学校教育に適した現場ベースで中立的な内容

さらにドットコムマスターは、学生たちに対して"実践"と紐付いた講義を行うのに最適な教材なのも特徴だ。ドットコムマスターの中でもシングルスターは、OCNのコールセンターに問い合わせが多い内容を問題のヒントとして構成されている。「インターネットにつながらない」「メールが送受信できない」など、どのような問い合わせが多いのか確認し、毎日のように入ってくる生の声を参考にナレッジを構築。このシングルスターを中心として、上位資格である「ダブルスター」や「トリプルスター」、より基礎的な内容の「ベーシック」や「メイト」が生み出された。

NTTコミュニケーションズ 先端IPアーキテクチャセンタ 所長の山下達也氏

NTTコミュニケーションズ 先端IPアーキテクチャセンタ 所長の山下達也氏は「学術的な部分に関する資格は他にも存在するので、ドットコムマスターでは現場に根付いた実用性の高い問題を採用しています」と語る。こうした部分が学生の経験不足を補うのだ。

また、ドットコムマスターはベンダーフリーなのも大きな強みといえる。「OCNがプロバイダとして急成長した時期には、コールセンターにも数多くの問い合わせが寄せられるようになりました。その中で、安全かつ快適なインターネット利用サポートするためには、たとえばシスコシステムズやマイクロソフト、オラクルなどの資格だけ取得していても対応できないスキルが求められてきます」と語る山下氏。

ドットコムマスターは問題作りに際して、常に中立的・客観的な見方を意識している。こうした特定のベンダーに偏らない内容は、学生たちが共通概念の認識や言葉の正しい定義など学ぶのに適しているのである。

さらに、テキストや問題の更新頻度も特徴といえるだろう。山下氏は「インターネットの世界は常に進化し続けています。ICTに関する国家資格もあるのですが、どうしても更新頻度が遅いことに加えて、内容も知識ベースで実践寄りの問題が少ない状況です。しかしドットコムマスターはあくまでも現場の情報を基本に、トラブル時や運用に必要なものを入れながら、必ず1年に1回は問題の内容やテキストの見直しを実施しています」と語る。

たとえば新しいセキュリティ関連の話題が出た場合、半年後くらいには問題として採り入れるといった具合だ。

ただし「弊社のドットコムマスターだけですべてをカバーできるとは思っていません。弊社でも国家資格や各種ベンダーが提供する資格を取得している社員は多いですし、大学や専門学校などへ紹介する際も、あくまで他の資格とは排他関係ではなく補完関係にあり、一緒に上手く組み入れてシラバスを作っていただければとご案内しております」とも語る山下氏。社員や学生に必要なスキルを見定め、ドットコムマスターを含む複数の資格を組み合わせることが、効率の良いICTスキルの向上につながるのである。

時代背景に即してドットコムマスターがリニューアル

菅原氏に今後の取り組みを伺ったところ「最近は学校からのニーズが高く、同時に弊社でも学校と企業をつなぐという点で非常に重要だと考えています。そこで学校教育に組み込みやすいよう、裾野を広げるような取り組みに注力していく予定です」と語ってくれた。

こうした背景から、NTTコミュニケーションズでは今までベーシック/シングルスター/ダブルスター/トリプルスターの4段階となっていた認定資格レベルを、2013年10月より2段階に再編。初心者もより受検しやすい内容へリニューアルすると発表した。

リニューアル後は上位のシングルスター/ダブルスター/トリプルスターを集約し、個人や企業のICT活用をサポートできる中級・上級レベルの資格として「ドットコムマスター アドバンス(仮称)」を新設。初級レベルの資格「ドットコムマスター ベーシック」は継続し、2段階の認定資格レベルになるという。

「従来のドットコムマスターには、ICTに携わっている現場の技術が数多く蓄積されているので、そうした部分は残していきたいですね。ただし、学校教育で使いやすいよう裾野を広げたり、検定の体系を整えたりといった取り組みも行っていく予定です」と菅原氏。

全体の制度設計はこれからになるそうだが、裾野を広げつつ必要な人には専門的な知識も得られたり、受検者が現在のスキルレベルを把握できたりするような形式、学校向けの評価制度なども考慮しながら進めているという。

最後に山下氏は「生徒だけでなく、先生など教える側の方々に使いやすい検定であることも重要です。今回のリニューアルではこうした部分を意識して、指導要綱の変化や先生たちの意見を採り入れながら、できるだけ教育現場で使いやすい検定を目指していきたいですね」と語ってくれた。

今後、学校におけるICT教育がどのように変わっていくか見守っていきたい。