ソニーとオリンパスは、9月28日に発表した資本・業務提携について10月1日に都内で会見を開催。両社の社長が登壇して提携の概要や意義について説明した(9月28日発表のニュース「オリンパスとソニー、提携を正式に発表 - 医療事業合弁会社設立へ」)。
ソニーの平井一夫・代表執行役社長兼CEOは、今回の提携について「医療事業を中心とした中長期的な提携関係」と話し、これによって「医療の現場に革新を起こし、世界中に医療の機会を提供できる」と、革新的な製品やサービスの開発を行っていくことを強調。オリンパスの笹宏行・代表取締役社長は、「両社の強みを融合し、デジカメと医療の領域で、両社のさらなる事業価値を向上させる」とアピールする。
今回の提携は、経営危機に陥ったオリンパスの第三者割当増資をソニーが引き受け、500億円規模の資金を調達する資本提携と、両社による合弁会社設立による業務提携という2つからなる。株式の新規割り当てによって、ソニーはオリンパスの11.28%の株式(増資後の持株比率ベース)を取得し、「安定した大株主」(笹社長)となったうえで、取締役を1人派遣する。派遣された取締役は、笹社長によれば「(経営の)モニタリングを目的」とした位置づけになり、支配を目的とするものにはならないという。新株発行によって既存株式は希薄化するが、笹社長は「提携によって事業が強くなり、収益構造の強化につながる」と強調する。
業務提携では、2012年12月末をめどに両社が医療事業に関する合弁会社を設立。両社の技術やノウハウを集めた新製品を開発し、グローバルで事業を展開する。オリンパスは内視鏡やカメラのレンズなどで培った光学技術や医療事業で世界規模のシェア、顧客基盤を有しており、一方のソニーはCCDやCMOSのようなイメージセンサーおよび画像処理技術で強みを持っているほか、3D、4Kといった映像技術を持っており、こうした技術を組み合わせた医療製品を開発、販売する。
ソニーは2011年4月の平井体制発足以来、重点施策の「新規事業の創出」として「メディカル(医療)事業を経営の中核の1つに育てる」(平井社長)ことを目指していた。今回の提携について平井社長が「最大の狙い」と強調するのが、この医療事業の拡大だ。もともとソニーはカメラやモニターなどの医療周辺機器事業、イメージセンサーやカメラモジュールなどの医療用デバイス事業、買収などによるライフサイエンス事業といった医療事業を展開している。平井社長は、この医療事業を「将来の中核に飛躍させるには、医療機器本体への参入が不可欠」と判断し、4月以降は「積極的な投資を行い、技術開発に加えて他社との協業も検討してきた」と語る。その中で、技術やノウハウ、顧客基盤を有するオリンパスと提携することが「もっとも効果的と判断した」という。
オリンパスも6月に発表した中期ビジョンで4つの基本戦略を示し、その一環として外科事業における成長戦略を描いていたが、今回の合弁会社設立によって、この分野に新たな事業を創出したい考え。複雑・高度化する外科手術の現場において、フルHDの4倍の解像度を持つ4Kや立体視できる3Dといったソニーの映像技術と、オリンパスの技術を組み合わせ、より安全で効率の良い外科製品を開発。映像配信・通信技術を使ったAVソリューションなども提供していく。中期ビジョンに「プラスアルファ」(同)する形で事業の拡大を狙う。
外科医療機器市場は、2020年には7,500億円に拡大する見込みで、そのうち合弁会社が狙う外科内視鏡機器やその関連事業は3,300億円に成長するとみられている。そこで20%を超えるシェアを獲得するのが目標だ。この合弁会社はソニーの連結子会社として、ほかの医療関連事業とあわせ、2020年には2,000億円以上の売り上げを目指していく。オリンパスも、2020年の段階で500~800億円の売上を達成したい考えだ。
デジタルカメラ分野でも提携。特にコンパクトデジカメがターゲットで、部材の共同調達によってコストを下げる。さらに、ソニーはイメージセンサーを、オリンパスはレンズなどの光学技術を相互に供給することで、製品自体の魅力を向上させる。世界的にコンパクトデジカメ市場は縮小傾向にあるが、平井社長は「グローバルでは相当の市場規模を狙える。コスト競争力を加えて利益創出を目指す」と力強く語った。これによって安定的に黒字化を達成したい考えだ。
当面はコンパクトデジカメ分野の共同調達や相互供給が基本で、両社のブランドやラインナップの整理にまでは手をつけない。レンズ交換式カメラに関しては、両社の製品で採用するマウントの違いなどの理由により、現状のまま継続する模様で、相互供給などの具体的な方針に関してはコメントが得られなかった。