稲盛財団は21日、今年の京都賞をペンシルバニア州立大学の根井正利教授(82歳)(進化生物学)ら3人に贈ると発表した。

根井正利氏

ロバート・ヒース・デナード氏

セシル・テイラー氏

基礎科学部門で受賞した根井教授は、生物のタンパク質やDNAの違いを数値化して進化を解析する「根井の遺伝的距離」という手法を確立し、生物集団が共通の祖先からどのくらい前に枝分かれしたかを推定できるようにした。それまで推測や仮説が主だった進化現象を定量的に捉えられるようにして分子進化生物学の理論的な基礎を築いたほか、保全生物学や生態学などの発展にも貢献した。また、博士らが開発した分子系統樹作成のための「近隣接合法」は、ヒト・チンパンジー・ゴリラに代表されるような近縁な生物種間の系統関係を遺伝子の系統関係から導く理論として、現在も頻繁に利用されている。

先端技術部門で受賞したのは、IBMトーマス・J・ワトソン研究所フェローの電子工学者、ロバート・ヒース・デナード博士(80歳)。デナード博士は、コンピューターの半導体記憶用集積回路として広く使われている「ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリ(DRAM)」の基本構造を発明し、現在の情報・通信技術の飛躍的発展に貢献した。

思想・芸術部門では、ジャズ・ミュージシャンのセシル・テイラー氏(84歳)が受賞した。テイラー氏はフリー・ジャズの代表的なピアニストとして、従来の型にはまらない革新的な演奏を、独特の音楽構成と打楽器的な演奏スタイルによって生み出し、ジャズに新たな可能性を切り拓いたことが評価された。

授賞式は、11月10日に京都の国立京都国際会館で行われ、受賞者にそれぞれ賞金5,000万円が贈られる。

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