ダイソンのサイクロン掃除機やアイロボットのロボット掃除機など、実力やデザイン性の高さで昨今、日本市場で人気を博している欧米の家電メーカー。同様に、空気清浄機市場において、日本メーカーを脅かすほどの"黒船"とみられているメーカーがブルーエアだ。米国や中国で好調な売上を誇る同社の空気清浄機。日本ではまだ知名度が低いが、性能の高さと高級感ある洗練されたデザインで着実に売上を伸ばしつつある。このほど来日した、同社創業者でCEOのBengt Rittri(ベント・リトリ)氏に、日本市場における今後の展開や意気込みを聞いた。

ブルーエアが世界で支持される理由とは?

―― 米国や中国で売上が好調など、世界的に評価の高いブルーエアの製品ですが、支持されるいちばんの理由はどの点にあると考えていますか?

ベント・リトリ氏(以下、リトリ氏)「私どもブルーエア社は、常にキレイな空気を吸えることが人権のひとつと考えています。空気中にはホコリやウイルスといった有害なものが多分に含まれていて、寿命を縮める要因となり得ることもあります。しかし、実際に私が空気清浄機を買おうと検討した際、容量や性能で納得できる商品がなかなかありませんでした。そこで、「多くの方にクリーンな空気を吸ってもらいたい」という思いで私はこの会社を創設したわけですが、まずこだわったのは、広範囲な部屋でも素早くかつ効率よく浄化できるということ。また、それと同時に、静かでデザインも優れたものであるべきということでした」

ブルーエアの創業者でありCEOを務めるBengt Rittri氏

リトリ氏「その結果、米国で大きな成功を収める商品を作ることができ、他の国からも販売したいという引き合いがあり、短期間で50カ国の販売拡大に成功しました。しかし私どもの理念は、『世界の空気をキレイにしたい』という思いです。売上や利益を考える以前に、空気の浄化に特化し、性能の高さに徹底的に着目して開発した商品が、結果として受け入れられているのだと思っています」

―― 世界市場では近年、中国市場の売上が毎年2倍のペースで伸びているそうですが、日本空気清浄機市場についてはどのような感触をお持ちですか?

リトリ氏「日本は世界の中でも空気清浄機の非常に大きな市場です。私どもが日本市場に参入したのは、日本の方々にもぜひクリーンな空気を吸っていただきたいという創業時からの思いと基本的には同じです。ブルーエア社は空気清浄機だけを取り扱っている空気清浄機専業のメーカーです。一方、日本の空気清浄機市場を見た場合、加湿機能を兼ね備えた空気清浄機がトレンドのように感じますが、私どもの考えからするとそれは本来の空気清浄機の目的と相反する組み合わせではないかと思います」

空気清浄機では加湿機能などを備えず空気清浄だけを追求すべき

リトリ氏「加湿機能を備えることが空気清浄機の本来の目的と相反すると言った理由は、湿度を好むカビが加湿によって発生する可能性があるからです。空気清浄機は本来、カビや空気中の有害物質を除去することを目的としていながら、細菌が増えてしまう機能を付けるべきではないのです。ゆえに、日本の空気清浄機市場のトレンドは少し危険だと危惧しています。以前は、エアコンと空気清浄機を兼ね備えた機種が人気だった時期があったと思いますが、実際にはエアコン自体の機能も弱くなり、空気もあまりキレイにならないという中途半端な状態でした。日本においてブルーエアの商品を購入しているのは、あくまで空気清浄機としての一流の性能のみを求めている方が多いと感じています」

―― ブルーエアの製品のラインナップは、すべての国で統一されているんでしょうか? 各国の事情に合わせたカスタマイズやラインナップの差別化はされているのでしょうか?

リトリ氏「基本的にはすべての国で同じ製品を出していますが、例えば具体的にその国特有の問題がある場合には、フィルター部分だけをそれに特化したものに交換して販売している国もあります」

―― ブルーエアの製品は清浄能力が高そうでも、日本の場合、やはり大きさで躊躇してしまう消費者も多いと思いますが、小型化の検討はされていないのでしょうか?

リトリ氏「部屋全体をキレイにしようとした場合、ある程度の大きさがなければ風量の確保が難しくなり、結果、部屋の空気をキレイにできません。それゆえ、壁際やベッドの下などにも設置することを想定して作りました。また、テーブルサイズのパーソナルタイプもラインナップしています。これを置けば、部分的に空気を浄化するころができます」

―― つまり、高度な空気清浄能力を保持するなら、現状の大きさが限界ということでしょうか?

リトリ氏「本体を小さくすると、掃除機のように音が非常にうるさくなってしまう可能性が懸念されます。単純にフィルター小型化したとしても、逆に大きなモーターで多くの空気を浄化させなければならなくなり、今度はモーターの音が大きくなってしまうという問題点が生じることが考えられます」

―― それでは、今後の製品の発展の方向としては、多機能化や小型化というよりも、やはり空気清浄能力の向上に力を注ぐ、単機能を突き詰めていく感じになりますか?

リトリ氏「常に私どもはユーザーの声にも耳を傾け、改善に努め、新しい製品を開発することを考えています。大きさに関しても考えに入れつつ、日本の消費者に喜んでいただけるようなものも作りたいと思っています。とはいえ、ただ単に見かけがよいとか小さいからということで、性能面で妥協をするつもりはありません」

―― 最後に、日本でブルーエアの製品が普及するための課題についてお聞かせください。

リトリ氏「ブルーエアの製品は、2011年のグローバル市場で45%の成長を遂げました。そして多くの国でトップシェアを獲得しています。この実績は、空気清浄機としてすでに大変優れた商品であることが認められた証だと自負しています。日本市場においては、空気清浄機がどうあるべきかについて消費者の方々に理解していただくことがまず第一だと考えています。その上で優れた空気清浄機は何なのかということを選択していただく必要があると思います。そうした情報を日本の消費者の皆さまにお伝えしていくことがこれからの課題です」