―― 他社のレコーダーでは、Twonky Beamでつながったのに再生できない番組がある、という声を耳にします。

満生氏「弊社製品でトランスコード方式を採用した最大の理由は、録画した番組によって再生できるかどうかが異なると、ユーザに受け入れられないと考えたためです。モバイル用に録画した番組だけ再生できるという方式では、使い勝手がよくないだろう……と。AVCは再生できるがDRモードはダメ、ということではなかなかご理解いただけないでしょう。また、BDレコーダーの場合は、ディスクやビデオカメラからの取り込み、ネットワーク録画、プレイリストを含めた様々な編集など、モバイル用ファイルを常に二重で作成できるわけではないという商品の特性もありますし。開発工数とコストはかかりましたが、すべての番組を同一条件でトランスコードすることを選択したのです」

―― 録画番組を再生するときの流れですが、iOS版RECOPLAから再生を指示すると、Twonky Beamにアプリが切り替わりますよね。なぜこのような方式にしたのでしょうか?

下倉氏「Twonky BeamありきでiOS版対応を進めていたわけではないからです。ソニーとしては、ユーザーの利便性を考え、対応機種を増やす活動の中でiOS機器を含めてオープンに対応していくつもりです。結果として、今回はパケットビデオ様との連携で実現できたわけですが、今後に関しても、Twonky Beamに限定することなくオープンに検討を進めていきたいですね」

RECOPLAで再生機器に「Twonky Beam」を指定すると、以降番組の再生を開始すると処理はTwonky Beamに切り替わる

―― iOS版RECOPLAがアップデートで「もくじでジャンプ」に対応しましたね。とても便利ですが、HDMI出力時にしか利用できません。タブレットで「お手もと再生」するときに使えれば、ユーザは歓迎すると思います。

下倉氏「現時点では難しいですね。HDMI出力であれば、映像の再生位置を細かく指定できますが、プレイヤーアプリでそれを実現しようとすると、いくつかの課題が出てきます。ただし、そういったご要望があることは認識しています。iOS端末で可能かどうかは別として、少なくとも弊社製Android端末では、将来的に検討していきたいと考えています」

満生氏「iOSアプリで『お手もと再生』する場合、Twonky Beamに処理を引き渡す形で再生を行いますから、その根本部分を変えないことには『もくじでジャンプ』に対応することは難しいですね。ただ、今後なんらかの解決策を検討していきたいとは思います」

―― 現在、RECOPLAはタブレット端末のみですよね。スマートフォンへの対応は検討されていますか?

下倉氏「スマートフォン対応へのご要望が多いことは認識していまして、今後の課題と考えております。ただ、実現する上でタブレット版のUI(ユーザー・インタフェース)そのままでは操作上厳しいので、どのようなUIを実現するのかを含め、検討していく予定です。もちろん、その時にはiPhoneを含めて検討したいと考えております」

最新版のRECOPLAは、ついにiPad版でも「もくじでジャンプ」に対応。番組構成はもちろん、CMに登場するタレントの名前まで確認できる

―― 動画の持ち出し機能への対応はいかがですか?

下倉氏「現在、録画した番組をタブレットへコピーして持ち出し可能にする『ワイヤレスお出かけ転送』に対応しているのは、『Xperia Tablet』と『Sony Tablet』の2機種です。今すぐにでも持ち出し機能を利用されたい場合には、ぜひお買い求めいただきたいと思います」

満生氏「持ち出し機能の実装自体は、仕様がオープンなDLNA/DTCP-IPを利用していますから、他社製端末でも可能性がないわけではありません」

―― そういえば、ソニー製ビデオレコーダーは「ダウンロードムーブ」(※)に対応していますよね?

