カスペルスキー:カスペルスキー 2013 マルチプラットフォーム セキュリティ

現CEOのユージン・カスペルスキーらが1997年設立(共同創立)したのがカスペルスキーである。本社はロシアのモスクワ。1989年にユージン・カスペルスキーが自分のPCに侵入したCascadeウイルスを発見し、ウイルスへの関心に火を付けたことに端を発する。ユージン・カスペルスキー自ら駆除プログラムの研究を開始し、駆除プログラムの作成を開始した。1992年には、ウイルス定義データベースを外部化し更新するシステムを確立している。当初は他社にエンジンを提供していたが、その後、Kaspersky Anti-Virus(カスペルスキー アンチウイルス)をリリース。自社ブランドを確立していった。

製品ラインナップ

カスペルスキーでは、以下の製品ラインナップを展開している。

  • カスペルスキー 2013 マルチプラットフォーム セキュリティ
  • カスペルスキー インターネット セキュリティ
  • カスペルスキー アンチウイルス
  • カスペルスキー セキュリティ for Mac
  • カスペルスキー モバイルセキュリティ for Android

さらに、サポート期間もしくは台数などで、いくつかの製品に細分化される。その詳細は、公式Webページを参照してほしい。フラッグシップとなるのは、カスペルスキー 2013 マルチプラットフォーム セキュリティであり、Windows、Mac、Androidのすべてのデバイスに対応する。プライベート版では、台数制限がなく(購入時には10ライセンスが供与され、それ以上の追加はサポートで対応)、「個々のデバイスを守る」から「個人を守る」というライセンス形態を提案している。モバイルデバイスのさらなる普及をが想定される現状、今後のライセンス形態として期待される姿といえよう。

カスペルスキー 2013 マルチプラットフォーム セキュリティ

さて、カスペルスキー 2013 マルチプラットフォーム セキュリティ(以下、マルチプラットフォーム セキュリティと略記)のWindows版の機能をいくつか紹介したい。まずは、メイン画面である(図13)。

図13 メイン画面

メイン画面は、非常にシンプルである。マルチプラットフォーム セキュリティでは、さまざまな設定を行うことができる。図13の右上の[設定]ボタンをクリックすると、各種設定モードとなる(図14)。

図14 設定メニューのシステムウォッチャーの設定

デフォルトの状態で、ほとんどの項目が「自動処理」に設定されている。つまり、初心者でもあえてこれらの設定を変更することなく、PCを安全な状態に維持できるのである。逆に上級者にとっては、これらの設定項目をきめ細かく設定することで、自分好みにセキュリティ設定を行うことが可能である。このあたりのバランスは、非常によく取れていると感じた。

ここで、2013バージョンの新機能を紹介しよう。まずは、ネット決済の保護である(図15)。オンラインバンキングなどでは、個人情報の流出が最大の懸念となる。近年は、国内においてもオンラインバンクを狙った直接的な金銭的被害が報告されているが、マルチプラットフォーム セキュリティはこれらに対してのセキュリティ対策を図ることができる。

マルチプラットフォーム セキュリティでは、以下の対策を施す。

  • アクセス先が本物のサイトかどうかを確認する。URLアドレスは、カスペルスキーの作成したデータベースと照合される。
  • 接続先のセキュリティ証明書を検証し、接続の安全性を確認する
  • OSなどの深刻な脆弱性の有無の確認を行う
  • キーボード入力で入力した内容を盗み見する脅威から入力情報を守る

これらにより、安心してオンラインバンキングなどを行うことができる。

図15 ネット決済の保護

図はオンラインバンキングを登録したところである。ここで青のリンク先をクリックすると、保護モードでブラウザが起動する。

図16 ネット決済保護中のWebブラウザ

この状態では、ウイルスなどの脅威プログラムが実行しにくいモードでWebブラウザが起動されている。したがって、キー入力を盗聴されるといった危険性を排除できる。こうして、安全にオンラインバンキングを実行できる。また、OSやアプリケーションのセキュリティホールを狙う脆弱性スキャンに加え、新機能として脆弱性攻撃ブロックも新たに搭載している(図17)。

図17 スキャンメニュー内の脆弱性スキャン

ウイルスなどの多くが感染などを行う際に、脆弱性を悪用している。脆弱性対策の第一は、その解消にある。しかし、アップデートプログラムが提供されるまでの間は、無防備な状態となる(その期間を狙うのがゼロディ攻撃である)。脆弱性スキャンは、PC内のOSやソフトなどに脆弱性がないかをスキャンで調べる機能で、脆弱性攻撃ブロックは脆弱性を悪用した攻撃を検知、万が一脆弱性が解消されなくてもPCを守る機能だ。

多機能と高機能が特徴

今回の評価では、多くの項目で上位となった。まずは検知力であるが、かねてより評判の高さを実証するものとなった。既存の脅威、さらには未知の脅威に対しても、トータルでPCを保護する機能が高いといえる。また、新機能の脆弱性対策なども、時宜に合ったものといえる。脆弱性の有無のスキャンに加え、脆弱性を悪用した攻撃を検知してブロックする仕組みも加わっている。他製品が、新機能的には目新しいものが少ない中、着実に新機能を搭載し進歩を遂げている。初心者でも、その先進の機能を特に意識することなく享受できる。

スキャン性能に関しては、2回目以降では圧倒的な速さであった。また、検知能力についてもトップクラスである。セキュリティ対策ソフトの基本機能に関しては、申し分ないといえる結果となった。新機能に目が奪われがちであるが、これらにも注目したい。最新のセキュリティ機能を求めるのであれば、選択肢の有力な候補となるであろう。