Windows 8が正式にリリースされてから約五十日。VL(ボリュームライセンス)のリリースから数えれば約四カ月がたち、既にWindows 8を活用している方も少なくないだろう。Windows 8のライセンス販売は4,000万本を超えたと発表されたが、Windows 8搭載マシンの出荷台数、もしくは販売台数の明確な数字が公表されていない。そのためなのか、「Extreme Windows Blog」ではWindows 8の特徴をあらためて紹介している。今週は同記事のピックアップし、その内容をレポートしてお送りしよう。

Windows 8が備える八つの特徴

リリース前から自社ブログでWindows 8の機能や魅力を伝えてきたMicrosoftだが、先日掲載された記事ではWindows 8の長所をあらためてアピールした。記事を投稿したのは、シニアプログラムマネージャーのGavin Gear(ギャヴィン・ギア)氏。同氏はTechNetのブログで、Windows 7やVisual Studio 2010などの記事を投稿している。

Gear氏は気に入っているWindows 8の新機能として「パフォーマンスの強化」「ナビゲーションと外観」「Windows 8タスクマネージャー」「DirectX 11(上で動作するPC)ゲーム」「ネイティブなUSB 3.0のサポート」「UAS 3.0とストレージスペース」「センサー機能の拡張」「ブートセキュリティ強化とパフォーマンス」の八つをピックアップ。今週はこのお気に入り機能をかいつまんで紹介する。

一つ目の「パフォーマンスの強化」は、「Windows 8大百科」でも述べた起動速度の向上やデバイスの応答性、Webブラウジングに加え、複数のコピータスクを一つのダイアログで管理可能になったファイルコピー機能や、システム効率を紹介している。Gear氏は手持ちのデジタルカメラであるキヤノンの5DマークIIIをUSB接続すると、即座にエクスプローラーが起動し、動画ファイルの再生が瞬時に行われると、デバイスの応答性向上を強調。

二つ目の「ナビゲーションと外観」は、[Win]+[X]キーで起動するクイックアクセスメニューなどを紹介しているが、強調したいと思われるのが、マルチディスプレイ環境時のメリットだ。Gear氏はWQXGAディスプレイ(2560×1600ピクセル)を二つ並べることで、水平解像度が2560+2560=5120ピクセルまで拡大すると前置きし、自身が撮影した写真を背景画像に用いてスパン表示している画像を紹介(図01)。

図01 Gear氏の作業環境。背景画像をスパンモードで表示させている(画像は公式ブログより)

ご覧のとおりWindows 8をお使いのユーザーにはご承知の新機能だが、複数のディスプレイにまたがる背景画像は実際に目にすると相当の迫力があり、見ていて気持ちの良いものだ。また、各ディスプレイで異なる背景画像を表示させる機能や、タスクバーのマルチディスプレイ対応も大きなポイントとなる。

「Windows 8タスクマネージャー」は目新しいことを述べていないので割愛するが、「DirectX 11ゲーム」の特徴として、テッセレーションなど固有の機能をサポートする「Assassin’s Creed III」や「Max Payne 3」を取り上げているが、この点に限ってはミスリードの印象を受けた(図02)。

図02 テッセレーションの有無により表示内容が異なる「Max Payne 3」の一シーン(画像は公式ブログより)

そもそもDirectX 11は、Windows Vista Service Pack 2およびWindows 7で利用可能になったバージョンであり、Windows 8はDirectX 11.1を新たに利用可能としている。もっとも同氏はDirect Xの恩恵を受けるためには、AMD Radeon 7970やNVIDIA GeForce GTX 690などDirect X 11.1対応GPU搭載ビデオボードの使用を勧めているものの、図02の画像はNVIDIAがDirectX 11の新機能として紹介した画像だ。

周知のとおりDirectX 11.1はマイナーアップデートであり、同機能はWindows 8の描画機能(DirectWriteやDirect2Dなど)を向上させるポテンシャルを秘めているが、PCゲームに活かされたという話は耳にしていない。当初DirectX 11.1はWindows 8に限定されるという話だったが、部分的ながらWindows 7に「Windows Platform Update for Windows 7(PRE-RELEASE version)」としてリリースされている。

