既報の通り、東京エレクトロンデバイス(TED)は1月22日、米Pure Storageと販売代理店契約を結び、同社が提供する「Pure Storage Flash Array」の国内販売を開始する発表を行った。同日、これに関する記者説明会がTED新宿オフィスにて開催されたので、この内容を元にもう少し詳細を説明したい。

先の記事にもあるとおり、Pure StorageはMLC NAND型フラッシュメモリを利用したオールフラッシュストレージという事になっているが、正確に言えばコンシューマ向けのMLC NAND型フラッシュメモリ採用SSDを利用したストレージである。製品の構成(Photo01)もシンプルで、コントローラは純粋にコントローラ機能だけであり、シェルフにSSDが格納されている形である。

Photo01:左がコントローラ。2つあるのはActive-Activeの冗長構成をとるためのもので、それが不要なら1つでも可能。右側がSSDを格納したシェルフである

これに関してScott Dietzen氏(Photo02)は「もちろんNAND型フラッシュメモリのチップそのものを使うという事も検討した。ただフラッシュメモリは1X/1Y/1Znm世代になると、ECCをどう持つかというのが非常に重要になる。ここをうまくハンドリングしてゆくのは難しい。我々は通常のSSDを使って、フラッシュメモリチップそのものを使う場合より高い性能を出せる事が確認できたので、通常のSSDをそのまま使うことにした」と説明した。実際、後で確認してみたところ、同社の技術そのものは特定のSSDには依存しないので、純粋に技術的にはどこのメーカーのSSDを持ってきても動くし、複数メーカーの混在も技術的には可能であるとしている。ただ実際には信頼性や性能、コストなどに関して「市場にあるすべてのSSDを試した」(同社Director, Technology & StrategyのMichael Cornwell氏)結果として、現在はSamsung ElectronicsのSSDを選んで利用しているそうだ。この結果として、ECCの処理といったローレベルの制御はSSD内蔵のコントローラに任せ、同社はもっと上位の制御に専念するという形を取ったわけだ。

Photo02:Pure Storage CEOのScott Dietzen氏。前職はBEA SystemsでWebLogicを担当しており、日本も担当範囲だったとか

この結果として得られるのは、極めて安価なソリューションである。いわゆるエンタープライズSSDは、信頼性を確保するために色々な苦労をしており、結果容量密度が多少下がっても信頼性の高いMLC NAND型フラッシュメモリを使うことが多く、これが容量あたりの価格を押し上げることになっている。ところがPure Storageでは非常に安価なSSDを利用できる上、後述する圧縮技術を利用することで、平均5倍程度の圧縮率を実現しており、この結果として1000円/GB程度の容量単価を実現できたとしている。ちなみにこの容量単価は圧縮後の数字であり、圧縮前の容量単価であればこの5倍ということになる。一応同社の製品はオープンプライスではあるが、これに容量を掛ければ大雑把な金額が見えてくる訳だ。実際、発表会の中では実際の結果として、Virtual Desktopを利用するケースでの効率の高さ(Photo03,04)がアピールされた。

Photo03:これはVMWare上でWindows Server 2008 R2を40個を稼動させ、各々のVMに40GBずつ割り当てた場合での例。見かけ上は40GB×40=1600GB(1.72TB)なのが、Pure Storage上の実際のAllocationは1.48GB、実使用量は1.15GBに抑えられている

Photo04:こちらはRHEL 6.2の例。各VMは16GBずつ割り当てられているが、実際のAllocationは2.04GB、実使用量は1.58GB

加えて、同社の製品の特徴としては高い性能が挙げられる。カタログスペックではRead:Writeが80:20の4KB Blockの場合で20万IOPS、Write 100%の4KB Blockの場合で10万IOPSということになっているが、実際にIOMeterを使い、この値が実現できていることが発表会でも示されている(Photo05,06)。

Photo05:こちらは実際に動かしたのではなく、ベンチマークの様子を録画したMovieが示された。これはRead/Write Mixのケースで、カタログスペックを超える21万8500IOPSが実現されている

Photo06:同様にこちらはWrite 100%の結果であるが、10万6900IOPSが実現されている

どうやってこれを実現したか、の詳細に関しては今回の発表会では説明が無かったが、これこそが同社の製品の要の部分なので企業秘密という事なのであろう。ただ特徴として、まずデータの圧縮/伸長は1ms以内に行われるという説明があった。圧縮に関しては、Compression/De-Duplication/Pattern Removal/Thin Provisioningの4つを動的に行う事になるが、これが1ms以内で完了するが故に、高い性能と高い容量効率を実現できるという説明であった。またこうしたStorageは、通常だとRAID環境で利用するのが一般的であるが、Dietzen氏は「従来型のRAIDは、HDDを前提にしたものだから、All Flashの構成には必ずしも最適ではない」としており、その代わりに同社はRAID-3Dと呼ばれる新しいRAID構成をこのFA-300シリーズで搭載した。このRAID-3Dに関する説明も今回は行われていないが、同社はYouTubeにこのRAID-3Dの効果を紹介したビデオなどをすでに公開済である。またSnapShotとかオンラインでの容量拡張といった、エンタープライズマーケットで必要とされる機能をすべて搭載しているとした。

性能が高く、容量が大きく、価格が安いというのはそれだけで十分な動機づけになるが、加えてインストールが楽な点も特徴として示していた。Dietzen氏曰く「通常新しいストレージをインストールする場合、最初の初期設定や環境設定のために、ストレージそのものとは別に、48~72時間のオンサイトコンサルテーションが自動的にパッケージングされるが、Pure Storageではこうしたものは必要ない」そうである。実際、TEDで販売を担当される長尾圭輔氏(Photo07)によれば、米国ではPure Storageの営業マンが、客先にFA-300シリーズを持参し、自分でインストールを済ませてしまった事例すらあるそうだ。こうした部分も、同社の製品の特徴としている。

TEDはアジア地区で最初のPure Storageの代理店ということになっている。これに関し、同社の上善良直氏(Photo08)氏は、様々なフラッシュメモリベースの製品があるが、Pure Storageの製品はPrimary Storage向けに利用できる製品と判断した、としており、これを利用して本格的にこの分野に参入を図りたいとしている。当初は直販がメインとの話(Photo09)で、またメンテナンスも同社が一括して行うということであった(Photo10)。

Photo07:東京エレクトロン デバイス CN事業統括本部 CNプロダクト本部 ビジネスデベロップメント部の長尾圭輔氏

Photo08:東京エレクトロンデバイス CN事業統括本部 CNプロダクト本部 ビジネスデベロップメント部 部長の上善良直氏

Photo09:まずは直販でマーケットの掘り起こしを行い、ここで加速が付いたら2次代理店を経由しての幅広い販売体制を構築したい、との事だった

Photo10:当面はやはりTEDが一括してメンテナンスを行う事になるそうだ

最後に余談を1つ。Cornwell氏に「今はSATA SSDを使われているが、今後は?」と伺ったところ、SASを検討しているとの事。SATA Expressの場合は、PCI Expressベースになってしまうので、同社が必要とする数十台~数百台のSSDを一気に繋ぐという用途に耐えられるスケーラビリティがSATA Expressには無いと判断したそうで、なので12G SASの方が現実的という事だそうだ。