―― 商品力については、どう自己評価していますか。どうしても中国メーカーというイメージが付きまとうとは思うのですが。

中川氏 「正直なところ、中国メーカーであるという点での影響は、思ったほどありませんでしたね。もはや、家電商品の多くが中国で生産されていますし、三洋電機時代からの、日本のユーザーニーズに合致したモノづくりを、AQUAになっても継続していることをご理解をいただけた点がプラスになっています。さらに、日本にはないようなグローバルモデルを投入し、これが日本でも高い評価を受けているということもプラス要素になっています」

―― 具体的にはどんな商品が市場に受け入れられましたか?

中川氏 「1つは、ドラム式洗濯乾燥機の『AQW-DJ6000』です。AQW-DJ6000では、洗濯板の構造の一部をドラム槽に採用し、洗浄能力を大幅に高めました。まさに日本の洗濯板のノウハウが、最先端のドラム式洗濯乾燥機に生かされたものです。日本の家電メーカーは、節水や節電というところにフォーカスした商品づくりをしてきました。しかし、当社がこの商品で目指したのは『汚れが落ちる』ということ。洗濯機の原点である洗浄力という点にフォーカスした結果、これが市場で高く評価されました。最後発のメーカーですから、埋もれてしまわない商品、平均点にはならない商品が必要です。AQW-DJ6000は、それを具現化した代表的な商品だといえます。

ガラストップ冷蔵庫の「AQR-FDG40A」

もう1つは、2012年秋に投入したグローバルモデルであるガラストップ冷蔵庫の『AQR-FDG40A』です。これは私自身、『このデザインは日本では受け入れられないのではないか』と、プライオリティを低く考えていたのですが、本社や日本法人社内からも『やってみてはどうか』という声が出た。そこで、日本市場に投入してみたら、これが予想以上に売れたのです。計画に対して1.5倍といったところでしょうか。もちろん台数が爆発的に売れる商品ではありませんが、グローバルモデルを日本に投入することで、先行他社と差異化できるということもわかった。こうした経験を、次に生かすことができると考えています」

―― 中国のハイアールとの連携はうまくいっていると。

中川氏 ハイアール本社は、日本市場の重要性や特性を理解してくれていますから、プロモーション費用での支援などを含めて、有形無形を問わず強いサポートがあると感じます。意思決定も速く、すぐに日本でのビジネスに反映できる。これは、私の想定以上のものでした。また、世界ナンバーワンの実績をもとにした調達力の強みもあります。AQW-DJ6000も、ハイアールグループならではの調達力を生かしたものですし、今年の商品では、グローバルで使用している部品を共有するといったことも進展しますから、日本における競争力も高まると考えています。また、洗濯機や冷蔵庫のグローバルモデルを、AQUAブランドとして日本市場向けに投入することも増えていくことになります」

―― この1年で最も大変だったことは何ですか?

中川氏 「とにかく走り続けてきた1年でしたから、苦しいことはあっても、それを苦しいと感じる時間がなかったほどですよ。ドラム式洗濯乾燥機のAQW-DJ6000を、中国・青島(チンタオ)で生産しましたが、この生産を決定したのは2011年10月。品質の技術者を派遣して、なんとか初めて日本向けにドラム式洗濯乾燥機を生産することができました。これも苦労した部分とはいえますが、いまから思えば、当時は苦労を感じている暇がなかったですね。

振り返ってみると、この1年で、ハイアール アクア セールスの事業において、大きな幹の部分が育ってきたかなという感じはします。『Life is Precious.』というブランドメッセージに込めた、『なにげない毎日の一部となるブランドに育てたい』という当社が目指す方向性が、市場に定着しはじめてきたのではないでしょうか。そして社内には、スピード感をもって事業を進めるという体質が定着した。少数精鋭で営業展開していくというのもハイアール アクア セールスの特徴です。我々はまだまだベンチャー企業ですからね」

後編に続く