"古典的な技法"と"新たな技術"
本作でも極力CGは使わず、全編がストップモーション・アニメーションで撮影されている。なかでも製作チームが注力したのは、キャラクターの微妙な表情の変化だった。手足のような体の動作に比べて、"顔"は実に複雑な動きを見せるもの。笑顔を1つとっても、そこに至るまでは徐々に口角を上げながら目を細めていくような"顔面パーツ"が複数必要になるのだ。
そこで同作では、映画制作において初となる「3Dカラープリンター」を導入した。製作現場では、(1) 手作業で基本となるモデルを作る、(2) 高解像度の立体スキャナーでモデルをデータ化し、CGモデルに変換、(3) 2Dアニメーターが表情の調整を手描きで指示、(4) その指示をCGモデルに反映、(5) 最後にそのCGモデルを3Dプリンターで立体物として出力、といった工程により、映画全体で3万1,000個以上の顔面パーツが作られたという。主人公のノーマンに関しては約8,800個ものパーツが作られ、実に150万通りの表情が可能となった。
ちなみに、『コララインとボタンの魔女』では20万通り、ストップモーション・アニメの代表作『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』では15通りだったというから、その違いは歴然である。
さらに、この3Dカラープリンターでは、人物の"肌ツヤ"や"酒焼け"といった微妙な色合いを表現することも可能にした。例えば、ノーマンの大きく突き出した耳には、血管が透けて見えるような赤みまで表現されているというから驚きだ。人物以外にも美味しそうな食べ物の質感など、随所でディテールアップに貢献しているのがわかる。
アナログならではの没入感
CGアニメとの最大の違いは、実写映画と同じ手法を使い、実物へ光を当てて空気を通して撮影している点だ。「確実にそこに存在している」というリアリティが、物語で描かれる感情をダイレクトに伝えてくれる。また本作では、最新技術を取り入れることで、"作り物"であることをほとんど感じさせない仕上がりとなっているのだ。
ストップモーション・アニメの新たな歴史を作ったともいえる『パラノーマン ブライス・ホローの謎』は本日3月29日公開。あなたもぜひ劇場でその”リアリティ”を体験してみてはいかがだろうか。
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