誰しも一度はプチッとつぶしたことがある、気泡が無数にある梱包材"プチプチ"。お皿などの割れ物を包んだり、クッキーの缶の中で使われたりする無色透明なプチプチ以外にも、秋葉原などの電気街・家電量販店でよく見かける、ピンクやブルーの静電気防止プチプチ、引越し時によく見かける片面にクラフト紙がラミネートされたプチプチなど、身近にあるプチプチだけでも考えてみると多くの種類がある。
だが、実はプチプチは梱包材としてだけでなく、意外な方面にも活動の幅を広げている。
"プチプチ"の名称を商標登録し、輸送・配送用梱包材「プチプチ」を製造する川上産業では、"つぶれにくいプチプチ"として、iPadケースやノートPCケースなどのステーショナリーグッズ「P.T.」シリーズを2010年より発売。現在まで約20万個を売り上げる人気シリーズとなっている。
この「P.T.」シリーズについて、川上産業株式会社 社長室 常務取締役を務め、広報部「プチプチ文化研究所」の所長でもある杉山彩香さんに話を聞いた。
大事にしたのはプチプチの空気感 - "頑丈過ぎない"iPadケース
「P.T.」シリーズの開発には、「プチプチ」の持つ空気感を大事にしたと杉山さんは語る。
「『プチプチ』で、つぶして遊ぶ以外のおもしろいものを作りたかった」という思いから生まれた「P.T.」シリーズは"つぶれにくい"必要があったわけだが、その一報で「プチプチ」である以上、素材である空気の軽さを活かしたものでなければならなかったという。
「加工方法も含めて試行錯誤していましたが、プチプチの持つ軽い"空気感"を表現するには、『丈夫過ぎず、チープ過ぎない』ことが大事だと思いました。プチプチの軽さと柔軟性を活かしたい。数年のスパンでは使えないけど、1年くらいなら快適に使えるもの。いろいろ試した結果、1年かかってこれなら良いな、というものができて、それがステーショナリーグッズの『P.T.』シリーズという形に落ち着きました」(杉山さん)
「P.T.」シリーズの9月時点でのラインナップは、下記の5種類となっている。
- ファイルケース(サイズ:320×250mm/630円)
- iPad専用ケース(サイズ:265×205mm/525円)
- ペンケース(サイズ:185×65mm/367円)
- スマートフォンケース(200×90mm/473円)
- カードケース(サイズ:110×70mm/315円)
人気が高い商品はiPadケースとスマートフォンケース。杉山さんは、この2商品が売れている理由は"壊れやすいものを守る"プチプチの本来のイメージに近いからでは、と話す。
「ペンケースやカードケースは、『人と違ったものを持ちたい』という意味で気に入ってもらえる製品だと思いますが、言ってしまえば別にプチプチじゃなくたって良い。でも、iPadやスマートフォンなどのハードウェアは、『あ、プチプチだから守られているのね』と、皆さんのイメージにしっくりくるんだと思います」(杉山さん)
自分が欲しい物は、きっと他の人も欲しいはず
しかしステーショナリーグッズであれば、ブックカバーや小物入れ、変わったところで封筒や便箋という手もあったかもしれない。iPad専用ケースもだが、ファイルケースも公式に「ネットブックも入る」とアナウンスされており、「P.T.」シリーズは特にガジェット向けに作られた感が強い。
ガジェットが好きという杉山さん。第2世代iPadとiPhone 4S、BlackBerry Bold 9900を所持している。BlackBerry Bold 9900は「片手で操作できるところが便利」と話す |
その理由は、「単純に欲しかった」から。同社が販売しているハート型の気泡シート「はぁとぷち」も杉山さんの発案。これも「もっとかわいいプチプチが欲しい!」と思った所から始まったという。
「好きなものじゃないと、なかなか開発のエンジンがかかりにくいですよね? ガジェットが好きでつい買ってしまうのですが、女性のバッグの中はどうしてもごちゃごちゃしてしまうので、鞄に入れやすいシンプルなもの、でも表面に傷がつきにくい、しかも価格的に買いやすい、「インナーバッグ」的なものが欲しかったんです。『自分が欲しい物は、きっと他の人も欲しいはず』と(笑)」(杉山さん)
ちなみにネットブック対応が公式に謳われているA4のファイルケースは、11.6型のノートPCがぴったり入る。13.3型サイズのPCではあと一歩のところで入らなかった。