誘導ブロックなどの段差は問題なく乗り越えている。

つくば市では、「つくばモビリティロボット実験特区」の認定を受け、2011年6月から日本で初めてとなるパーソナルモビリティロボットの公道実験を行い、これまでに延べ7000kmを超える実験走行を行っている。今回、Wingletの実証実験を開始することで、日本における生活支援ロボット産業の発展や、モビリティロボットの公道走行の実現に向けて貢献していきたいと考えているとした。

またつくば市では、「つくば国際戦略総合特区」や「環境モデル都市」の指定を踏まえ、低炭素社会の実現に向けたイノベーション創出に取り組んでいることから、モビリティロボットを活用した環境負荷の低いまちづくりを進めるにあたり、「Winglet」の公道実証実験を開始できることは、大変意義があると考えているとコメントを出している。

なお、下の動画では、駅から出て(改札を抜けてくるシーンは収められていない)歩道や横断歩道を走行する様子、市役所内に入っていって屋内をそのまま移動する様子、エレベーターに乗り込む様子などを見ることが可能だ。

Wingletによる公道での実証実験の様子

Wingletのスペックは以下の通りだ(発表時のもの)。

  • 全長:265mm(共通)
  • 全幅:464mm(共通)
  • 全高:462mm(Type S)/680mm(Type M)/1130mm(Type L)
  • 重量:9.9kg(Type S)/12.3kg(Type M&L共通)
  • 最高巡航速度:時速6km/h(共通)
  • 旋回半径:その場での旋回が可能なので0mから(共通)
  • タイヤ径:150mm
  • 踏破できる段差の高さ:20mm
  • 航続距離:5km(Type S)/10km(Type M&L共通)
  • 充電時間:満充電1時間(共通)
  • 注):航続距離は、乗員の体重や路面状況で変化