2012年は電子書籍時代の本格的な幕開けといっていい年だったと思う。色々な意味で話題となった楽天の「kobo touch」に始まり、Googleが「Nexus 7」を、Amazonが「kindle」を、さらにはAppleが「iPad mini」を発表するなど、電子書籍の閲覧に最適な7インチタブレットの本命がここへきて一気に出そろった。
中でもiPad miniを待ち望んでいた人は多いだろう。Nexus 7やkindleに比べると価格面で差を付けられてはいるが、すでにiOS端末を使っている人なら少々の価格差よりも慣れた使い勝手を優先すると思われるからだ。
そうなると、がぜん盛り上がるのはiPad miniに対応した電子書籍ストア界隈の競争である。
本稿ではそうした国内の電子書籍ストアをピックアップし、品ぞろえやアプリの使いやすさ、ストアとしての方向性などを紹介することにしよう。皆さんのiPad mini電子書籍ライフにぴったりのストアが見つかれば幸いだ。
Kinoppy
「Kinoppy」は紀伊國屋書店が運営する電子書籍ストアだ。電子書籍を購入できるのはもちろん、紀伊國屋書店のネット通販サービス「BookWeb」で販売する紙の書籍もアプリを通じて購入することができる。リアルとデジタル、両方に対応しているのは、書店であることの最大のメリットだろう。
また、本アプリはビューワとしても優秀で、文字サイズの変更や本文全体の検索機能、さらに本の特定箇所をマークしてGoogleやWikipediaで検索するといった機能が充実している。購入した本を管理する本棚(ライブラリ)の使い勝手もなかなかのもの。電子書籍や紙書籍をアプリから購入するとポイントがつき、次回以降の買い物に使うことができるのもありがたい。ストアは書店らしく、文芸・新書・ライトノベル・コミック・ビジネス本・語学・児童書・コンピュータ・地図・写真集など幅広いジャンルの本がそろっている。
BookLive
「BookLive」は、漫画や書籍、雑誌などバランスのいい品ぞろえを誇る電子書籍ストア。同名のアプリでは購入した電子書籍をクラウドで管理することができ、端末を買い換えても引き継げる。以前から使っていたという人も、iPad miniに問題なく移行できるだろう。ビューワとしての基本的な機能はひと通りそろっており、文字の大きさや色、行間、文字間、余白などを好みでカスタマイズできる。自分なりに一番読みやすい設定を見つけよう。
品ぞろえは72,039タイトル・107,088冊と国内最大級。ただし楽譜が17,251件あり、実質は55,000といったところ。それでもかなりの品ぞろえであることは確かだ。増加ペースも早い。
kindle
ついに来訪した黒船的存在。kindleタブレットで読むのが本筋かもしれないが、iOS用のアプリ「kindle」があるのでiPad miniで利用することもできる。このkindleストアが本命だというiPad miniユーザーは多いだろう。
ビューワとしてはかなりシンプルで、フォントサイズや画面の明るさ、背景色などは変更できるが、それ以外にはこれといった特徴はない。品ぞろえはすでに報じられている通り、5万冊程度でスタートとなる。ジャンルは特に偏りなく、まんべんなくそろっており、最近のヒット本も多い。現時点では飛び抜けて優秀なストアというわけではないが、何しろ運営はあのAmazon。ものすごいスピードで品ぞろえを増やしてくる可能性があるので、ストア選択に迷ったらkindleストアの将来性にかけてみてもいいだろう。
なお、同ストアの使い方などは「どうやって使う? その使い勝手は? Kindleストアでお買い物&iPadでお試し読書体験」をご覧いただきたい。
ebookjapan
ebookjapanは電子書籍ストアとしては老舗。そこから出しているアプリが「ebiReader」。全体で6万冊以上の品ぞろえがあり、特にコミックは4万冊と超充実。ダウンロード型なので、読み始めたら後は通信が切れても大丈夫なのはストレスがなくてありがたい。ビューワとしても軽快で使いやすい方だろう。ただ、トランクルームという独自の仕組みを採用しており、端末間で書籍を同期するのに人によっては相当な時間がかかる可能性がある(ダウンロードしたものは一旦トランクルームに戻して、別端末で再ダウンロードする必要があるため)。
読みたいときにダウンロードすればいいのでハードディスク容量を気にしなくていいというメリットはあるものの、ダウンロードしていつでも手元に置いておきたいという人はやや注意が必要だ。
honto
「honto」は大日本印刷、NTTドコモ、丸善CHIが共同出資して運営する電子書籍ストア。品ぞろえは幅広く、中でもボーイズラブとラブロマンスが充実しているのが特徴だ。特にボーイズラブは約1万冊も用意されているので、好きな方にはまずオススメしたいストアである。hontoポイントというシステムがあり、買い物ごとにたまるポイントで電子書籍の購入、および丸善・ジュンク堂・文教堂などの提携書店で買い物することができる。
ビューワとしての機能は可もなく不可もなく。ちなみに以前はダウンロード期間に365日の制限があったが、現在は一部をのぞいて制限がなくなっている。
BOOK WALKER
「BOOK WALKER」は角川グループ直営の電子書籍ストア。取り扱い冊数は控えめだが、角川グループの書籍に特化していることを思えばまずまずだろう。特にライトノベルやコミックが充実しており、書籍の大半はそれらのジャンルの本となる。目的がはっきりしたユーザー向けのストアだ。
iPad miniで読むためのビューワアプリの使い勝手は悪くないが、なぜか"しおり"機能がなく、若干のストレスがある。とはいえ比較的頻繁にアップデートされているので、今後使い勝手のさらなる向上に期待したいところ。角川グループに限定すれば唯一無二のストアと言えそうだ。