富士フイルムは2月5日、糖の吸収抑制効果があることで知られるサラシア属植物から抽出したエキスをヒトが摂取すると、T細胞の中でも、新たな外敵から体を防御するナイーブ細胞の数が非摂取時に比べて顕著に増加することなどを確認したと発表した。

同成果は、同社の研究チームならびに東京医科歯科大学の廣川勝昱 名誉教授らによるもので、詳細は2013年5月24日から開催される「第67回 日本栄養・食糧学会大会」にて発表される予定だという。

サラシアは、インドやスリランカなど南アジア地域に自生するデチンムル科のサラシア属植物の総称で、インドの伝承医学(アーユルヴェーダ)では初期の糖尿病治療として用いられてきたほか、最近では、サラシア属植物抽出エキスに含まれるサラシノール、コタラノールなどが、腸内でオリゴ糖の分解を促進する酵素(α-グルコシダーゼ)の活性を阻害することが確認され、サラシア属植物抽出エキスの摂取により小腸での糖の吸収が抑制され、血糖値上昇を抑える効果があることが明らかになっている。

同社のこれまでの研究で、サラシア属植物抽出エキスが腸内細菌叢変化を通じて免疫調整に作用することが明らかになっており、インフルエンザ感染時の症状が軽減することなどが動物実験を通して実証されている。また、ヒトにおいては、サラシア属植物抽出エキスを摂取することで、腸内のpH低下やアンモニア・腐敗産物減少が起こり、腸内環境が改善されることを証明してきたほか、腸内細菌叢改善効果が得られることも確認されている。

今回の研究では、サラシア属植物抽出エキスが、ヒトにおいても腸内細菌叢変化を通じて、免疫力向上作用を有しているのではないかとの考えのもと、試験が実施された。

具体的な試験方法は、健常な30歳以上60歳未満の男性の中から、日ごろ疲労感があり疲れがとれにくいと感じている10名を対象とし、サラシア属植物抽出エキスを1日に240mg、4週間続けて摂取。摂取前と摂取開始4週間後に被験者から採血・糞便の採取などを行い、腸内細菌叢をT-RFLP法で測定したほか、フローサイトメトリー法でナイーブT細胞など血液中のリンパ球の計測を、細胞培養によってT細胞増殖能の測定を実施した。

この結果、大腸内で善玉菌が増えて悪玉菌が減少していることが確認されたほか、ナイーブT細胞の増加が見られ、摂取前に対して摂取後で平均24%増加することが判明した。また、T細胞増殖能も平均8%、T細胞増殖係数も平均11%増加することが判明。これらの成果から、外敵に対する防御能力が向上することが確認されたという。

サラシア属植物抽出エキスを摂取したヒト血液中のナイーブT細胞数の変化。サラシア属植物抽出エキスを4週間摂取した結果、平均24%の増加が確認された

なお同社では、今回、ヒトにおいてもサラシア属植物抽出エキスの摂取が免疫力の向上につながることが確認できたことから、今後サラシア属植物の新たな応用の検討を進めていくとともに、さらなる機能の解明を進めていく予定としている。

サラシア属植物摂取による腸内細菌叢の変化

サラシア属植物抽出エキスの摂取によるT細胞増殖能ならびにT細胞増殖係数の変化