PLフィルターの効果をチェック

色味を調整することで、ある程度は見栄えのよい写真が撮影できるが、どうしても葉や空が白っぽくなる傾向にある。そこで、風景写真でよく使われるPLフィルターも使用してみた。

PLフィルターは偏光フィルターとも呼ばれ、水や葉っぱ、空気などで乱反射した光をコントロールするフィルターだ。風景写真では、葉っぱや空が白っぽく写る場合を本来の色に写したいときによく使用される。レンズの前面に取り付け、レンズに入ってくる光をコントロールするわけだ。

デジタル撮影に最適化されたケンコー・トキナー「PRO1 Digitalシリーズ」の「PRO1D WIDEBAND サーキュラーPL(W)」は広角レンズにも対応したPLフィルター。フィルター外周を黒く塗ったり、透過率の高いマルチコーティングを施しているため、内面反射などがほとんどない画質が特徴だ。リングが非常にスムーズに回るので扱いやすかった

ケンコー・トキナーが最高品質をうたう「Zetaシリーズ」の「Zeta EX サーキュラーPL」。従来のPLフィルターよりも約1EV明るいのが特徴だ。使ってみるとその差は明らかで、明るさが厳しい場所でもISO感度を上げずに撮影できる。非常に薄型で広角レンズでも問題なく使用可能だ

仕組みを簡単に言うと、反射した一部の光をPLフィルターはカットする。フィルターは回転し、回転によってどの光をカットするか自分で決められるのだ。通常、物体はさまざまな方向からの光を反射しているため、一部の光をカットしても被写体が真っ黒になることはない。(液晶モニタのように、一定の方向からのみ強い光を放っている場合は、PLフィルターの調整ですべての光がカットされ、黒くなる場合もある)

基本的には、順光(太陽を背にして撮影)で効果が大きくなり、逆光ではほとんど効果がない。風景撮影では太陽光、または空からの強い反射光をカットすることで、鮮やかな色合いで撮影できる。

PLフィルターを使用していないと、紅葉しているはずの葉が白っぽくなり、青空が水色っぽく写ってしまう(オリジナル画像を見る)

PLフィルターを使用すると、ほぼ見た目に近い色、風景本来の色で撮影できる。PLフィルターのリングを回転させ、最もイメージに近い光を撮影する(オリジナル画像を見る)

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PLフィルターは水面で反射する光も軽減できる。PLフィルターを回転させて空や紅葉の写り込みをカットすると、川底が写るのが分かるだろう(写真右)。闇雲に光をカットすればよいわけではなく、水面で紅葉が反射している光をカットしないほうが、きれいな写真になることもある(写真左)

PLフィルターをレンズに装着すると暗くなる点に注意

風景撮影では便利なPLフィルターだが、常には付けておかないほうがよい。PLフィルターを付けていると、(製品差もあるが)2~3EVほど暗くなるからだ。3EV暗い場合、絞り値とISO感度が同じならシャッター速度は1/8になってしまう。

■1枚目■PLフィルターを使わないで撮影した場合(オリジナル画像を見る)

次のサンプル写真は、マニュアル撮影モードでISO感度と絞り値、シャッター速度を固定してPLフィルターでどの程度暗くなるかを調べたものだ。1枚目がPLフィルターなしの状態、2枚目はケンコー・トキナーの「PRO1 Digital」シリーズ「ワイドバンド サーキュラーPL・ワイド」を使用したものだ。この製品はPLフィルターとしては高性能なものだが、それでもこれだけ暗くなる。

ちなみに3枚目は、同じくケンコー・トキナーの「Zeta EX」というPLフィルターを付けた場合で、この製品は一般的なPLフィルターより約1EV明るく撮影できる。掲載した写真だと大きな差は感じられないかもしれないが、実際に使ってみると1EVの差は大きかった。

■2枚目■ケンコー・トキナーの「PRO1 Digital」シリーズ「ワイドバンド サーキュラーPL・ワイド」を使用。PLフィルターを使うとこの程度まで暗くなる(オリジナル画像を見る)

■3枚目■1EV明るく撮影できるケンコー・トキナーのPLフィルター「Zeta EX」を使った場合(オリジナル画像を見る)

