KDDIは3月28日、Androidスマートフォン・タブレット向けの無線LAN接続ツール「au Wi-Fi接続ツール」をバージョンアップし、「エリア品質情報送信機能」を追加する。すでに通常の携帯電話(フィーチャーフォン)向けに同様の機能を盛り込んでいたが、スマートフォン向けに同機能を提供することで、電波品質の改善を図っていきたい考え。

KDDIはこれまでも、フィーチャーフォン向けに「エリア品質情報送信」という機能を搭載していた。これは、電話の切断やメール送受信の失敗などの際に情報を送信するという機能で、KDDI側はエリア改善のための情報として利用してきた。スマートフォン向けに同じような機能はなかったが、今回、au Wi-Fi接続ツールに同様の機能を盛り込み、通信失敗時などの情報を集めて、エリア品質の向上に繋げていく計画だ。

au Wi-Fi接続ツールは、公衆無線LANサービス「au Wi-Fi SPOT」に自動接続するなどの機能を備えており、Androidスマートフォンやタブレットのバックグラウンドで常時動作している。ここに電波品質チェック機能を搭載することで、ユーザーが特別な操作をしなくても情報を送信できるようにした。

新機能のエリア品質情報送信機能は、「au Wi-Fi 接続ツール」アプリの一部機能として提供される。設定方法は同社webサイトで確認できる

送信される情報は、電波の状況、通信年月日時刻、GPSと基地局による位置情報、基地局情報、機種名、SIM識別子に加え、音声通話、キャリアメールアプリ、標準ブラウザ、YouTubeアプリからは、通信の状態も送信する。また、無線LANに接続している状態でも同じ情報が送信され、その場合は無線LANのスポット情報も送信される。

メールやブラウザ、YouTubeからの情報では、メール本文やURL、アクセスした動画といったプライバシー情報は送信されず、送受信したデータ量と送受信に要した通信時間を計測して、通信速度を算出するために利用する。特別な機能を利用しているわけではなく、Androidの標準機能を使って実現しているという。

これまでもエリア品質の改善には、ネットワーク側からの監視、実際に現地に赴いての検証、フィーチャーフォンからのエリア品質情報が活用されていたが、ネットワーク側では端末が圏外の場合には情報が得られず、現地訪問にも限界があった。また、スマートフォンが増加するに従って、その情報も活用する必要性が生じていた。

端末内で動作するアプリの機能として提供することで、圏外の情報でも送信できるようになり、よりきめ細かいエリア品質の情報が得られるようになる。例えば音声通話では、通話中の音声品質はネットワーク側で監視できるが、圏外で発着信できない場合の情報は得られないため、今回の品質チェッカーによって、そうした圏外の場所の情報も取得できるようになる。

さらに、「どのぐらいのデータ量をどの程度の時間で送受信したか」という通信速度情報も取得することで、実際にユーザーが行った通信がどの程度の品質で成功したか、または失敗したか、といったことも把握できる。

情報を取得するのは、対応するアプリを起動したタイミングで、音声通話や標準ブラウザ、YouTube、キャリアメールアプリ利用する際に情報を取得し、1日1回のタイミングでKDDI側に情報を送信する。これらのアプリを使った場合に必ず取得するわけではなく、1日に取得する情報の量は決まっているそうだ。情報取得の回数を制限することで、端末の電池への影響を最小限にとどめており、テストでは電池持ちにはほとんど影響がなかったという。

同社によれば、これまでエリア品質を改善した全体のうち1割程度で、フィーチャーフォンのエリア品質情報送信機能から得られた情報が生かされたという。スマートフォン向けでも同様の成果を期待している。特に、フィーチャーフォンでは計測できなかったLTEネットワークの品質改善に繋げたい考えだ。

また、これまでは実地でテストが必要だった無線LANの品質情報が得られる点も重視。特にau Wi-Fi SPOTの品質情報を得て、スポットの品質改善を目指していく。現時点でも実地での品質テストを行っているが、スポット数も多く、さまざまな時間帯でのテストができるわけでもないので、今回のツールでの品質情報に期待する。

すでに1年ほど前から準備を進めていたということで、特にLTEサービスのスタートに合わせて、契約時にエリア品質改善のための情報を取得する場合があることを明記し、同意を求めてきたという。この同意に加えて、「個別かつ明確な同意」を得るために、au Wi-Fi接続ツールをバージョンアップすると、Android端末の通知領域に通知が行われるようにした。そこからau Wi-Fi接続ツールを起動すると、改めて情報を取得するための同意画面が表示されるので、そこからエリア品質のチェック機能をオフにすることもできる。その後も、いつでも同機能のオン・オフは可能。

今回のエリア品質のチェック機能は、auスマートフォン向けのアプリであるau Wi-Fi接続ツールに搭載されており、auネットワークの情報を取得するだけで、あくまで自社のエリア改善のために使うものとしている。

同社では、これまでも電波の状況を報告できる「電波サポート24」アプリをスマートフォン向けに提供しているが、この場合はユーザーの操作が必要だった。今回の機能で簡単に情報を送信できるようにして、さらに情報が収集されることを期待する。従来のネットワーク監視、実地でのテスト、電波サポート24に加え、このスマートフォン向けのエリア品質情報送信機能によって、3G、LTE、無線LANといったネットワークのさらなる品質向上を目指していく考えだ。