ビール原料のホップに含まれる成分「キサントフモール」に動脈硬化を予防する効果があることが、北海道大学大学院保健科学研究院の千葉仁志教授や同大学院医学研究科の伊敏・助教らとサッポロビール(株)による、マウスを使った研究で分かった。キサントフモールにはほかにもガン細胞の増殖抑制作用や、抗変異原活性、抗HIV作用などの生理活性があることが、国内外の研究で知られている。千葉教授らはさらに、キサントフモールの脂質代謝への影響などについて、ヒトレベルでも明らかにしていくという。

心筋梗塞や脳卒中の発症にもつながる動脈硬化を防ぐには、血清中の総コレステロール値の低下のほか、“善玉”の「HDLコレステロール」値を上げることが、ふだんの健康管理では必要になる。HDLコレステロールは、肝臓や小腸で合成されて血清中に存在する「コレステリルエステル転送蛋白(Cholesteryl ester transfer protein, CETP)」によって、“悪玉”のLDLコレステロールや超低比重リポ蛋白に転送され、量が減ってしまうことから、HDLコレステロールの上昇を促すCETP阻害薬の開発が、医薬業界では進んでいる。

研究チームは、CETPの遺伝子を導入したマウスに、キサントフモール(0.05%)とコレステロール(1%)を混和した餌を18週間摂取させ、血清中のHDLコレステロール値とCETP活性を測定した。その結果、キサントフモール入りの餌を摂取したマウスでは、HDLコレステロール値が増加し、CETP活性は低下した。さらに、動脈硬化を測定する際の指標部位の「胸部大動脈弓」で総コレステロールの蓄積量を測定したところ、キサントフモールの摂取により、有意に蓄積量が減少していた。これらのことから、キサントフモールには、CETP活性を阻害し、動脈硬化を予防する効果があることが分かった。

これまで食品成分や天然物の成分で、CETP活性の阻害作用をもつものは報告されていなかった。今回のホップ成分「キサントフモール」が、天然物としては世界で初めての発見だという。研究論文は米科学誌「プロスワン」(16日、オンライン版)に掲載された。

なお今回の研究成果は、文部科学省「知的クラスター創成事業(現、地域イノベーション戦略支援プログラム)」の一環として2007年スタートした産学官連携プロジェクト「さっぽろバイオクラスター“BIO-S”」において得られた。

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