風景写真に限ったことではないが、少しでもノイズは減らしたいのでISO感度は上げたくない。しかも、風景写真ではできるだけ被写界深度を深くしたいシーンも多く、絞って撮影するケースが増える。そこでPLフィルターを使用すると、状況によってはシャッター速度が落ちて三脚が必要になってくるが、人が多いところなど三脚を使えない場所では手持ちで撮影するしかない。そんなことも考えると、少しでも明るいPLフィルターが有利なのだ。

ちなみに、同じ明るさで撮影できるよう絞り優先モードにした場合、PLフィルターを使わないとシャッタースピードは1/160秒、一般的なPLフィルターを使用すると1/30秒、先述のZeta EXでは1/60秒だった。

PLフィルターをEOS Mで使用した感想としては、カメラの液晶モニタでは効果が分かりにくかった。液晶モニタをファインダーにするカメラで共通することだが、液晶モニタで微妙な光の具合を見るにはある程度の慣れが必要だ。普段は光学ファインダーのカメラで撮影しているなら、身近な風景などを撮ってPLフィルターと液晶モニタに慣れてから、本番の撮影に出かけることをおすすめしたい。

クリックで拡大(640×427ドット)とスライドショー。各サンプルにはオリジナル画像(5,184×3,456ドット)も用意した

撮影モード:プログラムAE(F4.0・1/40秒)/感度:ISO100/WB:オート/レンズ:EF-M18-55 IS STM(18mm)(オリジナル画像を見る)

撮影モード:プログラムAE(F5.6・1/100秒)/感度:ISO1600/WB:オート/レンズ:EF-M18-55 IS STM(55mm)(オリジナル画像を見る)

撮影モード:シーンモード 風景(F5.6・1/60秒)/感度:ISO100/WB:オート/レンズ:EF-M18-55 IS STM(39mm) PLフィルター使用(オリジナル画像を見る)

撮影モード:シーンモード 風景(F6.3・1/80秒)/感度:ISO100/WB:オート/レンズ:EF-M18-55 IS STM(44mm) PLフィルター使用(オリジナル画像を見る)

撮影モード:シーンモード マクロ(F4.0・1/50秒)/感度:ISO100/WB:オート/レンズ:EF-M18-55 IS STM(18mm)(オリジナル画像を見る)

撮影モード:絞り優先AE(F5.6・1/40秒)/感度:ISO400/WB:オート/レンズ:EF-M18-55 IS STM(35mm)(オリジナル画像を見る)

撮影モード:絞り優先AE(F5.6・1/80秒)/感度:ISO100/WB:オート/レンズ:EF-M18-55 IS STM(35mm) PLフィルター使用(オリジナル画像を見る)

撮影モード:絞り優先AE(F5.6・1/25秒)/感度:ISO100/WB:オート/レンズ:EF-M18-55 IS STM(22mm)(オリジナル画像を見る)

撮影モード:絞り優先AE(F5.6・1/30秒)/感度:ISO100/WB:オート/レンズ:EF-M18-55 IS STM(55mm) PLフィルター使用(オリジナル画像を見る)

撮影モード:絞り優先AE(F5.6・1/25秒)/感度:ISO100/WB:オート/レンズ:EF-M18-55 IS STM(29mm)(オリジナル画像を見る)

撮影モード:絞り優先AE(F5.6・1/60秒)/感度:ISO100/WB:オート/レンズ:EF-M18-55 IS STM(55mm)(オリジナル画像を見る)

撮影モード:絞り優先AE(F4.5・1/80秒)/感度:ISO100/WB:オート/レンズ:EF-M18-55 IS STM(18mm)(オリジナル画像を見る)

撮影モード:絞り優先AE(F4.5・1/40秒)/感度:ISO100/WB:オート/レンズ:EF-M18-55 IS STM(18mm)(オリジナル画像を見る)

撮影モード:シーンモード 風景(F5.6・1/50秒)/感度:ISO320/WB:オート/レンズ:EF-M18-55 IS STM(39mm) PLフィルター使用(オリジナル画像を見る)