既報の通りNVIDIAは2013 International CES開幕前々日にあたる6日(米太平洋時)、米ラスベガスでモバイル機器向けプロセッサの新製品「Tegra 4」を発表した。搭載製品の発売時期等の詳細は現在のところ明らかにされていない。
現行の「Tegra 3」に続く同社の最新プロセッサで、高性能な4つのメインコアと、コンパニオンコアと呼ばれる1つの省電力コアから構成される点は変わらないものの、コアの世代がARM Cortex-A9からCortex-A15に刷新され、パフォーマンスが大きく向上した。また、Tegra 3では12個だったグラフィックコアをTegra 4では6倍の72個とし、グラフィック性能も大幅な強化が図られている。
発表会で同社CEOのJen-Hsun Huang氏は、新製品の性能の指標として、Webページをレンダリングする時間をTegra 4搭載機と「Nexus 10」とで比較するデモを紹介した。Nexus 10で25の代表的なWebページを連続でレンダリングするのに50秒かかったのに対し、Tegra 4を搭載するAndroidタブレットの試作機で同じテストを行ったところ27秒で完了した。Nexus 10はSamsungのExynos 5250(Cortex-A15 1.7GHzのデュアルコア)を搭載しており、Androidタブレットとしては現行のハイエンド製品だが、それと比べても約85%のパフォーマンス向上となっており、最新世代のコアをクアッド搭載する威力を示している。
また、現在のモバイル機器で最も重要な機能のひとつとなっているのがカメラだが、Tegra 4のパワーを利用してカメラ機能をアップする仕組みとして「Computational Photography Architecture」を紹介した。最近のカメラでは、露出を変えて2枚の画像を連続撮影し、それらを合成することで白飛びや黒つぶれを防ぐHDR機能を備えているものも多いが、被写体に動きがある場合、2コマ間の時間差のせいで適切に合成処理が行えないことがある。
これは、センサーが撮影した画像を専用の画像信号プロセッサで処理しメモリーに格納する、という一連の手続きを2回行った後にCPUが合成処理を行っているためで、iPhone 5でHDR撮影を行った場合約2秒の時間がかかっていた。Tegra 4で利用できるComputational Photography Architectureは、画像信号プロセッサ、GPU、CPUが並列してセンサーからの画像を処理するもので、HDR撮影に必要な時間を10分の1の0.2秒に短縮できるという。これにより、動く被写体での撮影ミスが防げるほか、動画撮影時に対してもHDRを適用できるようになる。
ソフトウェアモデム最新製品の「Icera 500」
競合であるQualcommのSnapdragonなどは、CPUに相当するアプリケーションプロセッサと、3GやLTEの信号を処理するモデム機能を統合した「1チップソリューション」であるのに対し、Tegraシリーズはモデム機能を内蔵していないため、スマートフォンなどの製品には別途モデムが必要となる。この点はTegra 4でも変わっていないが、NVIDIAでは同社モデムチップIceraシリーズの最新製品「Icera 500」を今回あわせて発表している。
Iceraシリーズは2011年にNVIDIAが買収したプロセッサ開発会社・英Iceraの製品で、ソフトウェアを変更するだけで複数の通信方式に対応するSDR(Software Defined Radio:ソフトウェア無線)チップなのが特徴。LTEなどの新しい通信方式への対応のためモデムチップは大型化の傾向にあるが、Icera 500はSDRのため通常の2G/3G/LTE対応モデムに比べ40%の小型化を図ることが可能だという。
現行のIceraシリーズに対するIcera 500の特徴について、NVIDIAでは「4倍の処理能力」と表現するにとどめているが、既にリリースされているIcera 410がLTE端末カテゴリ2対応のチップだったことから、Icera 500は現在主流の端末カテゴリ3以上に対応しているものと考えられる。
(記事提供: AndroWire編集部)