※ 一般的なDTCP-IPムーブは、録画番組を保存した機器から外部機器へアップロードする形だが、ダウンロードムーブでは外部機器側で録画番組を選び、ムーブを指示できる。

満生氏「弊社製レコーダーは、2012年秋モデルからダウンロードムーブに対応しています。『ワイヤレスお出かけ転送』ではこの機能を利用しています」

―― アプリ単独でDTCP-IPの実装が可能になりましたが、トランスコードの指示などレコーダーメーカーの協力なしにはスムーズな連携が難しい機能が存在します。

満生氏「残念ながら、DTCP-IPに対応したからといって、互換性が保証されるわけではありません。異メーカー間の製品との組み合わせを考えれば、つながるけれどスムーズに再生できない、途中で止まるといったことはありえます。メーカー間の互換性に関する情報も乏しく、ユーザーの皆さんが混乱されることは実感しています。情報を開示して対象機種を増やすこと自体は歓迎ですが、増加する検証作業を横目で見つつ、どのようにユーザに発信していくかは今後の課題になると思います」

下倉氏「アプリの場合、まず出してから不具合の解消を進めていく、というやり方があります。一方、我々のようなハードウェアメーカーの場合、製品を発売してしまうと仕様の変更は困難です。サードパーティーとは、オープンな姿勢で連携することを基本としつつ、バランスをとって進めていくことになるでしょう」

―― 「レコーダーに録画した番組を見る」という行為が、スマートフォンやタブレットとの連携により変わりつつあります。その流れを受け、今後ソニーのレコーダーや「RECOPLA」はどのように変わっていくのでしょうか?

下倉氏「まだ大まかな話しかできませんが、『見る』ことにフォーカスすることは確かです。番組をバンバン録画することが当たり前の時代になりましたが、ユーザの視聴時間そのものは変わりません。ですから、『もくじでジャンプ』であるとか、タブレットなどとの連携であるとか、効率よく快適に見るための機能が重要になってくるわけです。『RECOPLA』についても、そのような方向に進化していけたら、という思いはあります」

―― 一方、機器を選ばずいつ・どこでも視聴できるようになると、レコーダーに求められる機能が「ただ録画してDLNAで配信するだけ」になってしまう可能性があります。その辺りの機能の差別化は、どうお考えですか?

下倉氏「ソニーという企業の成り立ちからして、映像と音のクオリティを追求する姿勢は変わりません。そこに、先ほどお話したような『見る』ことに関連した機能をどう盛り込んでいくのか、ということになるかとは思います」

満生氏「使い勝手も重要だと考えており、ソニー製品同士の組合せでは、特にこの辺に気をつかっています。たとえば今年のモデルでは、指定した時間に録画番組を自動転送できる『自動おでかけタイマー』アプリを『Xperia』『Sony Tablet』向けにリリースしました。Webアプリ『Gガイド テレビ王国CHAN-TORU』と組み合わせて外出先から『自動転送予約』といった使い方も可能です。また、おまかせチャプターをモバイル機器側でも使えるのも、ソニー製品同士ならではの機能です。番組内のさまざまな情報にすばやくアクセスできる『もくじでジャンプ』についても、もっとご利用いただきたいですね」

RECOPLAには、最大4台のソニー製レコーダーを登録可能。すべての番組を1台のタブレットにまとめて表示できる

「もくじでジャンプ」の頭出し再生は、HDMI接続したテレビに対してのみ操作可能。現在のところ、タブレットで「お手もと再生」するときには利用できない

<表>対応機能一覧
ソニー製タブレット(XperiaTM Tablet S/Sony TabletS/P) 他社製のAnroid搭載タブレット iPad(iOS5.1以上、iPad2以降)
Android OS 4.0未満 Android OS 4.0 Android OS 4.1/4.2
ストリーミング視聴(※1) ●(録画番組のみ)
インストールが必要なアプリケーション RECOPLA RECOPLA + Twonky Beam Twonky Beam(※2)のみ RECOPLA + Twonky Beam
リモート録画予約 ●(Android OS 2.2以上でも利用可) ●(iOS4.3以上でも利用可)
インストールが必要なアプリケーション RECOPLA
ワイヤレスおでかけ転送 ●(※3)
インストールが必要なアプリケーション RECOPLA
リモコン機能(もくじでジャンプ操作など) ●(※4)
インストールが必要なアプリケーション RECOPLA
※1:「BDZ-EW2000/EW1000/EW500/E500」は、放送ダウンロードによるソフトウェアアップデートにて対応(2013年春実施予定)。「BDZ-E500」は録画番組の視聴のみ対応。/※2:ブルーレイディスクレコーダー本体の電源を起動しておく必要がある。/※3:「Sony Tablet S」シリーズ、「P」シリーズは、本体のシステムソフトウェアアップデートにて対応(2012年12月実施予定)。/※4:「Sony Tablet P」シリーズは非対応。
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