KB2670838を確認すると、提供されるのはDirect2DやDirectWrite、Direct3Dに限定されており、Windows 7がDirectX 11.1に完全対応する訳ではないもの、同機能を使用するInternet Explorer 10のリリースなどを踏まえた対応なのだろう。

話がそれてしまったので、Gear氏の記事紹介に戻ろう。五つおよび六つ目の「ネイティブなUSB 3.0のサポート」「UAS 3.0とストレージスペース」だが、前者は文字どおりUSB 3.0のサポートを強調する内容だ。まだ普及したと言い切れないUSB 3.0だが、2011年中盤以降はチップセットに内蔵されたことで、対応デバイスも少しずつ出始め、USB 1.1からUSB 2.0へ移行したように、順次切り替わっていくだろう(図03)。

図03 USB 3.0ポートとUSB 3.0対応ケーブル(画像は公式ブログより)

後者はUSB Attached SCSIの略で、USBプロトコル上で動作するSCSIコマンドセット。USB上でSCSIデバイスと同じロジックを実現し、データ転送の効率性を高めるUASP(USB Attached SCSI Protocol)を新設し、対応デバイスの転送データをフロー制御することでパフォーマンスを向上させるというものだ。Gear氏は多くのパワーユーザーが大規模ストレージを欲するようになると、UASPで接続する環境が欠かせないと述べ、Windows 8の「記憶域(Storage Spaces)」を紹介。ちなみにUAS 3.0という表記はUSB 3.0が必須環境であることに引っかけた表現と思われる(図04)。

図04 複数のストレージを一括したプールとして管理する「記憶域」

USB 3.0もUASのサポートも、Windows 8から新たにサポートされたテクノロジーであり、対応デバイスを活用するプラットフォームとして、同OSが最適であることは疑うべきもない事実。このようにWindows 8はデスクトップ/ノート型コンピューター用OSとしての長所を備えているのだ。

「センサー機能の拡張」

七つ目の「センサー機能の拡張」は、Windows 7から備わった機能である。「Sensor API」を用意し、温度や場所など物理的な現象を測定できるデバイスをサポートしていた。Windows 8はタブレット型コンピューター向け機能を拡充させることで、同デバイスの重要性も必然的に増すことになる。例えば光センサーと加速度計センサーは光度の制御やディスプレイの自動回転に使用され、一般的なタブレット型コンピューターが備える3D加速度センサーや3Dジャイロ、3Dの磁力計により、コンパスによる測定が可能。これらの機能を活用したWindowsストアアプリの一つがEscape Velocity Limitedの「星座表」だ(図05)。

図05 センサーデバイスに対応したEscape Velocity Limitedの「星座表」

そして最後の「ブートセキュリティ強化とパフォーマンス」は、Windows 8がUEFI(Unified Extensible Firmware Interface)環境におけるセキュアブートに対応している点を紹介。UEFIセキュアブートはブートプロセスの一部をハードウェアによって検証し、マルウェアの侵入を未然に防ぐというものだ。LinuxなどのオープンソースプラットフォームもUEFIセキュアブートに対する対応を講じているが、少なくともWindows 8が従来と比較してセキュアになったのは事実である。

さらにGear氏はサスペンドやハイバネーション(休止状態)からの復帰スピード向上と高速スタートアップによる起動速度の向上に触れ、Windows 8が完成度の高いOSであることを主張。本レポートなど筆者が寄稿した記事でも述べているとおり、Windows 8はWindows 7から順当にグレードアップしたOSだ。惜しむべきはタブレット型コンピューター向けのUI(ユーザーインターフェイス)がタッチ機能を備えないデスクトップ/ノート型コンピューターには利便性が低下してしまう点である。

それでも、さまざまな新デバイスを活用するのであれば、Windows 8にアップグレードすべきだろう。その一方で先週のレポートで紹介した「Windows Blue」がどのようなUIを備えてくるのか今から楽しみだ。

阿久津良和(Cactus