企業の人的資産を最高の状態に保つためには、HR(Human Resource)の戦略が非常に重要である。HRの役割は多岐に渡るが、国内の多くの企業では、単なる人事管理や労務管理の機能しか果たせていないケースは少なくない。

サクセスファクターズは、企業の人材を最適化する"タレントマネジメント"を提供しているSaaSベンダーとして、ワールドワイドでトップシェアを誇る。設立から10年強という若い企業だが、すでに35言語、168カ国で事業を展開しており、グローバルで3600社/2000万人、国内でも300社近いユーザーを抱えている。同社のBusiness ExecutionアーキテクトAPJ担当ディレクターを務めるケン・ピアソン氏は、「多くの企業ではHRの価値が過小評価されている」と語る。

同氏は以前、米国ウォルマートで長期間HR担当者として従事し、サクセスファクターズのユーザーとして"人材改革"を行なった経験も持ち合わせる。ピアソン氏に、HRの重要性とサクセスファクターズのソリューションについて話を聞いた。

--HRはビジネスにどのように関係するのでしょうか--

拡大しているHRの機能

ピアソン HRの目的は、ビジネスのゴールを従業員の力へ転換することです。ビジネスを遂行するためにはどのような要因が必要であるかと考え、そのための人材はどのような人物か、どのような管理が必要か、パフォーマンスは最適化されているか、正しく育成できているかといった情報を分析し、適切な基本情報や洞察を提供するのが、HRの仕事です。

またHRの機能というものは、段階を踏んで成長していくものです。

一番最初の、まだ機能が定義されていない状態では、グループやマネージャーレベルでのタレントマネジメントに過ぎず、人材の情報は社内政治的な影響を強く受け、複雑で、孤立した状態になっています。この状態では、社員のやる気は低下し、離職率が高まる一方です。

このような状態から、徐々に"効率化"を図り、データを分析してビジネスを遂行するための"洞察"を行い、最適化を実現する高度なプロセスを"戦略的"に実行していきます。最終的には、ビジネスに"変革"をもたらす基盤となりうるのです。

HRを重視し始めているHR企業の多くは、この"洞察"の段階にあると思われます。ビジネスの成長のためには、戦略的な最適化プロセスや変革のための基盤作りが必要となってきます。

--HRが過小評価されているとはどのようなことでしょうか--

Business ExecutionアーキテクトAPJ担当ディレクター ケン・ピアソン氏

ピアソン 私はウォルマートのHR担当者として、また当社のBusiness Executionアーキテクトとして、さまざまなHRの事例を見てきました。その経験で気づいたのは、HRの部門が矛盾や誤解をいくつも抱えていることです。

1つ目は、多くの部門責任者が「社内に十分なタレントがいない」と感じていることです。しかし、それは誤解で本当はいるのに気づいていないだけなのです。まず社員の情報にアクセスすることが困難で、各社員がどのようなキャリアに関心があるかを知りません。社員も、どのようなキャリアアップのチャンスがあるのかを知りません。採用活動を行う前に、社内の人材を検索しているでしょうか。そもそも、ビジネスニーズに合ったキャリア開発を計画できていません。

2つ目は、HR部門が自身をコストセンターだと考えており、ROIの向上に貢献できないと勘違いしていることです。しかし、従業員の能力を適切に活用できなければ、ビジネスの立ち上げが遅れ、機会損失をしてしまうかもしれません。運用コストが増大し、採算リスクが上昇するかもしれません。生産性が低下すれば、社員一人当たりの売上や利益が小さくなってしまいます。

3つ目は、ITはHRのニーズを満たしてくれないという誤解です。おそらくこの誤解は、HR側が社員の能力をビジネスニーズに合わせて説明できていないことや、IT側が財務管理や販売管理などを重視してHRの重要性を認識していないことから生じています。忘れないでほしいのは"どちらもビジネスの成功を目指している"ことです。

4つ目は、部門長らがHR情報を気にしないという通説を信じてしまっていることです。実は、意思決定に必要な情報を提供できていないだけなのです。HRの機能が成熟していないと、コンプライアンスばかりに集中して、データのみの提供で満足してしまいます。しかし、部門長らが必要としているのは、データから洞察される、人材育成や財務、人員計画、生産性向上といった観点からのアドバイスなのです。

5つ目は、HR担当者やHR責任者が交渉の席に着けないと思っていることです。要は、HRがビジネスに対してどのような価値を提供できるのかという点にあります。例えば、退職者の数に問題を抱えているとしたら、その解決策を提案できればどうでしょうか。財政的な課題に対して、HRの観点からアドバイスを提供できるとすればどうでしょうか。矛盾や誤解を払拭するには、単なるデータやレポートを提供するだけにとどまらないことが重要です。

--ウォルマートではHRはどのように機能しましたか--

タレントマネジメントは「見える化」から活用フェーズへと移行している

ピアソン まず前述した3つ目の矛盾、IT部門とHR部門について両者がパートナーシップを組めた点が成功例としてあげられます。これには、サクセスファクターズのソリューションが役立ちました。当社のタレントマネジメントソリューションはクラウドサービスとして提供されるため、IT部門はインフラの運用・管理に集中し、HRテクノロジーの運用をHR部門に任せることができたのです。

もう1つ大きい成功は5つ目の矛盾、HRがビジネスをサポートできた点にあります。サクセスファクターズのソリューションを用いて、ビジネスの観点から人材について洞察することができました。その結果、例えば次に必要となる機能は何で、どのような企業を買収すればよいかといった案を提供したり、株価がどの程度であれば優秀なエグゼクティブを確保できるかといった情報を提供したりすることができました。

ウォルマートにはさまざまな恩恵がもたらされましたが、特筆すべきは、従業員の満足度が7%も向上したことです。HRによる人材の最適化は、ビジネスだけでなく労働者にも価値をもたらすのです。

--サクセスファクターズのHRソリューションについて--

ソリューションの全体像

ピアソン 日本を含めたアジア全体で、HRは成長期にあります。当社のソリューションは、HR部門の成熟度に合わせて段階的に導入していくことが可能です。ある日本のユーザー企業では、やはりステップ・バイ・ステップの導入を図り、徐々に成長しているところです。現在、タレントの最適化がビジネスに与える影響を強く感じ始めているところだと聞いています。

改めて強調しますが、HRはビジネスの遂行に不可欠です。人件費は、ビジネスの運用コストの40~60%を占めています。多様化する人材をマネジメントするためには、単なる見える化のみのツールでは不十分です。

これからのHRシステムは、HR担当者が期待する以上のテクノロジー、つまりビジネスを効率的に管理するために必要な"洞察"や"気づき"を与えてくれるものが必要です。使い慣れたスマートフォンやタブレットといったスマートデバイスなどを用い、ソーシャルサービスを活用して採用情報の提供や社員のコラボレーションも実現できるとよいでしょう。これらは、すべて当社のソリューションで実現することができます。